ＧＩＧＩＬ
（歯ぎしり）
　
06年：リーガル・エンターテインメント／リーガル・マルティメディア
監督：ジュン・ラナ
主演：カトリナ・ハリリ
　　　 アルフレッド・ヴァルガス
　　　 ケチャップ・ユーセビオ
　　　 セイ・アロンソ
　　　 ビアンカ・キング
　　　 ブーム・アントニオ
　セクシー・アイドルのカトリナ・ハリリを主演にするロマンス・コメディーで、軽い内容になっている。
　コール・センターでオペレーターをつとめるチナ（カトリナ）はカレッジの同級生だったドン（ブーム・アントニオ）からプロポーズをうけ、自らウェディング・ドレスをデザインで幸福だったのに、結婚式の当日にドンがオカマだとの告白で破談。しかもウェディング・ドレスがドンとホモらしきジェウェル（リッシ・チャン）の店で売られていたりでイヤになり、同僚のデノイ（セイ・アロンソ）と一緒に気分転換でボラカイへいく。そこでハンサムなスクーバのインストラクターのフェリックス（アルフレッド・ヴァルガス）をみかけ、ほとんどひと目ぼれの瞬間、なぜかドンが現われてフェリックスと抱き合うのを目撃で、ひょっとしてホモなのかとの不信感をもたげる。フェリックスを尾行やダイヴ・ショップの店員（メーシャ）にフェリックスの家を聞きだして忍びこんだりと素姓を探るうち、ますますドンとの同性愛のにおいが深まるばかりか、フェリックスの恋人かもしれない美女のキット（ビアンカ・キング）までが登場する。ジェニーとの変名でフェリックスに接近でスクーバを習うなどで、すぐにフェリックスはチナへ恋心を抱き、気持ちのすっきりしないチナのほうはキスをかわしていたものの、フェリックスの「恋人はいない」の言葉を信じて愛撫を許す。またお互いに孤独だった少年少女時代の思い出にふれ合いを感じる。でも再びドンとのホモの疑惑が復活し、フェリックスもチナが韓国人観光客と撮った写真をガイドのナト（ケチャップ・ユーセビオ）にみせられ、チナが尻軽じゃないかと疑う。ついに酔ったチナがドンとキットのいる前でフェリックを「オカマ」とののしり、フェリックスが激怒する。実はドンとフェリックスは従兄弟であり、キットはカナダから遊びにきていた友人と判明も、すべてがあとの祭りで、傷心のままチナは退屈なマニラの日常へと戻る。
　チナが“中国人”との意味の名前なのは、なにかの伏線かと思ったが、さほど関係ないようだ。メガネをかけていることでモテないふうを暗示は、フィリピンでのメガネのイメージがうかがえるながら、カトリナは本当によく似合っていてキュート。ブームが母（マルー・クリソロゴ）にべったりのマザコンのごとく描かれるあたり、オカマに限らず、頼りない男の図式といえる。ボラカイで韓国人の四人組がチナを追いまわし、スケベなおマヌケ野郎丸だしは以前だと日本人を相手にとる風刺だろうが、とくにボラカイは韓国人が多いし、対象が変わったことがわかる。いつも四人でつるんでいるあたり、確かに韓国人だと笑わせる。宿の管理人のリガヤ夫人（ミニー・アギラー）が絶えずチトとデノイをみていて、自らとかけ合わせるうちにはじけるエピソードは、ユーモア・センスの盛りこみとして中途半端。フェリックスの家にいるときにドンがやってきて、チナが浴室の窓から逃げるドタバタ劇はありきりな設定だけに、ちゃんとギャグにしてほしかったところ。ジュン・ラナの力量不足を感じる。
　悲恋のままに終わらずに、しっかりハッピー・エンドが用意されるのは当然だが、もうひとつ弱い点はこの部分。ドンとナトが結ばれて、同性愛のカップル誕生に結婚式へ出席でボラカイを再訪まではバカバカしいシチュエーションで納得なものの、いつかフェリックスへ返したネックレスの入ったプレゼントのボックスがボートからでてくる再会のアイディアがオシャレじゃない。ジョン・タートルトーブの『あなたが寝てる間に…』のような婚約指輪のわたしかたを期待したわけで、もっと考えてほしいなあと痛感を呼ぶ。アルフレッドにチナが本名を名のるラストも森田芳光の『（ハル）』のウィットに足下もおよばない。
　もっともカトリナ・ハリリの魅力がすべてなので、そこさえ輝いていれば満足のいたり。ボラカイが舞台だから水着が大半になり、赤いビキニとパレオ、青いビキニとジーンズの短パン、ブラがのぞく赤いシースルーのワンピース、黒いビキニ、ピンクのミニスカ、赤い光沢ビキニ、赤いビキニとジーンズの短パン、ブラとパンティーがスケている赤いシースルーのワンピース、黒と柄のビキニ、紫のビキニと短パン、白いミニスカのワンピースなど、着せかえ人形のごとく多彩に色っぽい衣装を着用する。でもいずれにもパンチ力が少なく、とくに赤い光沢ビキニは好みのタイプだけにビンビンの興奮を招くうえ、フェリックスにブラの紐をほどかれるショットまであるのに、夕暮れの薄暗い中だし、撮りかたのアングルがイマイチで不満を残す。冒頭に「ウーマン・イン・レッド」の言葉とともに赤い色の説明をするチナの台詞が入り、最後も「ウーマン・イン・レッド」でしめているから、赤い水着で統一すればよかったんじゃないかとの皮肉な印象もおきて、カトリナのファンにとっては拍手をおくれない結果に終わっている。
　ほかに容貌はカトリナに劣るとはいえ、かわいいセイ・アロンソが赤いビキニと短パン、ピンクのビキニを披露し、セクシー・モデル出身のビアンカ・キングは、なぜか水着がなしという低サーヴィスぶりにがっくり。チナの母を演じたクークー・ゴンサレスが、やや熟女の色気を放っている。