ＧＡＭＩＴＡＮ
（ほかの誰かに誰かを与える）
　
02年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：クァーク・ヘナレス
主演：マウイ・テーラー
　　　 ウェンデル・ラモス
　　　 パトリシア・ハヴィエール
　　　 ジョルダン・ヘレラ
　　　 サリーナ・デ・レオン
　　　 ヴァンナ・ガルシア
　マウイ・テーラーが脱いだことは、２００２年におけるフィリピンのショービズ界の中で、最大の話題の一つといえるのではないか。ヌードを決断の前にマウイがイギリス人の父親に相談したら「お前の人生だから、お前が決めろ」といわれたことや、撮影が終わったあとも「私は結婚するまでセックスしないから、まだ処女よ」とのべたことや、共演の「ウェンデル・ラモスとジョルダン・ヘレラはどちらがよりセクシーか」といった質問のインタヴューなどがマスコミをにぎわしたもの。
　いざ映画をみてみれば、確かにすごいと感嘆のもれるのが実感。パトリシア・ハヴィエール演じる姉のセックスをのぞき、パンティーに手を入れてオナニーにおよぶショットからしてドキドキ・ウハウハをそそるが、ウェンデルに処女を奪われるシーンでのオッパイなど、あまりのド迫力に正気を失いそう。まずシャツを脱がされるや、黒いブラがつくる胸の谷間がギリシャ彫刻なみの美乳を予感させる。すぐにブラがパラリとはずれてオッパイが丸だしになると、予想以上の張りのよさに加え、ポコッとお椀型にふくらみ、乳首の大きさや色とのバランスが絶妙で、さながら生ける女神像。座った状態と寝た状態のマウイのオッパイは正面から、上から、下から、側面から撮られ、どのアングルでも崩れない完璧ぶりに、ただただ呆然。ウェンデルと泡風呂に入ってバスタブで愛撫をうけるときの水面に浮きあがる乳房も絶品で、こりゃあ、話題を呼ばないほうが不思議じゃないか。
　ジョルダンを誘惑の展開での、ホット・パンツのお尻のアップや、前かがみの姿勢でシャツからのぞく胸元など、肝心の部分が露出しないシチュエーションでも興奮をくれるうえ、ジョルダンとのセックスで黒いパンティーを脱ぐと、赤いタンク・トップを着たまま騎乗位でもだえる姿など、エロティックという概念を超えている。
　さらにクローゼットへ隠れたジョルダンにみせつけるがごとくウェンデルと抱き合うシーンでの黒いハイレグ・パンティーがそそったあと、ウェンデルの死体の横でジョルダンとセックスをはじめ、パンティーのお尻を突きだすポーズによだれがダラダラ。ブラをはずしてオッパイを全開にし、また上チチ、横チチとたっぷりに堪能をくれるのだが、下を向いてプラプラと揺らせるショットが圧巻。大きめのオッパイなのに、肉のしまりがよいからそれほどボヨンボヨンとたるまないあたりに、あー、もー、もんでみたいとの欲望を抑えきれなくなる。パンティーを脱いで、座位、騎乗位のセックスを繰り広げ、終わって寝そべっている休憩時に乳首のアップの挿入がとどめの一発をくらわせ、マウイに無条件降伏。
　いやはや、とんでもない女優が出現したものだ。
　そのうえ黒いビキニ下着姿のボディーを鏡に映してみるショットがあとでまたでてきて、全体的なプロポーションのよさの確認もくれるから、以前より大ファンなれど、ここで超クレイジー宣言をしたい。
　物語は処女喪失を男どもの賭けの道具にあつかわれた女学生の復讐サスペンスで、映像に凝りまくった感覚優先のタッチが現代風。ＣＦやＭＴＶのディレクターが映画を撮りはじめ、こうした表面的な部分ばかりにこだわる作品は日本などすごく顕著な傾向だが、フィリピンにもでてきたか、という感じである。クァーク・ヘナレス監督の経歴は調べていないものの、冒頭のわざと荒らしたモノクロームの画面からすぐに正当な映画畑出身じゃないな、との推測を抱かせる。随所にフリッカーのちらつきを意図的に加えたり、スロー・モーションでＢＧＭに歌を流したり、心象イメージの代用でスチール写真を挿入したり、動作の途中でストップ・モーションを多用したり、とにかく小細工が目立つ。これらの技術はオシャレだと評価の向きもあるようだが、あくまでサブ的な要素のはずとの判断なので、メインにならない程度なら歓迎だし、使いかた次第なのはいうまでもない。小手先の画面づくりにばかり振りまわされ、石井克人の『鮫肌男と桃尻女』のような箸にも棒にもかからない作品に仕上がったら、それこそたまったものじゃない。30秒とか数分での映像の表現力と、一時間半あたりを超えて全体的な構成が求められる映画の演出力とでは、やはり才能のヴェクトルが違うんだなあ、と再認識が起きるわけだが、その点クァーク監督はどうかといえば、マウイの魅力にも助けられ、ストーリー・テラーの点でも合格。森田芳光のいくつかの作品よりはずっとうまいといえる。
　ジョルダンに殺人を仕向ける決意にいたるマウイの心理が描きたらないとの指摘があれば、その通りなのだが、本格的な人間ドラマじゃないし、とりあえずはいいんじゃないか。ウェンデルにマウイが処女をあげる覚悟の過程や、良心の呵責に耐えきれずにジョルダンがマウイに拳をあげる衝動も、そこそこ納得できると評価したい。
　ただし切断したウェンデルの死体をマウイとジョルダンの二人がリュックに入れて背負う設定は、そんなに軽くないはずで、もう少しリアリティーがほしかった。
　映画の興味のポイントは、もう一つ、マウイの変身があげられる。メガネをかけた優等生で登場も、ウェンデルにハシャぐ普通の女子高生にすぎなかったマウイが、男を連れこんではセックスにふける色気のかたまりのごときパトリシアに改造をうける面白さといえよう。メイク・アップ、ヘアー・ドレッシング、ファッションから歩きかたまで指導され、男を惑わす女に変貌だが、後半の厚化粧などほとんど娼婦で、やめてくれー、と嘆きたくなるもの。個人的には前半のメガネのマウイのほうが断然ステキだと感じるながら、賭けに勝ったウェンデルがマウイに突然冷たく接するのに、娼婦風のマウイが現れるや翻弄でオロオロの運びなのは、男というのはフィリピンに限らず、基本的にお化粧ベタベタがタイプなのだ、との表われだろうか。確かに日本の女性人気アイドル歌手にみる我慢の限度を超えるお化けヅラを考慮に加えれば、知的なムードの女性が好きな自分のほうが、むしろ例外だと思えてくる。
　こればっかりは映画のシチュエーションとはうらはらに、ダサいキャラクターに設定の前半のマウイのほうに軍配をあげる。
　それにしてもマウイ三昧な中、パトリシアもオッパイの惜しみない露出でセックス・シーンを繰り広げ、悩殺をくれるのが嬉しいサーヴィス。マウイの親友を演じたサリーナ・デ・レオンとヴァンナ・ガルシアの二人もヌードになっていないが、ちょっとかわいくて気になる存在で、無視できないところ。
　さすが話題の渦中の作品だけに、楽しめるポイントを複数含むではないか。