ＥＸＴＲＡＮＧＨＥＲＯ
（特別なヒーロー）
　
97年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：ベン・フェレオ
主演：アンドルー・Ｅ
　　　 ミシェル・アルダナ
　　　 ジョージ・エストレガン（ジュニア）
　　　 デニス・ボロメオ
　コメディアンはアクの強いほうが受けるようで、往年のチャーリー・チャップリンしかり、Ｗ．Ｃ．フィールズしかりなのだが、最近のフィリピンではアンドルー・Ｅがもっともインパクトたっぷりだといえよう。ナンセンス・ギャグをてんこ盛りにおくこの作品でも、アンドルーの個性を前提に企画されたような気がする。
　しかもやはり異彩を放つジョージ・エストレガンを共演にすえ、ぞれぞれが正義と悪の化身となって闘うのだから、バカバカしいことこのうえない。
　このバカバカしさが大好きである。
　いきなり田舎で今にも生まれそうなアラ・オセラ演じる妊婦を牛車で病院へ運ぼうと奮起し、オッチョコチョイだからボコボコなめにあわせるエピソードがあるのだが、本来なら腹立たしいはずの行為で笑いをとろうとするわけで、パワーを放ちまくる。
　バランガイ裁判で糾弾をうけて居場所がなくなり、ジョジ・イスラ演じる父からいわれ、アンドルーは別れ別れ状態の母を探すためにマニラへと向かう。
　途中で強盗たちに襲われたミシェル・アルダナ演じる娘を助けるエピソードがきて、マニラに着いてからはたちまち貧困。いつの間にか空き巣仲間に入ってしまうも、たまたまミシェルの家に忍びこんだため…　との展開はハチャメチャ要素に乏しく、食事のギャグなど、それほど笑えない。
　ミシェルに気に入られ、彼女の家にやとわれてからは、二人の恋の進行が語られつつ、このあたりはミシェルの魅力がビンビン伝わってくる。当然、ミシェルの婚約者だったジョージ・エストレガン演じる人物に嫌われ、落ちこんでいるときに宇宙から飛んできた火の玉に打たれるや、突然ヒーローに変身。天の声を聞いて、悪と闘う使命をになう。
　ＴＶレポーターが「アメリカのスーパーマン、バットマン、スパイダーマンのようなものです」と伝え、たまたま口にだした「エキストラ」という言葉から“エキスランヒーロー”との名前がつく。衣装のデザインはかなりスーパーマンを意識におくようだが、まあこんな感じか。
　マニラにきていた父と再会で、留置所を壊したり、父の就職にために悪徳業者から取りたてを行ったりで高能力を発揮しつつ、エイトマンのように脚がみえないくらいに動かしまくって車よりも早く走り、パンクの車を持ちあげて空中に浮かんで走行させ、目からは火をつけるエネルギーをだせば、口からは突風を吹いて消火と、いよいよアホな話に変貌をとげる。視覚的なギャグが中心なので台詞が理解できなくても笑えるながら、オリジナルな発想に欠けるのがやや残念。
『未知との遭遇』の五音階が聞かれたり、音楽にジェームズ・ボンドのフレーズが流れるあたりは、もっとヴィジュアルと連動のパロディー的な使用がほしいところ。
　火の玉は落ちてくるとき二手にわかれ、一方はジョージに当たったのだが、こちらはヘンテコな悪の男に変身。ミシェルの誘拐を企て、あわや列車と激突かの危機を招いたり、手でグニュグニュッと金庫に穴をあけて銀行強盗を働いたりとなる。
　ついにアンドルーとジョージが対決を迎えるや、化学工場をぶっ壊さんばかりに大暴れかと思えば、超能力合戦が意外と地味で、もうひとつスケールに乏しいのは予算の関係だろう。ただしモノをバンバンつぶせないなら、奇想天外なウルトラ攻撃をかけるなどユニークなアイディアを繰り広げてほしかったわけで、創作力不足は否めない。
　ジョージにはずっと慕っているデニス・ボロメオ演じる女性がいるが、彼女もパワーをもらって悪の女に変身。やはりアンドルーからパワーをもらったミシェルと対決の部分は、なかなかセクシーで歓迎。
　最後にゼニー・ザバラ演じるミシェルの義理の母がアンドルーの母とわかるのは余計な印象だが、シメとしてはこんなものか。
　全体的にはあきれるほどとまではいかず、期待どおりではなかったものの、くだらないコメディー好きにすればそれなりに評価の対象の作品といえる。
　ベン・フェレオ監督の次に期待が盛りあがる。
　それでお目当てはミシェルのキュートさだが、個人的にファンなれど、さすがに彼女のことを美人とはいわない。でも今までの中でもっともかわいい彼女をみたような気がする。子どもも楽しめる内容だけにヌードはないし、ビーチのシーンでの水着もあまり大胆でないが、家で体操のときの前かがみになったポーズでのお尻のアップや、チャチャチャを踊るときの超ミニからパンティーがチラりとのぞく瞬間、対決シーンでいったん死ぬも、アンドルーが生き返らせるときにブラウスのシャツのボタンがパチンとはじけ、ブラがでるあたりにゾクゾクをくれる。入浴中にアンドルーを誘惑のエピソードでも、肝心の部分の露出がないことはわかっているのに、色っぽさでメロメロになる。
　デニスもそこそこ魅力的で、他の作品でヌードを拝見したい感じだが、ミシェルが白の、デニスが黒の身体にフィットのパンツ・ルックでムエイタイよろしく蹴りあう姿は悩殺ものだった。