ＧＡＹＵＭＡ　　ＳＡＮＡ’Ｙ　ＭＡＨＡＬＩＮ　ＭＯ　ＡＫＯ
（惚れ薬　私もあなたの恋人になりたいな）
　
95年：ファルコン・フィルムズ
監督：タタ・エステバン
主演：アマンダ・ページ
　　 　フリオ・ディアス
　　　 マリトニ・フェルナンデス
　　　 ジェー・マナロ
　　　 シャーリー・パルマ
　　　 ルシタ・ソリアノ
　　　 レナート・デル・プラド
　　　 コニー・チュア
　　　 ポチョロ・モンテス
　　　 ジーノ・イルストレ
　アマンダ・ページのセクシーさを使って下層の生活ぶりを描きだすタタ・エステバン監督の意欲作。決してうまくはないものの、とにかくやる気が伝わってくる。
　実話からヒントを得たとのクレジットが入り、原作者で、脚本も執筆のレイ・ニカンドロ本人が登場し、貧民街の一角でタイプ・ライターを打ちながら作品の意図を説明が冒頭。おそらくプロデューサー兼任のタタは、レイの小説への共感から映画化を望んだのではないか。
　物語は二人の女性の環境を同時進行でしばらく並行描写。スービックに住むＧ．Ｉ．チャイルドを演じるのがアマンダで、マリッサ・デルガド演じる母と暮らし、一度もみたことのないアメリカ人の父へあこがれを抱く。それでマニラにいるアメリカ人のペン・パルに会うため、ダニー・ラモス演じる恋人の静止もきかず、マニラへでてくる。いきなりの到着直後、ボーイ・アラノ演じるタクシー運転手にバッグを引ったくられて無一文。親切にコーラをおごってくれたジーノ・イルストレ演じる男が睡眠薬レイプ魔で、ジーノなど三人組によって無残に犯される。いわゆるマニラ名物（？）ともいえる強盗とレイプの洗礼に、この都会の陰部を切り裂いてみせるともいえる。
　一方のマリトニ・フェルナンデス演じるのは、先にレイがいた貧民街で裁縫を請け負う人妻で、フリオ・ディアス演じる夫が悪事に加担の様子。顧客がショーラ・ルナ演じるニュー・ハーフなため、水商売用のセクシーな衣装を縫っているのがおかしい。フリオがちゃんと家にいつき、働くようにとコニー・チュア演じる呪い師に祈祷を頼み、インチキくさい魔術がいかにも。
　またアーケードのごときトタン屋根で路地を共有する雑居がうずめくゴミゴミしたスペースを再現し、子どもを軒先で洗っていたり、酒、トランプ博打、ケンカが日常茶飯。いわゆる場の空気をリアルに描くも、ややつくりものめいてみえ、肌にふれるにまで迫らない点が、タタの力量不足かもしれない。
　ジプニーに乗ったとき料金を持たなかったアマンダをマリトニが助け、自宅へ連れてきてからが後半。当然、フリオがアマンダに目をつけるわかりやすい展開になる。ショーラが「美人ね」とアマンダにクラブ勤めをすすめるのを断り、フリオの「アメリカ大使館にツテがある」を信じたのが間違いの原因。アマンダを連れだしたフリオがセックスを強要し、マリトニを置いてでていく。犯罪で得たカネを持ち逃げ中のフリオを追って、ジェー・マナロ演じる取り立て屋がマリトニを脅すも、反対にマリトニがジェーを誘惑。ジェーがフリオを殺し、マリトニが「そこまでしてとはいってないでしょ。よくも夫を」とジェーを刺す。二つの殺人はジェーがビニール袋でフリオの顔をおおって窒息させ、壁にかけてあった鹿の角のインテリアでグサッ、という衝動的なものと、マリトニが扇風機のカヴァーをはずし、顔に押しつけてグチャグチャにくだく意図的なもの。とくに後者は血が部屋中にビュンビュン飛びまくり、異常ぶりを強調。
　ひょっとするとレイがインスピレーションを得た実際の事件とは、扇風機殺人だったんじゃないかと推測をもたげるも、真相はわからない。
　アマンダの面会にマリトニはうわの空で、アマンダがダニーの待つスービックへ帰るのがオチ。マリトニがフリオの置き手紙を呼んで呆然と外へでると、まさに警察が悪党一味の検挙でワイワイ騒ぎの真っ最中だったり、とにかく内の心理描写と外のトラブルをかけ合わせる手法が計算の演出をうかがわせる。多少、鼻につく印象を与えるのが残念かな。
　ほかにジェーがシャーリー・パルマ演じる映画女優とつき合い、ポチョロ・モンテス演じる相手役と芝居のあと、クロイド・ロビンソン演じる監督がやたらシャーリーへ「素晴らしい」を連発の撮影風景がニヤニヤを呼ぶも、ちょっとワザとらしい。
　まあ、指摘できるポイントは多いながら、まずまずの問題作との評価に落ち着くか。
　性が人間を変える怖さを表わすため、アマンダのエロスが満開なのは個人的に嬉しい要素。ダニーに別れを告げるときアマンダは嵐の中を走ってきてシャツが貼りつき、ブラをつけていないためにオッパイが丸スケ。びっしょり濡れながらのセックスでシャツを脱ぎ、上向きオッパイがおいしそう。レイプではブラがはずれ、乳首がアップでウヘーッ。翌朝、ストリート・チルドレンに発見されるまで、オッパイをモロに倒れていて、もう驚くべき誘惑。マリトニと出会ってからは、汚れたボディーを洗ってもらう際にしゃがんだ全裸を横から撮り、肝心のパーツの隠れたポーズにかえって生つばゴクリ。暑いと胸のボタンをはずして扇風機にあたり、乳首ののぞくかのチラリズムもドキドキなら、フリオが帰宅で「誰だ」といぶかるとき、オッパイをポロリ状態で就寝中じゃないか。フリオの視線で乳首がドアップに、誰だって吸いつきたい。
　アマンダの大胆さが映画の説得力をグッと高めている。
　マリトニは流産でルシタ・ソリアノ演じる産婆を追いだす登場シーンから、下半身の真横アングルによる露出がそそるも、最後までギリギリのみ。呪いに使うオシッコを洗面器にとるとき、スカートの中へパンティーを引きあげるしぐさや、フリオとのセックスでバストがこぼれそうな谷間、ジェーとのセックスでスカートをまくられてのハミケツなど、確かにあと少しにカッカ興奮。
　シャーリーは黒いブラをはだけ、ジェーからビールをオッパイにかけられる愛撫で、乳首がみえたか、みえないか…
　コニーによる魔術でマリトニがみる幻想の中で、急流の川にミシンを踏むマリトニがいて、そのまわりをコニーに引かれたフリオが家畜のごとく歩くのだが、一緒にふんどしのような葉っぱを巻いただけの巫女が三名、トップレスで踊るのもサーヴィス。
　なお、無名時代のデイジー・レイエスの名がクレジットに読めるも、結局どこに出演かわからなかった。