ＦＡＮＴＡＳＴＩＣ　ＭＡＮ
　
03年：オクトアーツ・フィルムズ／Ｍ−ゼット・ＴＶプロダクションズ
監督：トニー・Ｙ・レイエス
主演：ヴィク・ソット
　　　 アラ・ミナ
　　　 マイケル・Ｖ
　　　 アリシア・メーヤー
　　　 ゾーレン・レガスピ
　　　 ダニカ・ソット
　　　 レオ・マルティネス
　　　 ナネット・インヴェントル
　　　 ジョーイ・デ・レオン
　　 　ジミー・サントス
　　　 レス・コルテス
　　　 アラン・Ｋ
　　　 ディック・イズラエル
　　　 セックスボン・ダンサーズ
　トニー・Ｙ・レイエスとヴィク・ソットのティームが『ＬＡＳＴＩＫＭＡＮ』のヒットに応じて、二匹目のドジョウを狙った作品なのは間違いない。トニーと名コンビのマイケル・Ｖが加わり、ストーリーを担当のうえ、レオ・マルティネスも共演だから、豪華なコメディアンの顔合わせといえそう。またチョイ役陣にアラン・Ｋ、ジョーイ・デ・レオン、ジミー・サントスといった喜劇のメンバーだけでなく、ゾーレン・レガスピ、レス・コルテス、ディック・イズラエル、ロミー・ディアスなどのアクション系スターが出演し、実にぜい沢。
　でも、そのまま面白さへつながらないから、映画とは難しいところ。
　まずメイン・キャラであるファンタスティック・マン自体がこれといった特徴に奇抜さを欠き、バリアで銃の弾丸を受けとめ、まとめてはね返す程度で、画期的なアイディアに乏しい。ゴム人間だったラスティクマンのほうにまだユニークさを感じる。いかにヴィクがファンタスティック・マンになったかの展開も、いっけん『レイダース　失われたアーク《聖櫃》』を連想させるお宝探しもどき考古学的なアドヴェンチャーで、オリジナリティー不足。謎の洞窟内で秘密を解明するエピソードのあたり、エルミル・サイソンの担当の音楽が、どことなくダニー・エルフマンの『バットマン』に似ているが…
　とくに構成上もっとも弱い点は、ファンタスティック・マンを罠にはめる陰謀が最後まで登場しないこと。アラ・ミナ演じる恋人がエイリアンに取りつかれ、ディアボリカという悪魔の化身に変貌のため、これとファンタスティック・マンの対決がクライマックスで、ときどきディアボリカが我に返り、最愛の人を粉砕できないと困惑し、ファンタスティック・マンが正気に戻すための説得を懸命に行うというドラマティックさが基本にあるも、ファンタスティック・マンが誤解から民衆の敵と勘違いされるといった定番のシチュエーションを生まず、イマイチと指摘せざるをえない。ディアボリカからモンスターが抜けでたあとのバトルは、日本の特撮戦隊ものとさして変わりがない。
　また公園で死闘を繰り広げるとき、マイケル演じるサイエンティストがエイリアンをしとめるナイフを開発で届けにくるのだが、公園の入り口にはのどかにデートのカップルがいるなど、およそ緊張感をそぐというか、危険な雰囲気にほど遠いイメージ。『ＬＡＳＴＩＫＭＡＮ』にも同様のシラける短所があったものの、ホント反省の跡がうかがえないじゃないか。
　ファンタスティック・マンが悪党どもを退治のエピソードの中で、ロナルド・アシナスとレヴィー・イグナシオが演じる袴をはいた日本人もどきはカリカチュアにしても、血のついた日本刀のアップで、いかにも刃がつくりものなのがドッとシラけ、時代劇を知らないフィリピン人には違和感を伴わないのだろうと想像するところ。ロナルドとレヴィーがワイヤー・アクションで飛ぶのは、香港映画と勘違いしないでほしい。ファンタスティック・マンが手裏剣を拡大化で投げ返し、ロナルドの顔に刺すショットにいたっては、ファミリー・ピクチャーとして残酷すぎないか。アラがディアボリカに変わってナネット・インヴェントル演じる叔母とミコ・ソット演じる弟を殺したと暗示の部分でも、本当にナネットとミコが死んだのかはっきりせず、非常にあと味が悪い。
　レオが後半に顔をみせなくなったり、アラに嫉妬のマリッサ・サンチェス演じるブスの上司もアラの変身後にからまず、中途半端このうえない。
　まあ、図書館でヴィクとアラがキスのタイミングで本棚をドミノ倒しにしてしまい、レオが下敷きになるギャグは、定番パターンながら、そこそこ笑えたかな。
　とにかく作品自体のできは相当に低いと評さざるをえないものの、それでも個人的に『ＬＡＳＴＩＫＭＡＮ』以上というか、この手の特撮ヒーローもので過去最高だと断言するのは、ひとえにアラの魅力につきる。かつて『ＳＵＰＥＲ　ＲＡＮＧＥＲ　ＫＩＤＳ』でアラは悪の特撮ヒロインを演じたし、ＴＶシリーズ『ＳＵＰＥＲ　ＫＬＥＮＫ』ではダルナもどきのキャラクターが人気を呼んだから、ＳＦ的セクシー・コスチューム・プレイを得意とするながら、今回のディアボリカは格別にオーラを放っている。背中からゴジラもどきにのこぎりの刃がはえてきたり、触覚のようなものが飛びでてくるうえ、顔まで邪悪なマスクで覆ってしまうも、衣装がボディー・スーツのような身体にピッタリとフィットした光沢素材の黒い水着のごとき下着だから、パーフェクトに悩殺される。それで前かがみになって胸の谷間を強調や、蹴りでヒップラインを浮きあがらせたり、お尻を突きだすのみならず、お尻のアップまであって、もうビンビン状態の持続が必至。とくにエイリアンが抜けでてアラ本人に戻った際、ボディー・スーツのまま倒れているポーズには、あああ、もうダメ………　という感じ。図書館勤務の設定なのだが、タイト・スカートで腰をくねらせて本棚に片脚をあげた登場ショットからムズムズを誘発し、アラのセクシー・パワーは文句なく世界一。
　ファミリー・ピクチャーでここまでボキボキに追いこむのは、スゴすぎるというもの。
　ほかに家政婦サイボーグ役でアリシア・メーヤーが出演し、おそらくデビュー作じゃないか。ヴィクが胸をパカッとあけて中の機械をプログラムのシーンなど、なんとなくマイケル・クライトンの『ウエストワールド』を思い起こす。台詞や動作は無機質なロボット風に徹するも、ディアボリカに投げ飛ばされる瞬間、さすがに普通の歩きがみられるのはしょうがないか。ボディコン衣装がそそり、以前、アリシア・ボニファシオの名前でモデルをしていた頃、極小三角ブラに食いこみＴバック水着や、乳首を手で隠したトップレスにハイレグ紐パンティー水着、乳首のまわりだけが隠れたスケスケのブラにほとんど紐一本のパンティー下着などの写真でお世話になっただけに、これから映画でも期待がかかる。
　ミコとＰＪ・マロンソが演じるアラの弟の恋人役であるダニカ・ソットとヴァレリー・コンセプションは、もう一つビビッとくるチャーム・ポイントが迫らない。
　セックスボン・ダンサーズからはロシェル・パンギリナン、ジョパイ・パギア、シンシア・メプチンコ、グレース・ネラ、ジャッキー・リヴァスの五名がゲスト出演し、ホット・パンツで脚線美を強調も、踊るシーンを盛りこまず、サーヴィス不足を感じる。医者役のジョーイがセックスボンを歌う場面でからむとか、うまい工夫がほしかった。