ＥＫＩＳ
（エックス）
　
99年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：エリック・マッティ
主演：アルベルト・マルティネス
　　　 サンシャイン・クルース
　　　 レーモンド・バガチング
　　　 エース・エスピノサ
　　　 ハイメ・ファブレガス
　　　 ライアン・アイゲンマン
　　　 ジョン・アルシーリア
　　　 ジョン・アルセオ
　　　 ケン・ＪＪ・チュア
　　　 ロメオ・ヴァスケス
　　　 ウィリアム・マルティネス
　　　 スーザン・エンリケス
　　　 モーリン・ララサバル
　バスケット・ボールのゴールがある小さな広場を中心におく、メトロ・マニラのバランガイの典型的な雑踏が点描される。ひとりの男がその広場を横切って部屋に入ると、ひとくせありそうな野郎どもがたむろする。奥には口にガム・テープを貼りつけられた子どもがいて、彼らが誘拐犯だとわかる。一気にドラマへと引きこむ、秀逸な出だし。
　野郎どもが子どもを暴力的に扱うなか、一人だけやさしさを示す人物をとらえる。これがアルベルト・マルティネス演じる主人公で、真からのワルでない性格をうかがわせる。
　一方、夫に虐待を受ける妻役のサンシャイン・クルースが登場。その異様な家庭の様子が誘拐事件と同時進行で描かれる。元ダンサーだったサンシャインを夫がサディスティックに責め、冷蔵庫の前でセクシー・ダンスを強要のシーンが鮮烈。セクハラなんてレヴェルをはるかに越えるが、我慢しながらも、憂いを含む表情で挑発的に腰を振ってみせるサンシャインが、なかなか迫力に満ちる場面をつくる。
　セクシー・スターとして人気を誇るサンシャインだが、実をいうと個人的にはあまり好みでない。ふだんはセックス・アピールをそれほど感じないも、このあとのシャワー・シーンはさすがに悩殺パンチ。カーテンごしに全裸のボディーがぼんやりスケてみえるうち、突然カーテンをあけるや、おいしそうなお尻を丸だしに絶品の肢体が目の前に現われる。しかもチラリ陰毛までバッチリにシャワー・ルームからでると、鏡台の前でしゃぶりつきたくなるような乳房を披露する。もう何もいうことなし。
　誘拐現場では身代金受け渡しに野郎どもが向かい、一人だけ見張りが残る。そこへモーリン・ララサバル演じる情婦がやってきて、音楽に合わせながら愛撫を繰り広げる。正直いってモーリンは好みの顔だちで、脇の小さな役に甘んじているのがもったいないほど。男にスカートをまくりあげられ、キュートなお尻がむきだしなうえ、自らシャツを脱ぐや、クッションで乳首を隠しつつブラをはずす。いやはや、まさに興奮のるつぼ。
　愛撫に夢中で油断のすきに子どもが逃げ、あわてて連れ戻そうとするシーンに、スポーツ・スタジアムでの身代金受け渡しのシーンとサンシャインが家出のシーンがシンクロで、三つが同時に進む。身代金の受け渡しは失敗で警察との銃撃戦が始まり、舞台がスタジアムに隣接するプールへと変わる。若いギャルたちのスイミング・ティームがいて、身体にピッチリと濡れて貼りつく競泳水着のプロポーションもセクシーに、プールからあがりながら逃げる姿がたまらない。女の子たちにはそれなりに美形がそろい、この作品はとにかくサーヴィスがよい。
　プールでの襲撃戦に、家出をみつかって夫と殴り合いに発展のサンシャインの描写がグリフィスばりのカット・バックで語られ、サスペンスの盛りあげにも成功している。エリック・マッティ監督、なかなかやるじゃないか。
　なんとか警察の狙撃隊との対決を命からがら振り切ったアルベルトが、思いあまって夫を殺したサンシャインの家へ逃げこんでくるところで、ついに二人が出会うシチュエーションへ。あとはもう型どおりの展開になり、夫の死体の始末を手伝ったアルベルトとサンシャインの間に愛が芽ばえ、極限状況の中で二人が結ばれる。セックス・シーンでは上半身裸でアルベルトに馬乗りのサンシャインが激しく腰をくねらせ、たわわに揺れる乳房を惜しげもなく全開。ウヒャー、またもや鼻息が荒くなるばかり。目は画面へガンガンに釘づけ状態に、いやはや、サンシャインのオッパイは確かにド迫力ものだ。
　最終的にアルベルトは冷酷無比な誘拐犯たちを裏切り、少年を助けるも、警察に撃ち殺されるシメ。両手をあげて投降の意思を示したにもかかわらず、情け容赦なく警察が発砲のラストが、なんともいえないやるせなさを引きだす。明るい希望がまったくみえないままに、これがフィリピンの現実だ、との声が聞こえてくるようにも感じる。
　欲をいえば類型的な人物描写に不満が残ったり、緊張感を引っ張りきれないシーンが若干あるものの、許容範囲内。それほど多くを望む必要はあるまい。
　Ｂ級犯罪アクションとして水準以上のでき、との評価に間違いない。