ＥＳＴＲＩＢＯ　ＧＡＮＧ…　ＴＨＥ　ＪＩＮＧＧＯＹ　ＳＥＳＥ　ＳＴＯＲＹ
（駆けこみ乗車ギャング　ジンゴイ・セセ物語）
　
(92)年：オクトアーツ・フィルムズ
監督：ジュン・Ｐ・カブレイラ
主演：ジェリク・ラヴァル
　　　 パキト・ディアス
　　　 レーチェル・ロバンコ
　　　 ロナルド・ヴァルデス
　　　 フランシス・マガロナ
　　　 アンジョー・イリアーナ
　　　 パトリック・デラ・ロサ
　　　 ジェニファー・メンドーサ
　　　 マイキー・ヴィリアヌエヴァ
　　　 ジェーソン・ロマン
　　　 イメルダ・イラナン
　　　 ラヴリー・リヴェロ
　　　 ベルティン・ラブラ
　フィリピン映画がいくら犯罪者の実録ものが好きとはいえ、こんなクズを主人公にすえる必要性があるのか。
　ジプニーやバスなどに駆けこんで乗り、ホールド・アップ強盗するグループの物語で、リーダーのジンゴイ・セセは1990年から93年に“民衆の敵ナンバー・ワン”と呼ばれ、かなり話題にのぼったという。ジェリク・ラヴァル演じるジンゴイは、庶民からカネめのものを巻きあげるだけでも許せないのに、抵抗すると暴力行為に走るから、さっさと死ねばいい。だからパキト・ディアス演じるジェリクに敵意を燃やす悪徳警官も相当な偏見あらわのイヤなキャラに設定なのだが、社会のクズくらいは法を破ってでも退治しろ、と思わせる。
　私生活でもジェリクはジェニファー・メンドーサ演じる恋人がいるのに、レーチェル・ロバンコ演じるバーのダンサーとも関係をもち、レーチェルの顧客が文句をいうとケンカをふっかけ、傲慢の典型。
　クズにほれる女もバカか。
　たまたまラヴリー・リヴェロ演じる実力弁護士の娘がジプニーに乗ったとき、彼女からも奪ったため、ラヴリーはロナルド・ヴァルデス演じる父親に訴える。それでパトリック・デラ・ロサ演じるラヴリーの夫がジェリクの家を襲って、イメルダ・ロマン演じる母親とカティー・サブラン演じる妹をしめあげ、ベルティン・ラブラ演じる伯父を殺す。怒ったジェリクが報復としてパトリックとロナルドを血祭りにあげる展開も、どっちもどっちだが、きっかけをつくったのはジェリクのほうだから、自業自得。
　父親と夫を失ったラヴリーの反応がでてこないから、構成も無茶苦茶。
　最後にパキトとの銃撃戦に発展だが、飛びあがりながら銃の弾を入れかえたり、回転しながら着地といったジェリクらしい見せ場を用意するものの、お前は殺されるべきなのよ、と思ってみるから少しもハラハラを招かない。
　最後にジェリクの死体にイメルダが泣きつくや、こんなクズを育てたのはあんたでしょ、との感じで同情のかけらも起こらない。
　とにかく、クズ、クズ、クズ。
　クズをわざわざ題材にとったジュン・Ｐ・カブレイラ監督など、スタッフの真意を問いたい。
　なおジェニファー、レーチェル、それにグループの女性メンバーを演じたマイキー・ヴィリアヌエヴァ、と女優陣の魅力もまったくの不発。レーチェルとはベッド・シーンがあるのに、セクシーさのみじんも感じられない。ラヴリーの美しさが光るのみ。
　いやはや、みどころなしのクズ映画。
　クズ人間を扱ったのだから、映画もクズになるのは当然か。