（刑務所の王様 ベイビー親父の息子 ２）
02年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：デオ・Ｊ・ファハルド・ジュニア
主演：ロビン・パディーリア
ジョニー・デルガド
アンジェリカ・デラ・クルース
ロンメル・パディーリア
ラヴェン・ヴィリアヌエヴァ
フィリピンの刑務所を舞台にとり、そののぞき見的な面白さをそそるアクション映画。もちろん現実とはかなり異なるだろうが、興味深い要素を含む。
また、ハデなアクションが炸裂し、けっこう楽しめる仕上がり。
アンジェリカ・デラ・クルース演じるお嬢さまの女子学生が、授業の社会見学で刑務所を訪れるのが冒頭。ディック・イズラエル演じる案内係がオカマなあたりがおかしいものの、伝説の死刑囚であるベイビー・アマの紹介や、説明をうけるアンジェリカのナレーションによる施設の印象など、実録タッチで盛りあげる。およそ日本じゃ考えられない、ホントかよといった受刑囚の生活ぶりが好奇心を刺激。面会者が直接、内部へ入り、セックスだって可能な驚きや、平気でシャブを吸っている実態がすごいじゃないか。
ロビン・パディーリア演じる、殺気と貫禄で他を圧倒する囚人にアンジェリカが引かれ、非現実的な内容のフィクションへ。論文執筆のためにロビンを取材し、最初は興味半分の訪問者をうるさがったロビンだが、次第にアンジェリカを愛するようになる。ダリア・ラミレス演じる失明したロビンの母をアンジェリカが連れてきて、親子交流のあと、何度も帰る車に向かってロビンがアンジェリカに「ありがとう」を連呼のシーンが、センティメンタルなムードをつくる。
ロルダン・アキノ演じる所長が囚人たちと穏健な関係を保とうと努力ながら、ジョニー・デルガド演じる看守長が横暴なため、ロビンと一触即発の危機をはらむのがメイン・ストーリー。ロンメル・パディーリア演じる囚人がロビンの友人で、ラヴェン・ヴィリアヌエヴァ演じる妻がしょっちゅう面会にくるも、美人ゆえに看守の一人から狙われる。外でレイプをうけ、ロンメルの嘆きをみたロビンの抗議に対して、ジョニーがボコボコに。
ジェフリー・タム演じる囚人がジョーイ・パディーリア演じる看守と仲がよく、ジョーイの手引きによる脱獄をロビンへ持ちかける。いざ集団逃亡を実行や、ジョニーがここぞとばかりに銃殺しまくるのは、どこまで実際の事件を下敷きにおくのだろうか。投降に従ったものまで皆殺しで、確かに刑務所内の問題告発にもとづくと感じるところ。ジェフリーがつかまり、ジョーイに射殺を命じるシーンが、全編でもっともサスペンスをはらむ見せ場。命乞いのジェフリーに「許せ」と撃つと、今度はジョーイも始末される。
ロビンのみ逃げきる設定は、さすがにご都合主義ながら、ラヴェンのレイプ犯を抹殺でジョニーの怒りにヒート・アップを招く。ねずみにチンポをかじらせる復讐方法がものすごい。
アンジェリカに会って、しばらくぜい沢にリゾートで遊び、ニュー・ジーランドへ逃げたいからとエヴァンジェリン・パスクアル演じる母へアンジェリカがカネをねだるや、そんなのは断るのが当然だし、映画はエヴァンジェリンの不理解により、アンジェリカに対して同情的な描きかただが、普通、脱獄囚と恋愛に陥った娘を援助する親がいるかっての。
ジョニーと対決のため、頭を丸める行為に決意をうかがわせ、ロビンが刑務所へ殴りこむのがクライマックス。単独とはフィリピン映画に通例の無謀なバカ野郎と同じとあきれるも、数名の助太刀が一緒とわかって納得。いきなり乱射… のようでいて、時間を前後させながら、ロルダンと話し合ったり、ジョニーの異常さを目撃のため、リチャード・クアン演じる警官サイドから囚人に味方するものがでたりのねじれた構図を示す。目的のジョニーを仕とめ、実はここからが本当のドンパチに発展。装甲車とともに鎮圧へきた軍隊は、ほぼ一個師団の規模。解放になった囚人たちと、ちょっとした戦争を繰り広げる。吹っ飛ぶ家屋のみならず、広い中庭でボンスカ砲弾が破裂の全景を引きでみせるショットを含み、なかなかやるじゃないか。ジュース・ダッシンの『真昼の暴動』なみにカタルシスの波動まで計算に入れたリズム感はないものの、デオ・Ｊ・ファハルド・ジュニアの演出に執念がにじむ。
ロンメルが出所でラヴェンとの再会や、アンジェリカがロビンと面会のたびに同行させたフローラ・ガセル演じる世話係がベルティン・ラブラ演じる囚人と結婚など、シメに甘いオチを加え、しょせんつくり話とのイメージながら、暗くならないあと味が買える。
刑務所内観察に似た視点もあって、けっこう評価したい。
もちろん色っぽいサーヴィスも欠かさず、ラヴェンの大胆さにウハウハの興奮。ロンメルと面会のときに所内の一室でセックスし、オッパイをポロリ。入所の際のセキュリティー・チェックでわざと身体検査をしいられ、下着の中に何か隠していないかで、ブラをはずしてオッパイをあらわに。デクスター・ドリア演じる女性ガードがパンティーを引っぱりおろし、お尻を丸だしのうえ、横恋慕の看守がオマンコへ指を突っこむ。
ラヴェンの魅力が全体の価値を二段階あげる。
アンジェリカはタイプに遠いから、さほど期待がないも、一応リゾートでキャミと短パン型セパレーツの水着を披露。ロビンとのセックスは、ジャンノ・ギブスとクー・レデスマがデュエットの挿入歌をバックに一回目、自らヴォーカルの主題歌を流し、ロビンの戦闘をフラッシュ・バックでつなぎながらの二回目ともに、予想どおりおざなりな肌みせ程度。
あと刑務所見学のツアーでアンジェリカの同級生役にカティー・モリが顔をだすが、ほんの小さな役にすぎずに惜しい。アンジェリカの部屋を借り、クリス・ソアレス演じるボーイ・フレンドもどきがセックスの翌朝に混浴シャワーで、すりガラス越しに相手の女性が形のよいオッパイを押しつけるも、この女性がカティーかどうかは不明だった。
なお、ロビンは拳銃の不法所持で有罪判決をうけて収監され、この作品はそのときに撮影したものという。受刑者がそのまま主役だから、フィリピンの無茶苦茶さが極まれり、なんて感じになる。
