11年：ＡＢＳ−ＣＢＮフィルム・プロダクションズ／スター・シネマ・プロダクション
監督：カティー・ガルシア・モリナ
主演：サム・ミルビー
ＫＣ・コンセプション
ヴィヴィアン・ヴェレス
レーヴェル・クルース
ダンテ・リヴェロ
ベンボル・ロコ
マテット・デ・レオン
ルイ・ヴィリアルス
サム・ミルビーとＫＣ・コンセプションの顔あわせによるスター企画の商業作で、いわゆる難病をあつかう大甘のラヴ・ロマンス。正統的なお涙頂戴ものといえる。
スニーカーのメーカーに勤務のユージン（サム・ミルビー）はいつも靴のことばかりが脳裏にうずまく仕事人間。新製品の提案で同僚のミコ（レーヴェル・クルース）のほうを社長のタタン（ダンテ・リヴェロ）が支持し、絶対の自信をくじかれた不満で友人のトゥペ（ルイ・ヴィリアルス）とカム（マテット・デ・レオン）のカップルを誘い、うさばらしにジップ・ゾーンというアドヴェンチャーのテーマ・パークへ遊びにいく。そこでひとり旅のラフィー（ＫＣ・コンセプション）と出会って一緒にすごすうち、恋が芽ばえる。なにやら訳ありのラフィーがいったん去るも、途中で偶然に再会し、今度は休暇と一方的に連絡を絶っていたためにユージンがプロジェクトをはずされたとわかり、不機嫌な態度をとる。そんな自己中心的なユージンをラフィーが批判で気まずく別れる。マニラへ帰るや、ユージンがソーシャル・ネットワークで調べ、ラフィーがボランティア活動をするガン患者の施設を訪ねる。ユージンが自分も末期に近いガン患者だと教える。
マラソンのイヴェントに始まり、ゴール直前でユージンがミコをかわして優勝に、インタビューでスニーカーを宣伝。フィリピン人がなによりも足元にこだわる傾向をさっそくにじませるも、みずからデザインのこの靴をシンガポールにセールスの計画をたて、アメリカ合衆国や中国（支那）にもとタタンにいきまき、フィリピンにそれほど優秀なシューズのブランドがあったっけ、と苦笑いがおきる。ミンダナオのカガヤン・デ・オロの近郊にあるジップ・ゾーンで空中をロープに吊りさがって飛行のジップ・ラインのほか、バギー、アスレティック、綱わたり、ボールの中にはいっての転がりと盛りだくさんがタイアップだろうけど、いささか長い。なんてつっこみもだが、あとで病気を動機にこじつけながら、まずラフィーのような若い女性が単独でテーマ・パークに来園がヘンで、メリッサ・メエ・チュアのストーリーによるメリッサ・メエ・チュアとカルミ・Ｇ・レームンドの脚本がきっかけの部分で説得力に弱い。気分を害したユージンがカガヤン・デ・オロのカヌーで急流くだりに仏頂面のうわの空で櫂をこぎ、ラフィーを川へ落とすアクシデントをおこすあたり、ユージンのふてくさりかたが単純で、カティー・ガルシア・モリナの演出が単細胞。まさに典型的な大衆向けの娯楽作だと感じたが、ガン患者のコミュニティーで抗がん剤の影響でハゲになった幼い女の子にラフィーが布を巻いてあげるシーンがやさしい訴えかけをもち、ラフィーがユージンに親友と紹介のステフ（ニッキ・ヴァルデス）がひょうきんに明るく、意外と捨てがたい魅力をたたえる。ステフが頭に布を巻いてスキン・ヘッドと暗示に、ラフィーも髪の毛が抜けるところがでてくるも、最後まで頭皮は露出せず、どこかきれいごとに終始。ラフィーの父（ベンボル・ロコ）と母（ヴィヴィアン・ヴェレス）と交流でユージンが思いやりを知り、タタンの指示でスタッフに謝罪のうえ、新しいプランを進める。社内コンペティションでミコのティームに負けるが、素直にうけいれる。タタンがときに厳しくも、ユージンを実の息子のごとく指導し、共感を呼ぶ図式に心があたたまるながら、やはりきれいごと。ラフィーを診断で治療が無理と告げる医者のトニー（スパンキー・マニカン）がユージンの父で、同じく医者の兄（ロビン・ダ・ロサ）や、母（ビン・ピメンテル）と妹（ヘルガ・クラプ）をもう少しからめてもよかった気がするが、周囲の人物の心情を加えて、きれいごとの肯定がもたらす感傷性を伝える。ユージンが「キミと出会って本当に幸せだ」といい、ラフィーが「私もよ」と返すストレートなやりとりが内面に響くうえ、ラフィーの葬式で写真を風船で飛ばし、ユージンの「ラフィーの生涯は短かったが、充実していた」のナレーションにうなずき、さあ、ここで泣きなさいのワザとらしい演出が単純で単細胞なのに、つい鼻水をすするこちらも単純で単細胞だと納得でホロりのしだい。
通俗人間にはハンカチのご用意を、といった感じか。
ＫＣ・コンセプションは容貌がタイプをはずれるも、今回はややセクシーな要素を含む。ジョギング中にランナーたちのスニーカーに目をとられたユージンがぶつかってラフィーが転倒のとき、短パンの奥に股間の下着がチラつく。ジップ・ラインをおりて階段をあがる際にラフィーの視線でハーフ・パンツのお尻のアップがはいる。ジップ・ゾーンのホテルで腕に赤いシミを発見で乳首は隠れるが、シャワーを浴びる。ユージンと滝の落ちる池にいくシーンはＴシャツに黒いスパッツで泳ぎ、きたぞ、きたぞと右手の準備をするも、岩を登ったり、いかだで移動が遠景で濡れたＴシャツの貼りつきに浮かぶブラや腰に生地がフィットのヒップラインがあいまいなままで使用にいたらずだが、部屋に戻ってシャツを脱ぎ、背中などにシミの広がりをチェックで鏡の前に立ち、黒いブラのバストをうつせば、みごとなオッパイの谷間にじゃっかんのシコシコをくれる。カヌーを落下のあとに水からあがるショットを欠くのと、自宅のベッドに横たわるかっこうでジャージーをはいたお尻のくいこみ不足とローライズの中途半端さが惜しいかな。
マテット・デ・レオンは完全にストライク・ゾーンの外ながら、ハーフ・パンツにお尻の形がわかる。先に亡くなるニッキ・ヴァルデスと、ユージンの家で父の誕生日の会食でテーブルにつくヘルガ・クラプは小さな役で残念。ユージンの部下を演じるジャネット・ダンカランとタタンの秘書を演じるトリクシー・ダウズはブスっぽい。また、ユージンの同僚の配役にメーアン・フロレスの名前が読める。
ラフィーの母のエレンにヴィヴィアン・ヴェレスをキャストは個人的に嬉しく、さすがに今も美人なうえ、上品に老けたなと驚きをおぼえる。
