ＥＳＥＮＧ　ＮＧ　ＴＯＮＤＯ
（トンドの決闘）
　
97年：ＦＰＪプロダクション
監督：ロンワルド・レイエス、アウグスト・サルヴァドル
主演：フェルナンド・ポー・ジュニア
　　　 イナ・レームンド
　　　 ジェニー・シキア
　　　 チャック・ペレス
　　　 マンディー・オチョア
　　　 ロミー・ディアス
　アクション・スターであるフェルナンド・ポー・ジュニアの人気はかなりのものらしく、これは彼のためにすべてが企画された作品。ロンワルド・レイエスの名で監督も兼任し、残りの要素は彼の添えものにすぎない。クライマックスの工場での銃撃戦にいたるまで、 彼一人がヒロイズムを謳歌する。もっとも個人的には、彼がカッコイイとは感じられないのだが…
　演じる役柄はトンドの警官で、それも正直なことを第一におく正義感。物語は複数の犯罪が団子のようにつながったり、同時進行したりにおいて、それを残らず解決の内容になる。連続女性レイプ殺人事件では、ジェニー・シキア演じる彼の妻も犠牲にあいそうめにおちいり、あわや危機一髪で逃走…　とはいっても、ロンワルドとアウグスト・サルヴァドルの共同監督によるサスペンスの盛りあげがイマイチで、それほどハラハラ・ドキドキを生まないのには困ってしまう。全体的なテンポも小気味よさから遠い。
　正義感なだけに敵も多く、ついにはプロの殺し屋に狙われるという展開を迎えるのだが、陰からの狙撃シーンにも、もう少し手に汗握るスリルが欲しかった。
　もっともアクションはありきたりでも、みるべき要素はちゃんとあり、ジェニーの嫉妬深い恐妻ぶりがなかなかの表現。ほかの女性と親しくしようものなら暴れまくり、でも実際にこういう妻はフィリピンでみかけるよなあ、とすんなり納得。情報収集の過程でイナ・レームンド扮するバーの歌手とねんごろな関係になり、このイナとジェニーがはち合わせのシーンなど、彼はどのように切り抜けるのか、とみているこちらのほうまで興奮を誘う。かっといって他のコメディー・タッチの部分は、それほどおかしくないのだが…
　シンナーを吸う少年がいるといったトンドの現実にもふれるものの、あまり深入りすると暗くなるせいか、点描程度にとどめる。ただしフェエスタの光景を紹介のエピソードには、風俗的な興味が盛りあがった。
　まあ、とくに不満なのは、せっかくイナが出演なのに、その魅力がほとんどでていない点。バーでのセクシーな衣装にて歌うシーンでまずまず刺激をくれる程度で、もっとレイプされそうになるとか、色っぽい見せ場をつくってもよかったんじゃないか。クライマックスでは黒いパンツ・ルックでバツグンのプロポーションを披露しながら機関銃を撃つ姿が用意されるものの、この程度だとかえって消化不良。イナもフェルナンドの添えもの的役柄だから、しょうがないか。