07年：リーガル・エンターテインメント／リーガル・マルティメディア
監督：ジョエル・Ｃ・ラマンガン
主演：ルストム・パディーリア
ウェンデル・ラモス
シャイナ・マグダヤオ
レーヴェル・クルース
ティルソ・クルース・３世
ジーン・ガルシア
シャイナ・マグダヤオとレーヴェル・クルースの顔合わせによる、さわやかな青春ロマンスと思いきや、同性愛の親の物語なのがジョエル・Ｃ・ラマンガンっぽい。
アメリカ合衆国から帰ったアルヴィン（レーヴェル）は両親の離婚を知り、父のエンリコ（ルストム・パディーリア）を訪ねてみればゲイのパーティー中。うまく女装を脱いでごまかすも、実はアルヴィンの後見人で、親友のルーイー（ウェンデル・ラモス）とエンリコができている。一方でオペラやバレエの特訓をうけるクリスティン（シャイナ）が登場し、父のリカフエンテ（ティルソ・クルース・３世）の厳しい監視下にある。メイド（セシル・マグカミット）と守衛（エリック・トレド）の協力で屋敷を抜けだし、友人のパーティーへクリスティンがでかけたとき、アルヴィンの乗るタクシーと自分のタクシーがぶつかりそうになる。エンリコが大学講師で、そこのオーナーがリカフエンテ。アルヴィンの家で昼食会をリカエフンテが提案し、アルヴィンとクリスティンが再会で恋に陥る。
いくら隠せども、車の中で赤いビキニのパンツをみつけるなど、父がホモだとアルヴィンが気がつき、自分もオカマになるかもと恐れる。父が苦しまぎれに「オレはストレートで、ルーイーがゲイだ」とアルヴィンにいったため、ルーイーが傷つく。リカフエンテは自分の決めたフィアンセのミギー（アルウィン・ウイティンコ）を娘に押しつけ、自由を求めるクリスティンをぶつ。ようは双方の親が自己中心的なので、若いふたりがとばっちりをくう話。
アルヴィンの母親のサラ（ジーン・ガルシア）が新しい恋人のジョバート（ローレン・ノヴェロ）をつくるも、エンリコなどみんなでジョバートの実家を訪ねてみれば、ジョバートの両親（トム・オリヴァル、ジョシー・タグレ）にジョバートが既婚者で、妻がアメリカ合衆国で就労中と教えられるエピソードもでてくる。
いよいよエンリコのつとめるのが男子制大学なため、ゲイとわかってリカフエンテが糾弾を決め、理事（メンゲー・コバルビアス）たちを集めて査問委員会を開く。ルーイーやアルヴィンへの態度を恥じたエンリコが、そこで堂々とゲイを認める。そんな父をアルヴィンが「誇りに思う」とのべ、「ゲイだからどうなんだ」と訴えるクライマックスをむかえる。
アルヴィンがヒップ・ホップ・ダンスに凝り、クリスティンのバレエと対比は階級差を暗示。
ルーイーがスタンド・アップ・コメディアンで、相棒（プリティー・トリシャ）とのステージが何度がでてきて、実際にコメディー・バーへいったこともあり、フィリピン人のお笑い志向がうかがえて興味深い。このルーイーのバーへエンリコがリカフエンテを呼び、アルヴィンと一緒にいたクリスティンが逃げ、リカフレンテとのチェイスでクリスティンがステージでダンサーに化けて二名の女性ダンサーと踊り、アルヴィンもヒップ・ホップを踊る。リカフエンテまでマヌケな衣装をかけられるのがスラップスティックながら、さほど笑いが起きないのはジョエル・Ｃ・ラマンガンの狙いはずれ。エンリコとルーイーが、もうひとりと歌ってダンスのミュージカル的挿入も、ジョエルの定番演出なれど、あまり冴えない。ちなみにアルヴィンが屋外で一緒にヒップ・ホップを踊るグループはＧ４との名前で、バーのヒップ・ホップ・ダンサーのミコ・アキノ、セルジョ・ガルシア、ロドジュン・クルースはゲスト出演のようだ。
ほかにエンリコとルーイーがスリー・オン・スリーの対決を迫られるエピソードは、バスケット・ボール好きのフィリピン文化。ルーイーがナヨナヨとオカマっぽくプレーし、ウェンデル・ラモスの演技のうまさが光る。ヴォーカル・コーチ（トミー・カルピョ）の指導でクリスティンがホーム・パーティーでソプラノを歌い、伴奏のピアノをミギーがひく。どこかミギーが両親（ロッド・オーストリア、セリア・ソリアノ）に支えられる雰囲気がお坊ちゃんのイメージなら、クリスティンに「アルヴィンを愛している」といわれてオメオメ泣き、ストレートなミギーのほうがよっぽどめめしい。ルーイーがアルヴィンに「オカマだ」と泣くのは、アイデンティティーを問う形をなす。ミギーがアルヴィンへケンカをうる場所がビリヤード場で、ここにもフィリピン人の娯楽がうかがえる。
ゲイのパーティーへ女性のトゥウィーティー（ジゼル・サンチェス）が現われ、下品に「オカマ、オカマ」と騒ぎ、ゲイたちに受け入れられている構図がなるほどとうなずけ、アルヴィンにはトゥウィーティーをルーイーの妹とごまかす。リカフエンテとのディナーへトゥウィティーが絵を持参し、これをアルヴィンとルーイーが隠すも、アルヴィンがこっそりみたので父がオカマと確信の展開で、うまく脇を活用。
とにかくプラスとマイナスの要素が半々ぐらいで進んだあと、大学を去る決心をかためたアルヴィンがリカフエンテに「あなたは幸せなんですか」と皮肉り、リカフエンテがクリスティンとルーイーのコメディー・バーへくるハッピー・エンドに、こじんまりとまとまった印象をもたげる。ゲイ・パーティーではじまった映画はゲイ・パーティーでとじ、サラにも新しい恋人（アラン・パウレ）ができて、登場人物へやさしい視線を向けるのが良好ながら、ジョエルにしては軽く流した程度との評価に落ちつく。
女優のセクシーさでは子役のイメージが強く、まだ子どもと感じていたシャイナ・マグダヤオが色っぽくなり、下半身にキュッとフィットの白パンがそそる。ただし友人のパーティーへタクシーで向かい、乗るときは白パンなのに、降りればスカートなのは、どこで着がえたのとヘン。バレエの練習はインストラクター（マリエル・パンガン）がレオタードじゃなく、六名ほどの生徒たちは衣装がイマイチでも、かわいい子がひとりいる。シャイナは黒い短パンをはき、ちょっとゾクゾクドキドキ。美人度ではジーン・ガルシアが絶世にあたいし、乗馬場など、全編でジーンズ姿を披露に鼻息が荒くなる。ジゼル・サンチェスはバストの谷間が大胆なドレスで誘惑光線を放つ。ほんのチョイ役だが、クリスティナの友人でクラリサ・コレット、ルイサ・オレタ、ニッキ・ペーニャ、リンズレー・ラモスとともにジル・ユーロの顔がみえ、キュートな容貌にときめく。
