05年：ＭＡＱプロダクションズ
監督：マリオ・Ｊ・デロス・レイレス
ＭＵＬＴＯＮＧ ＢＡＫＬＡ
（オカマの幽霊）
主演：ナディーン・サモンテ
タイロン・ペレス
ケンペー・デ・レオン
ＰＬＡＹＢＯＹ ＫＵＢＡ
（プレイボーイの瘤男）
主演：ジョン・プラッツ
マキシン・マガロナ
ジョン・イグナシオ
Ｉ ＬＯＶＥ Ｕ ＢＡＢＥ
主演：ヤスミン・クルディ
ライナー・カスティーリオ
ジェード・ロペス
アーロン・ヴィリエーナ
宣伝ではコメディー、ホラー、ロマンスのオムニバスとあった。
水晶球で未来をみる占い師のマダム・フリヤ（ノヴァ・ヴィリア）が客に語る内容でそれぞれ三つの物語が始まる。
アメリカ合衆国から帰国した年ごろの娘のアビー（ナディーン・サモンテ）がフィリピンの生活に退屈していると、たまたまバスケット・ボールのユニフォーム制作のカンパ集めにやってきたオギー（タイロン・ペレス）にときめき、両親の反対を避けてこっそりデートをかさねるとき、オカマの幽霊のパンピー（ケンペー・デ・レオン）と幼い少年の幽霊のリーボイ（ナッシュ・アグアス）をみかけるのが第一話。気の強いアビーがパンピーにケンカを売るなど、お化けを恐れないキャラづけに『ゴースト・バスターズ』的なおかしさがあるも、踊るパンピーの体にふれたり、幽霊という非現実的な存在をあつかう際の現実味に乏しく、相当にシラける。アビーの伯母（メル・キムラ）が幽霊を生んだ事故について話し、リーボイがあこがれの少女（カイセー・アボイオク）にキスして昇天と、パンピーの復讐をアビーとオギーが助ける構図にアイディアが貧弱で評価の低いでき。アビーの両親（ロイド・サマルティノとピンキー・アマドール）がアメリカ合衆国との比較でフィリピンを批判しまくり、貧民街に暮らすオギーの両親（レス・コルテスとジャンナ・トリア）がビンゴに夢中だったりと日常の風刺を加えるながら、二つの家族がうるさくもめるバックにサイレント映画ふうの音楽を流すといったドタバタ演出が冴えず、印象ダウンなようだ。まあ、ケンペー得意のオカマぶりがハマり役には思える。
プレーボーイのヴィンス（ジョン・プラッツ）が遊び相手のマイルス（レーア・マルティン）と部屋にいるとき、マイルスの父（ジョン・ロマノ）に踏みこまれて窓から逃げ、田舎へやってくる。そこで婚約者との結婚を強いられて泣く純真なラウラ（マキシン・マガロナ）と出会って恋に落ちるのが第二話。主人家の息子のユージン（ジョン・イグナシオ）と娘を一緒にしたいラウラの母（イルマ・アドラワン）は、ヴードゥー魔術を使ってヴィンスを背中に瘤のある醜い男に変える。ラウラは奇形の男にも偏見なく親切に接するが、実はヴィンスとわかってショックをうける。いったんはユージンとの結婚を認めるも、ヴィンスへの秘密を知ったユージンが挙式の最中に解放してくれて、ラウラがヴィンスのもとへいく。たとえモンスターみたいであっても「愛してる」というと、ヴィンスがハンサムな男に戻る。いわば『美女と野獣』と『ノートルダムの鐘』の折衷であり、評価できる点はなにもない。ディズニーをパクってそんなに嬉しいかとあきれるのみ。
マニラのバランガイに住むジオ（ライナー・カスティーリオ）とジェニー（ヤスミン・クルディ）はお互いにバービー（ジェード・ロペス）とブリグス（アーロン・ヴィリエーナ）という恋人がいるも、密かにジオがジェニーを想い、ジオの父（ディック・イズラエル）とジェニーの母（マリッサ・サンチェス）が犬猿の仲。バービーが頼んでジオをブリグスのグループに入れると、トイレでバービーがブリクスとのキスをジェニーが目撃するのが第三話。やや対立のすえに結ばれたジオとジェニーが父と母をうまく密室に閉じこめ、バカないさかいをやめて和解を仕向ける。楽しく歌って騒げば、いつしかみんなで踊り始める、なんてラテン気質がちょっと愉快。路上で鉢植えを育てるジオの父に対し、ブルドーザーでつぶしにくるジェニーの母と行動が過剰で、子どもまで大乱闘のくだらさなさははずすながら、ジオの弟、ジェニーの妹と双方にませたガキのいる設定が妙に笑いを誘う。いかにもフィリピンふうといえるかもしれない。
本来コメディーであるはずの第一話より第三話のほうがユーモラスで、ホラー的な要素を第一話と第二話が含むも、まったく怖くなく、ロマンスでは第三話よりも第二話がまさっているチグハグな構成にあって、ガロ・アドル、ジョン・ロケ、アロイ・アドラワンの各挿話の脚本をマリオ・Ｊ・デロス・レイエスが同じタッチで描くのが決定的につまらなさを招く。丁寧な演出ぶりはわかるものの、テンポやムードに変化を与えないとオムニバスの意味がないぞと感じさせる。
ナディーン、マキシン、ヤスミンがヒロインだけにセクシーさもみられず、ナディーンのライト・ピンクのパンツ姿が少しそそる程度。むしろジェードに色気をうかがうし、冒頭でオギーがお尻にみとれて店主（ズセット・リゴール）に怒られる無名の二人のエキストラに引かれるくらい。十代がターゲットだろうからエッチな表現を欠くのはしょうがなく、それゆえに中身すら軽くなった駄作といったところか。
アビーとオギー、ラウラとヴィンス、ジェニーとジオがラヴラヴのラストで、もうひと組ホモ・カップルが熱々な光景に、いつもどこかへ同性愛を盛りこむフィリピン体質が興味深かった。
