ＨＡＬＩＫ　ＮＧ　ＶＡＭＰＩＲＡ
（女吸血鬼のキス）
　
97年：オクトアーツ・フィルムズ／シネマックス・スタジオス
監督：ペケ・ガリアーガ、ロール・レイエス
主演：アンジャネット・アバヤリ
　　　 レーモンド・バガチング
　　　 マイケル・Ｖ
　　　 ベット・タマヨ
　　　 パトリック・グスマン
　　　 マーク・ソリス
　　　 ジェーソン・サルセド
　　　 ハイメ・ファブレガス
　　　 イアン・ヴェネラション
　アンジャネット・アバヤリが女吸血鬼を演じると聞いただけでゾクゾクッと興奮が盛りあがる。またペケ・ガリアーガとロール・レイエスの演出だけに、作品的な内容にも期待がかかる。
　冒頭に警備員が噛み殺され、走って逃げる女性がピタピタのジーンズにお尻をくねらせているのに、さっそく下半身が刺激をうける。
　コメディアンのマイケル・Ｖが演じるデッド・アワー・デーヴとの名前のディスク・ジョッキーによる深夜のラジオ番組と、そこへ電話をかけてくる奇妙なリスナーたちを軸に進行し、本番中にもデッド・アワー・デーヴにはガール・フレンドが肩をもみ、別のガール・フレンドがはち合わせでケンカをくり広げたりで、お笑いタッチの構成をなす。リスナーの一人で吸血鬼の文献を調べるヘルガアルデ博士（ハイメ・フェブレガス）はフランケンシュタインのモンスターのごとき継ぎはぎだらけの顔がマンガっぽく、ロマン・ポランスキーの『吸血鬼』みたいにホラーとユーモアの折衷を狙っていると思われる。それにアンジャネット・アバヤリが演じるヒロインのヴァネッサに医師のヴィクトル（レーモンド・バガチング）とのロマンスがからみ、恋愛要素もプラスする。交通事故で手足の肉がむきでる流血の重傷をおったヴァネッサの身体が元どおりに蘇生していくのを視覚的にみせる特殊効果は、ＳＦＸ好きへの配慮。ひいたトラック運転手（イアン・ヴェネラション）が幻覚だと思ってウィスキーをグイッと口にし、飲酒運転なあたりにも喜劇性を盛りこむ。ヴァネッサに性欲を抱いて家へ招き入れたため、犠牲になる男の名前がスティング（パトリック・グスマン）で、のぞき趣味のある若い男の二人組の名前がマイケル（マーク・ソリス）とジャクソン（ジェーソン・サルセド）なのは、アメリカ合衆国のロック歌手のいただき。ヴェネッサが棺桶で寝る様子にドラキュラの一連の映画化作品を連想させ、棺桶が白いのがフィリピンっぽい。
　スティングの死を伝えるニュース・キャスターのスザンヌ（ベット・タマヨ）はヴィクトルにほれていて、ヴァネッサとの三角関係はさほど広がらないが、嫉妬のベットの発砲に合わせ、たまたまヴァネッサの家へ忍びこんだデッド・アワー・デーヴがマイケル・ジャクスンふうに踊るのに、マイケル・Ｖのステージ芸を紹介する。近所の若い女性のアレックスがプールで泳ぐのをマイケルとジャクソンがのぞき、アレックスがボーイフレンドのデクスター（ネータン・フォレスト）に頼んで二人をビビらせ、そのあと自分の身内であるデクスターを間違ってヴァネッサが噛むエピソードはつけたし程度ながら、マイケルとジャクソンがヴァネッサの家へ調べに入って、みつかるかどうかのスリルはけっこう緊張感に満ちる。ディスコで男友だちに殴られた若い女（ミシェル・ルッフォ）が流血していたため、ヴァネッサがときめいてなめ、近づいた男が引きちぎったために犯人と勘違いされるくらいしか、ヴァネッサのさげている牙型のネックレスが活用されないのはやや語り口のあまい部分。ブエノ巡査長（ロミー・ロムロ）の捜査もラストのヴィクトルの輸血でヴァネッサが人間に戻るのにジャマするかのサスペンスを盛りあげない。デッド・アワー・デーヴの番組が打ち切りのピンチにあるのと、ヴァネッサが吸血鬼だとデッド・アワー・デーヴが気づき、番組の人気アップにと考える結びつきの弱さも指摘できる。
　全体的に長所と短所が４：６くらいでも、アンジャネット・アバヤリの色っぽさが相当に長所をのばす。病院の看護婦だったとき、入院患者の血が飛んで顔にかかり、おいしそうになめる表情からしてムズムズとそそってくるし、獲物を求めて夜の街へでるための着がえが絶賛もの。白いセパレーツの下着はパンティーにヒップラインが浮かび、スラッと長い脚で魅了しつつ、下着のままハイヒールをはくと、白い短パンでボトムを包んでいく。このファッションで馬乗りになってスティングに襲いかかり、短パンがヒップに食いこむ。ピタッと貼りつく素材のタイプじゃないのが残念ながら、すばらしいプロポーションによだれタラタラ。激しいアクションのショットは吹きかえのギルリー・デ・ギアだろうが、くびれがくっきりのショットはＡＪ本人のはず。ディスコでの光沢ノー・スリーヴのシャツにジーンズや、ヴィクトルを噛もうとしてやめるときのジーンズ、輸血で身体が宙に浮きあがり、外光がさして目ざめる瞬間にシャツをはだけ、谷間をあらわにするブラの胸元なども誘惑のマジックを放ってくる。窓越しのシルエットの脱衣が想像力をムラムラとかきたてるも、行きずりの男を噛むのをマイケルとジャクソンが隠れてながめる際のスカートはイマイチになる。
　でもＡＪのセクシーさのとりこに陥りクラクラ。
　あとベット・タマヨはかわいくてチャーミングだが、警察と一緒に捜査での動きにおけるジーンズからうかがうに、ボディー・ラインのなまめかしさでＡＪに完敗。アレックス役とデッド・アワー・デーヴの二人のガールフレンド役は、セリーナ・コルテス、アイリーン・アンヘレス、パトリシア・ペレスのうち、誰がどれかはっきりしないが、アレックス役がワンピース水着で泳ぎ、プールサイドで濡れた肢体をおがませてくれる。ちょっとブスっぽいのが惜しい。ほかにチーフの看護婦役にはジョアンナ・サラザールが出演するも、クレジットの表記はジーン・サラザールとある。
　ペケ・ガリアーガとロール・レイエスにとっては水準程度のできながら、ＡＪに乾杯。
　なおエンド・タイトルのバックに『悪魔を憐れむ歌』のカヴァーが使用されている。