（息のあるかぎり）
96年：スター・シネマ／ＰＳプロダクション
監督：トト・ナティヴィダッド
主演：フィリップ・サルヴァドル
アンジャネット・アバヤリ
ティルソ・クルース・３世
デニス・ロルダン
ジャッキー・ルー・ブランコ
カール・アンヘロ・レガスピ
ディンド・アロヨ
パキト・ディアス
ロイ・アルヴァレス
アラン・パウレ
俳優のマイケル・デ・メサがストーリー・アイディアにクレジットされるフィリップ・サルヴァドル主演のアクション作で、リッキー・リーとフミルデ・“ミーク”・ロハスの脚本、トト・ナティヴィダッドの演出との顔ぶれにひかれる。それになんといってもアンジャネット・アバヤリの共演が楽しみになる。ムズムズっとそそる容貌をながめるだけで勃起をうながす、爆弾級のセクシーさをひめる女優だから…
エリス・ソリアノ大尉（フィリップ・サルヴァドル）は評価の高い軍人で、妻のベット（ジャッキー・ルー・ブランコ）との間に男の子ができて幸福だったものの、悪事に加担するドミンゲス将軍（パキト・ディアス）に弟のアントニオ（アラン・パウレ）を殺され、自らもドミンゲスの部下につかまって拷問をうけ、妻と生き別れ、冤罪で懲役によって人生が変わる。八年間の刑務所暮らしでぼうぼうの長髪にヒゲづらのキリストさながらの容貌に世捨て人を思わせ、命を狙われた囚人のロケ（マンジョー・デル・ムンド）を助けたりも、感情をいっさい表面にださない無気力ぶり。ふとしたきっかけで弁護士のレア（アンジャネット・アバヤリ）がエリスの存在に気がつき、ボスのアコスタ（デニス・ロルダン）に紹介。再審の話をもちかけるが、エリスは関心を示さない。でも護送中に脱獄をしいられ、アコスタの前に連れてこられるや、とっさに襲ってきた暗殺者（ザンドロ・ザモラ）のグループを退治で手腕のお墨つきをうける。実はアコスタは政敵や犯罪者たちの暗殺をたくらみ、その実行者の役をエリスが承諾する。たくみな射撃術や携帯電話をつかった爆弾の遠隔操作などで指令の遂行に成功。お目付け役のレアが身体の提供を迫るが、人生にやる気を失っているエリスが拒む。親密な関係にあったラミレス議員（ティルソ・クルース・３世）とアコスタがもめて、エリスにラミレス殺しをアコスタが命じてからが本筋。工事現場の監督になっていたドミンゲスを残酷に処刑のエリスだが、ラミレスを狙ったときに息子のアレックス（カール・アンヘロ・レガスピ）が一緒にいたので引き金を引けず、しかもラミレスの妻がベットで、アレックスが本当は自分の息子だと気がつく。一方で出世の夢を抱いていたにもかかわらず、不本意にもアコスタに雇われている立場をレアが嘆き、エリスに好意をよせる。
ラミレスを撃たなかったのをアコスタが責めて、部下のエドウィン（ディンド・アロヨ）にエリスの始末を命じる。エドウィンがアレックスのいるときにラミレスを襲い、アレックスが傷ついたので、近くにいたエリスが病院へ運ぶ。それでラミレスとエリスが親しくなる。
トト・ナティヴィダッドは割り合いに心理描写がうまく、お高い性格のイヤな女ふうに登場のレアが酔って弱音を吐いたり、エリスが密かにベットと会って事のなりゆきを聞き、ベットの気持ちがラミレスへ移ったやるせなさでレアと寝たり、ありきたりな展開ながらも納得がゆく。病室でベットがわざとエリスとアレックスを二人だけにする時間をつくってあげれば、ラミレスが真相を察しつつも黙っている。運命にほんろうされたベットが車中でラミレスの手を握って愛を確認といった複雑な内面をたくみに表現する。さほど感情をあらげず、静かに語る調子が印象をあげる。レアからアコスタの襲撃計画を聞いてエリスがベットに連絡を入れ、ベットがエリスの正体に非難の怒声をぶつけるときに絶叫型の演技になるも、ここは状況的に当然。
ただし悪の非情さはストレートで、アコスタやエドウィンに人間性のかけらもなく、それゆえに迫力をうむというよりは、ややふくらみを欠いている。ロケがアコスタに雇われてエリスを殺しにくる展開も、さしてドラマ性を与えるにいたらない。ロケに対してエリスが「ウタン・ナ・ロオブはないのか」といい、ラミレスが病室でエリスに「ウタン・ナ・ロオブがあるし」とフルーツ・バスケットをあげているなどはフィリピンっぽい要素がうかがえるところ。ラミレスがアレックスをアメリカ合衆国へ留学させようと考えていたり、アコスタがアレックスのニノン（後見人）なのにもフィリピンの風習がにじむ。エリスとエドウィンの一味が撃ち合う貧民街の風景は、けっこう視覚的な興味をひく。
途中で暗殺のターゲットであるビリー・ボーイ（ロイ・アルヴァレス）とエリスが一対一の決闘になって、敗れたビリーにエリスが自害用のピストルをわたす浪花節のエピソードは、全体の流れに浮いているも、そこそこみせてジャマにならない。アコスタにら致されたアレックスが船から転落しそうになったり、飛び立つアコスタのヘリコプターと追うエリスの車の激突は、Ｂ級なりに頑張っているアクションに思える。ラミレスが弾をうけ、そのあとベットが撃たれ、エリスとともに駆けつけたレアもやられてのクライマックスで、ベットが亡くなったようで、無事にアレックスを助けたエリスが去ろうとするのをラミレスがとめ、父親と名のるのを認める終わりかたには、やや意外性が感じられる。
ではアンジャネット・アバヤリの魅力はどうかだが、刑務所でエリスと面会のミニスカ・スーツが視線を引きつけ、法廷でのミニスカはパンティーがチラつきそうな脚を組むポーズをとるうえ、前かがみのオッパイの谷間がのぞく胸元で証人や裁判長を悩殺するも、イマイチ煮えきらないまま。車中でアコスタに太腿をなでられるショットも挑発不足ながら、美脚ぶりにうっとり。みごとに暗殺をはたしたエリスに報酬をわたしたあと「私も贈りものよ」とミニスカ・スーツを脱ぎはじめるシーンでときめきの興奮が高まる。スカートが落ちる瞬間は本当にドキドキだったのに、シルクの下着がボディーにフィットせず、ゆるいタイプなのが残念。酔ってエリスに迫るときは前開きのシャツと白い短パンで、バサッとシャツを脱ぐと黒いブラがあらわれる。もうパーフェクトな美乳がうかがえ、乳首がみえなくても下半身を刺激してくる。エリスと正常位でのセックスは申し訳程度の露出でオッパイが隠れている。殺し屋が部屋にくるシーンはＹシャツをはおっただけのかっこうが想像力をかきたて、パンティーのチラチラはないものの、スラッとのびる長い生脚にほおずりし、蹴られたい誘惑。ラミレスの車の襲撃現場へ駆けつける際の黒いピタピタのパンツからも圧倒的なプロポーションのよさが性的本能をくすぐってくる。まじで容貌をながめるだけで勃起をうながす女優だわいと降参。
欲をいえば熟女のジャッキー・ルー・ブランコにも色っぽいコスチュームなり、シチュエーションがほしかった。ビリー・ボーイの同伴者で、オシッコをちびるボディコンの女性はコメディー・リリーフなのか、典型的なおかめだった。
