ＥＸ−ＣＯＮ
　
00年：スター・シネマ・プロダクションズ
監督：トト・ナティヴィダッド
主演：ヴィクトル・ネリ
　　　 リカ・ペラレホ
　　　 ノエル・トリニダッド
　　　 デレク・ディー
　　　 アレックス・コルテス
　麻薬の潜入捜査ものではビル・デュークの『ディープ・カバー』という小品佳作が好きだが、さすがにあの作品ほど皮肉はきいていないものの、これもそこそこイケるできになっている。
　アレックス・コルテス演じるチャイニーズ・マフィアの幹部が逮捕されるのだが、刑務所の中まで送られてくる殺し屋をヴィクトル・ネリ演じる囚人が撃退。それで出所後にヴィクトルがボディー・ガードに雇われる。ジェフリー・サントス、ロンメル・モンタノ、ボーイ・ロケなどのクセモノ脇役が演じるヒット・マンを撃退し、バツグンの信頼をかちとっていくまでが前半。ヴィクトルは不良っぽい髪型もあって、本当にワルを主人公におく映画なんだなと思わせるあたりが心憎い。
　スロー・モーションで次々と敵を射殺のくシーンも、なかなか決まっている。
　半ばほどで実は警察の囮捜査官とわかり、今度はパターンだが、ノニ・ブエンカミノ演じる仲間の捜査官の殺害を強いられるシチュエーションなど、苦しい立場をしっかり描いていて、ほとんど新味はないものの、普通によくできていると評価したい。
　正体をバラしたあとは、組織の幹部を一網打尽にすべく覚醒剤の隠れ工場である郊外の廃墟へと乗りこみ銃撃戦を展開に、ロープを使ったぶらさがっての殴り合いなどけっこう頑張りをみせ、ここも合格点。トト・ナティヴィダッド監督は『Ｐａｌａｂａｎ』以降、相当うまくなったなと感じさせる。
　それでとくに面白いのは、チャイニーズ・マフィアを正面から扱う点。棒術のアクションなどは香港映画にかなわないが、ちらっとマニラのチャイナ・タウンの裏がのぞけるし、京劇がでてきたり、ヴィクトルが太極拳を習うといったシーンがあったりで、かなり興味深い。アレックスが仏教寺院で拝むのと、ヴィクトルが教会で祈る部分を勝手に対比での宗教観もうかがえる。教会の懺悔室でトビー・アレハル演じる上司にヴィクトルが情報を伝える設定も、意外とうならせてくれる。また片腕と信頼していたヴィクトルがイヌだったとわかったあと、責任をとってアレックスが仲間に処刑される中国人犯罪組織の掟とでもいうべきものが盛りこまれ、フィリピン人の一方的なイメージでなく、きちんと納得できる描きかたの姿勢を素直に買う。
　ただしアレックスのほか、デレク・ディーやノエル・トリニダッドなど違和感のない中国顔で、中国語を話すシーンもあるのだが、アレックスの娘役のリカ・ペラレホは、まったく中国要素がゼロじゃないか。まあ、アレックスのようなオッサンからリカのようなかわいこちゃんが生まれるわけないから、映画だと割り切ろう。とはいえリカがヴィクトルと恋仲になるのだが、正体を隠すヴィクトルの苦悩や、親の仇となったヴィクトルへのリカの気持ちが中途半端なのは、さすがに不満が残る。
　またアレックスの妻役のメリッサ・メンデスともに、セクシーな発展を期待したにもかかわらず、結局なしで終わりが残念。ヴィクトルとのラヴ・シーンでリカはヘソだしのジーンズ姿でジッパーをおろされ、いよいよかなとワクワクさせたのに…
　でもたとえ脱がなくたって、リカはその容貌とスタイルをおがんでいるだけで勃起ものの魅力で、こちとらとしては完全にノック・アウト。
　ああ、どうしてこんなにかわいいのか（ため息）。