ＦＩＲＳＴ　ＤＡＹ　ＨＩＧＨ
　
06年：ＡＢＳ−ＣＢＮフィルム・プロダクションズ
監督：マリオ・コルネホ
主演：ジェフ・アイゲンマン
　　　 ジェーソン・アバロス
　　 　マッハ・サルヴァドル
　 　　ジェラルド・アンダーソン
　　　 キム・チウ
　　 　チェリー・パイ・ピカチェ
　アイドル映画的な要素をもつ青春ロマンスの駄作とは、こういうものかもしれない。
　まずカレッジに新入生が登校の初日、主役の五名を中心に学生たちが主題歌に乗ってキャンパスで踊る。一ヵ月後のバスケットボールの対抗試合で選手たちが体の異常で次々と倒れる。対戦前に飲んだ水が原因らしく、刑事（ベンボル・ロコ）が捜査にあたる。容疑者の学生が浮かびあがり、各人の登校初日からが再現される。化学を専攻の女子学生のインディラ（キム・チウ）、バスケットボール部のマイケル・ジョーダン（ジェラルド・アンダーソン）、カネもちの女子大生のプレシャス（マッハ・サルヴァドル）、美術を専攻のガエル（ジェフ・アイゲンマン）で、彼らのことを刑事がネータン（ジェーソン・アバロス）に話を聞いて進み、実は刑事とネータンが親子。自分のファイルをみつけてネータンも容疑者とわかり、ネータンの初日からも語る。無事に謎が解決し、インディラとマイケルが結ばれ、容疑をかけられた五人に友情が芽ばえて、めでたしめでたし。
　とにかくジェード・カストロの脚本が五人の視点で構成を練ったのだろうが、おふざけなのか、マジなのか、ワザとなのか、適当なのか理解に苦しむマリオ・コルネホの中途半端な演出によって、退屈このうえない。一応、いじめや助け合いに対立と和解、迷いや悩みの克服がでてくるも、小バカなタッチのマリオの表現方法が不快なため、まったく共感を生まず、あこがれるどころか、こんな学生生活は送りたくないと思わせるほど。
　つまらなさにも限度がある。
　とくに人生をなめたようなプレシャスのエピソードがひどく、パーティーで酔ってのマヌケなダンスなど、お笑い以前に腹が立つ。先輩のアシュリー（カト・アラノ）と知り合い、仲間のカースティン（カルラ・フンフリーズ）とチューズデー（デニス・ラウレル）を加えて四人で行動で、食事に箸を使用が上流の趣味なら、パチンと割り箸を割るも、使いかたのヘタなのがご愛嬌。アシュリーとファッションが同じになったり、両親（ガルド・ヴェルソサ、アーリン・ムーラック）を「菜食主義にかわった」で驚かせるなど、ちょっとノータリンじゃないかと思わせる。
　化学の授業に説得力が薄ければ、メガネをかけてインテリを強調のインディラが書いた化学式がチンプ。実験用のウサギをネータンがかわいがるのは、動物実験の有無を問うわけでなく、インディラのほれ薬の話でインディラの母（チェリー・パイ・ピカチェ）とガセルの父（マイケル・デ・メサ）が『危険な関係』みたいなフランス宮廷ふうの衣装にバロック音楽は、流れに違和感を与える。
　ガエルが平凡なキャンパスの壁画を斬新な現代アートに描きかえるシーンは、唯一、なるほどと納得の部分だし、バスケットボールのコーチの父におぼえる疎外感は体育会系と芸術家肌の不理解ながら、ガエルが十万の借金をかかえて犯罪組織のボス（ジョニー・デルガド）がカリカチュアっぽく登場がシラけ、ネータンを連れてくる金ピカの美術まみれの部屋で、中国なまりの男（ジェフリー・タム）がブタの貯金箱を壊す行動が文字どおりのナンセンスで狙いが不明。
　エリマキトカゲがシンボルのカレッジにおいて、エリマキトカゲのぬいぐるみを着る学生（ケチャップ・ユーセビオ）と、その頭部を奪った学生（ボーイ・２・キソン）の追っかけ合いも、ただ騒がしいだけ。
　インディラによるキム・チウの歌の挿入や、消沈の主人公四人の歌がセンティメンタルに重なるところなど、ファン・サーヴィスだろうが、いい加減にうんざり。ラストのバスケットボールの再試合にワン・ショットのカメラの移動でカミカゼーが主題歌を演奏のライヴ会場へ移動が意欲を示すとはいえ、主題歌自体がうるさくて魅力に欠く。
　刑事を紹介のイメージは、具体的な題名が浮かばないが、アメリカ合衆国のＴＶのマネで、プレシャスたち四名が横一列に並んで周囲に迷惑をかけながらジャマにキャンパスを歩くシーンも、アメリカ合衆国のＴＶをイメージにおく。刑事の車が五十年代のアメリカ合衆国のクラシックなら、プレシャスたちのアホぶりにかぶる音楽が、どことなくＴＶシリーズの『チャーリーズ・エンジェル』ふうに聞こえる。とアメリカ合衆国志向にげんなりなうえ、刑事の変装捜査がシャーロック・ホームズや田吾作など、どれもあきれるばかり。
　事件の全貌を審査のスポーツ協会による公開協議は、やや『セント・オブ・ウーマン／夢の香り』を連想も、小気味よいテンポの差で負けだし、議長（ボジー・パスクア）と代表（シエナ・オラソ）の再試合前のとう突なトラブル解消が安易なしょうもなさ。
　やはりマイケル・ジョーダンの名前で呼ばれる長身のバスケットボールのキャプテンを演じるリック・アルヴァレスは実際にフィリピンのプロのバスケットボール選手で、星マークのついた赤いＴシャツが、ほとんどドロンパも同然の、よくヴェトナムで売られる国旗をデザインのと同様なのに、ギャグじゃないけど、つい苦笑いが起きる。
　女優ではキム・チムよりもマッハ・サルヴァドルにときめくも、くだらないパーティーで縦型のルーレットをまわす王様ゲームに似た遊びで「裸で走る」が当たったにもかかわらず、そのシーンがなくて残念。カルラ・フンフリーズはともかく、雑誌に掲載のグラビアでセクシーなカト・アラノ、デニス・ラウレルにそそるシチュエーションがないので、こちらも失望ながら、一応はカトにバストの谷間ののぞくドレスがある。個人的には下着と水着のグラビアがキュートなパティー・ラウレルの出演に期待が盛りあがったが、ガエルの姉役でメガネをかけ、おとなしいキャラクターにとどまる。白人女性のカメラマンの撮影にガエルがネータンを案内のとき、水着のモデルがかわいいも、モデル役はジャスミン・カーンのようだ。
　ほかにディスコやパーティーで気になる女性がいるが、キャンパスの女子学生たちはイマイチで、プレシャスの家のコミカルな双子の家政婦（テレサ・シルヴェストレ、レオノーラ・シルヴェストレ）は容貌がどうのの対象外。水泳で男子学生ばかりが落胆を招く。
　ヴェテラン陣は肥満が目だち、チェリー・パイ・ピカチェは太っても熟女の色気を放つも、アーリン・ムーラックは醜いと断言したくなる。ネータンの母役のイロナー・ジーンは、ほんの少しの顔みせだった。