（どこまで… いつまで？）
93年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：ジョエル・Ｃ・ラマンガン
主演：ディーナ・ボネヴィー
アリス・ディクソン
セザール・モンタノ
ヴィーナ・モラレス
ガーリー・エストラダ
ルストム・パディーリア
ダンテ・ポンス
ダリア・ラミレス
セニー・サバラ
自分本位の極端な性格の目だつ異母姉妹の対立を描く愛憎劇で、ゆがんだ人間像がいかにもフィクションっぽいながら、ジョエル・Ｃ・ラマンガンの起伏をつけた語り口によって、けっこうお芝居的にみせる作品。ディーナ・ボネヴィー、アリス・ディクソン、ヴィーナ・モラレス、セザール・モンタノ、ルストム・パディーリア、ガーリー・エストラダの六大スター共演であり、とくにディーナとアリスの魅力が光る。
タバコの大きなプランテーションが広がるヴィガンを舞台に、脚を悪くしたロメオ・リヴェラ演じる領主の代行で、ディーナ演じる娘が経営を仕切っている。きついキャラクターで領民たちをこきつかい、ジム・ペバンコやティタ・パンビド演じる労働者のうらみを買う。町はトニー・マベサ演じる市長、ジェス・ラモン演じる警察署長がディーナにペコペコへつらい、すべていいなり状態。ディーナはダリア・ラミレス演じる義理の母、アリスとヴィーナ演じるダリアの娘にあたる妹をもつも、一方的に毛嫌いしまくる。ロメオが亡くなるや、ダリアの一家を葬式にも入れず、ローランド・ティニオ演じる弁護士をうまくつかって遺産を与えない。またダンテ・ポンス演じる市長の息子が恋人だったが、セザール演じるアリスのボーイ・フレンドに目をつけ、愛人に囲う。労働者たちの監視員に抜擢のセザールが親分風をふかし始め、ジムともめる。労働者がストライキを計画に対し、ジェスに命じて妨害のヤクザを送りこみ、とめようとしたダリアが突っこむトラックにひかれる。屋敷の外に借りていたボロ屋までとられ、アリスとヴィーナがみじめにマニラへでる。以前たまたまルストム演じる事業家に名刺をもらったアリスが訪ねてみると、親切な対応をくれる、ヴィーナにはガーリー演じるボーイ・フレンドが追ってきて、交際を続けるものの、これを知ったアリスがなんの理解もなく、ただヒステリックに反対する。すぐにアリスとルストムに愛が芽ばえ、ルストムのエスコートで上流階級のパーティーへきてみれば、ディーナがセザールといたため、皮肉をいうディーナ相手に、今はルストムのバック・アップをうけるアリスも負けずに反論で大ケンカを繰り広げる。夜の公園でガーリーとヴィーナへわざと警官にイチャもんをつけさせ、逮捕になったガーリーを助けてディーナが好意をよそおい、ヴィーナを味方につけようと動く。歌手の夢を秘めたヴィーナはＴＶのコンテストを勝ち抜き、賞金をえてアリスのもとへくるのに頭っから非難ばかり。さすがにヴィーナが切れて不満をぶつけると、有無もなく放りだす。ガーリーの売りこみでヴィーナがレコーディングをはたしたうえ、ＴＶ出演を始めたのをルストムが喜んでいるのにアリスは拒絶を示す。いつしか麻薬中毒に陥って、セザールとカジノにのめりこんだディーナは借金をつくり、これに乗じてアリスがプランテーションを買いとる。さらにセザールをたきつけて裁判を起こし、麻薬中毒だの証言を得て財産没収に成功すると、ディーナから指輪まで抜きとってセザールがでていく。アリスが新しい領主としての帰還に市長や警察署長がこびへつらい、かつて苦労を分かち合った仲間なのでジムやティタが歓迎もつかの間、ディーナ以上の冷たさで過酷な労働をしいたため、険悪なムードを招く。ずっといっさいを黙ってながめていたルストムが「もう以前のようなキミじゃない。ボクが愛したキミじゃない」と去っていく。豪邸をしめだされたディーナがアリスを殺しに現われ、病院送りになる。すべての復讐をおえ、富を自分の手中においたアリスが屋敷で父の肖像画をながめ、ふと死に際にいった「姉妹で仲よく」の遺言を思いだす。
とにかく単純に威圧的で、カネと権力と愛欲まみれのディーナとアリスの設定があまりに度をとおり越すのでバカバカしい限り。でも二人の迫力あふれる演技にサスペンスがにじみ、対決のシーンなど、おおこわ、との印象が起きる。これほど良心を持ち合わせない人物が最後に和解には無理を生じるのが当然だし、ヴィーナのディナー・ショーの楽屋でアリスがヴィーナにわびたあと、やってきたディーナとの抱擁をヴィーナがながめて感動の熱唱。ルストムまで会場に顔をだすラストのご都合主義はお笑いレヴェルとはいえ、劇的なつくり話のまとめだとこんな感じかもしれない。リッキー・リーとジョエルの脚本が通俗ロマンス小説を意識にしいたのだろう。
葉っぱについた虫をみんなでとったり、ダリアが熱中症で倒れる農場の作業風景や、仮装で集まるパーティー、カジノ場のようすに風俗的な興味が満ちる。ルストムからアリスがまかされた籐の家具工場の取り引き先が日本人なのは、なるほどそうなのとうなずかせる。狡猾なセザールはともかく、女たちがエネルギッシュな反面、ルストムやガーリーの男たちがいるだけのでくの坊に近いのが、またフィリピンらしい。
まあ欠点の目だつ内容ながら、ディーナとアリスはともに美人だし、水着シーンの盛りこみがパワーを数倍アップさせる。ディーナは冒頭の作業視察で男性用のベストに黒いピタパン、ブーツのかっこうの登場からハッと息をのむほど色っぽい。セザールとのセックスでシーツを巻いたボディーをみせたあと、アリスへ嫌がらせの電話をかけるのがビーチで、オレンジのワンピース水着が視線を奪う。アリスはさらに素晴らしく、ルストムとプール・サイドで話すところで青いワンピース水着をまぶしく輝かせてデッキ・チェアに寝ころぶ。全身にフィットするタイプの水着だけにぞくぞくとそそり、姿勢を入れかえるポーズにヒップラインが浮かぶ。これほどの美貌なら内面が鬼でも許す、なんて思わせるほど。
なおヴィーナが歌う番組の司会役として、ピリータ・コラレスとベルト・“タワ”・マルセロがゲスト出演している。
