ＲＯＤＥＬ　ＳＴＡ．ＣＲＵＺ　　ＨＡＬＡＮＧ　ＡＮＧ　ＢＩＴＵＫＡ
（ロデル・サンタ・クルース　ジャマな内臓）
　
(96)年：ファースト・フィルムズ
監督：ロヘリオ・サルヴァドル
主演：イアン・ヴェネラション
　　 　エフレン・レイエス
　　　 ロイ・ヴィンソン
　　　 ジャッキー・フォースター
　　　 ブランド・ラルマノ
　　　 バンジョー・ロメロ
　　　 リト・レガスピ
　　　 ジョニー・ヴィカール
　　　 コンラッド・ポー
　　 　ボーイ・フェルナンデス
　実在の人物であるロデル・サンタ・クルースの物語とのコピーが読めるが、ホントかあと疑ってしまう。どう考えてもフィクションにしか思えない内容。
　イアン・ヴェネラション演じる主人公のロデルは孤児たちを何名も引き取って一緒に暮らす思いやりに満ちた男だが、実は殺し屋の顔を持っている。クラブの奥に隠れたギャンブル場でターゲットを片づけるや、そのあと銃撃戦に発展のとき、ジャッキー・フォースター演じるクラブで歌っていた女性が目にケガをする。やさしいイアンは気になってしょうがなく、調べてみればジャッキーは失明状態。いまや盲目の歌手のジャッキーをいつも見守り、やがて愛し合うわけである。
　再び殺しの仕事のあとに報酬が支払われず、反対にエフレン・レイエスがボスを演じる組織に命を狙われるのがメイン・ストーリー。標的の二人をともにリト・レガスピが演じるのは、どんなものか。組織からの裏切りによる撃ち合いで子どもが巻きぞえをくい、ブランド・ラルマノ（ブランド・レガスピのことだと思う）とバンジョー・ロメロ演じる警察のチェイスをかわして医者へ連れて行くエピソードは、子ども好きを強調だろうが、いささかつくり話がすぎる印象。駆けつけたブランドたちへ銃口を向ける中、看護婦までもが表情一つ変えずに治療を続けるのも説得力を欠く。
　ロイ・ヴィンソン演じるイアンに殺しの依頼を伝えていた男が組織の配下ながらも、イアンの味方に転じるのは予想の範囲内。ブランドたちがジャッキーとイアンの仲を発見し、電話を盗聴するのも同様。ロイがバンジョーをあっさりと狙撃で始末は、ちょっとオヤッと思わせる展開だった。
　まあ最後はイアンがエフレン一味を全滅に追いこむのはミエミエのため、パターン通りといえば、それまでのこと。イアンを慕う少年が一人犠牲になる部分は、ドラマティックな盛りあげの狙いが鼻につく。結局、イアンとジャッキーの関係のその後や、イアンがブランドに逮捕されたかどうかすらはっきりせず、日付を挿入などによる臨場感も盛りこまれないため、実録ものとしては完全に失格。普通のＢ級アクションとしても、水準に達しなかったようだ。
　それでもブランドたちがスーパー強盗を退治のとき、超デブ女が逃げずに店内のお菓子をムシャムシャ食べていたので人質にとられ、泡を吹いて倒れる脇のエピソードにはクスクス笑いが起きる。
　イアンが子どもたちのためにチキン買ってきて、黙々と食べながらも喜びをかみしめている様子をじっとみつめるシーンは、すごく共感がわきあがる。なんというか、こういう小さな幸福をあげることで得られる満足感は、一度始めるとやめられないもの。無表情で子どもたちへ視線を送るイアンの姿に自分を投影する。
　なお、ジャッキーの肉感的なボディーの誘惑を期待が観賞の第一の目的だったが、歌は吹きかえのようだし、ステージのドレスはシックだし、魅力不発のままが残念。
　エフレンの愛人役の女性がプールで水着や、ベッドでボディコン衣装の披露をくれるが、イマイチそそらなかった。