Ｄ’ＵＲＡＧＯＮＳ
（虫のようだけど強いヤツら）
　
02年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：ベン・フェレオ
主演：エディー・ガルシア
　　　 アンドルー・Ｅ
　　　 アンジェルー・デ・レオン
　　　 パトリシア・ハヴィエール
　　　 ジョコ・ディアス
　　　 ミスティカ
　　　 シャンナ・キリティキット
　　　 ディワタ
　　　 ラサマナス
　　　 ボーイ・ロケ
　　　 ジーン・パディーリア
　エディー・ガルシアとアンドルー・Ｅの共演だが、なんとか個性をかみ合わせているものの、主役の二人に他の要素が引きづられた感がある。
　エディー演じる私立探偵がシャンナ・キリティキット演じる少女の人質を救出のコメディー・タッチのサスペンスと、それをみるやじうまの中にいるアンドルー演じるホームレスが宅配ピザを盗み食いで追跡をうけるスラプスティックを同時進行で描く出だしはまずまず。少女の祖父であるエディー・アレナス演じる富豪の実業家から探偵のエディーが宝石の護送を頼まれ、ミスティカ演じる愛人に富豪が輸送予定を話してしまったため、ジョコ・ディアス演じるミスティカの部下が待ち伏せをする。この強奪シーンは、たまたま居合わせたアンドルーがブリキの鍋やゴミ缶のフタを使ってジョコの手下をのしていくドタバタ・アクションが面白い。
　宝石というのがダイアナ妃の所有だった時価１００万ドルの逸品との設定で、残念ながら持ち去られ、名誉挽回でエディーがいかに取り戻すかがストーリーの主体なものの、しばらくはアンドルーが相棒にしてほしいとエディーにつきまとうエピソードが続く。この前半はちょっと間のびで、まだかまだかと思わせるつまらない印象。便器から顔をだしたアンドルーをエディーが封印も、ボーイ・ロケ演じる悪党たちを退治のエディーの元へ便器をかぶったままのアンドルーが現われるシーンいたっては、ナンセンスさがいささか浮いてしまい、笑う以前にあきれが生じる。
　とにかく二人がコンビにおさまって映画は第二章へと入り、強盗のときに犯人がつけていたペンダントの目撃記憶からジョコがあやしいとにらみ、ジョコが入れこむアンジェルー・デ・レオン演じるＧ．Ｒ．Ｏ．のつとめるカラオケ・クラブへと向かう。うまくアンジェルーとパトリシア・ハヴィエール演じるその友人のアパートをつきとめ、そこを見張る展開になって、当然ながらデバガメに変貌なわけで、けっこう楽しくなってくる。ジョコの手下たちがアンジェルーに誕生日のプレゼントだと絵画や家具を運んできたため、エディーたちが忍びこんで調べようとするとアンジェルーたちが帰宅のあたり、定石パターンながら愉快。
　お約束でエディーとアンジェルー、アンドルーとパトリシアにロマンスが生まれるのは、いうまでもない。
　ジョコが実は刑務所に収監中で、看守に合図を送ると偶然を装いながら鍵を落とし、脱獄をオットットットとみてみぬふりの設定もニヤッとさせるし、ジョコたちが絵画の裏に隠した宝石を取るとアンジェルーを連れ、つかまえたエディーとアンドルーの両手を上に束ねて吊るし、パトリシアを二人の足元に縛ると、ダイナマイトの導火線に火をつけて逃げるや、この導火線をオシッコで消すアイディアも爆笑に値する。パトリシアがアンドルーのジッパーをおろしてチンポをつかみ、狙いを定めて放尿となるが、うまく命中しなかったために選手交代のうえ、今度はエディーのオシッコで間一髪にシュシュッと消火のバカバカしさは、さすがベン・フェレオと納得。
　バスを無理やり停止でジョコたちが乗っ取り、一瞬のうちに乗客たちがクモの子を散らすように窓から逃げていなくなる光景も、なんかフィリピンっぽくて笑いが起きる。
　さらにこのバスと乗用車のカー・チェイスのクライマックスが、さすがにパワフルな描写で頑張っている。バスにしがみついたアンドルーが体を地面と直角に曲げたり、乗用車がバスの中へと跳びこんだり、マジのアクションでもなかなかみられないほどの決死なスタント。バスの屋根でのエディーとジョコの殴りあいもハラハラものなのだが、ミスティカの乗るヘリコプターが登場後のつめが弱い。ヘリのおろした縄ばしごにつかまってエディーが宙を浮き、バスから乗用車でアンドルーたちが跳びだすと、バスがダイナマイトで爆発はハデなものの、ヘリに乗っているミスティカのようすがまったく登場しないため、オイオイどうしてるんだと疑問が生じる。低空飛行のヘリが橋にぶつかって炎上の直前にやっと宝石を受け取って浮かれるようすがでてくるも、ぶらさがるエディーを振り落とそうとしないのはヘンだろう。どんなにスタントや爆破シーンなどで見せ場を構成しても、そこにいたる人物の顔や動きをはさみこむなど、細かいカットのつみ重ねがないことには価値が半減する。これは演出の基本であり、冒頭でエディーとアンドルーの行動をたくにみ同時進行で描いたベン監督らしからぬヘタさ。
　拍手喝采ものにスタントが奮闘だけに、なんとももったいない。
　結果的にクールさとマヌケさの両方をだそうと狙ったエディーがアンドルーのズッコケの前でややトーン・ダウンし、アンドルーが暴れきれないままに終わり、中途半端な作品だといえよう。ジョコなど添えもの的な出演で、主役二人ばかりが目立つわけだから、もう少し人物のやりとりに計算がほしかった。
　それと女優陣も添えもの的な扱いなうえ、ジーンズのアンジェルーが意外とプロポーションのイマイチなのがわかり、いささかげんなり。入浴シーンもあるが、大事な部分を最初からみせないことがバレバレなため、ほとんど興奮に達しないまま。忍びこんだエディーが机の下に隠れると、椅子にすわるアンジェルーのパンティーがみえるカットも、オイオイと不満が起きるほどにお申し訳程度。やはりパトリシアのほうがセクシーで、アンドルーが望遠鏡でのぞくときにスリップで体操の姿が、プルンプルンと揺れるオッパイにウワーッという感じに加え、トイレでパンティーをおろしてオシッコまであり、すっきりしたーという表情をつくる大胆さに圧倒される。アンドルーが部屋へ侵入の最中に入浴を始め、アンジェルーと勘違いで「石鹸とって」と頼み、背中や太腿を洗ってもらうシーンでは、こちらも肝心のパーツをみせないと明白なものの、乳首のでる寸前までの露出にビンビンをくれる。アンドルーとデートでの大きく前がＶ字に開いたシャツからのぞくオッパイの谷間の迫力も別格。
　ミスティカは入浴シーンや、黒いブラとパレオの水着でマッサージを受けるシーンにおいて、いつもの淫乱っぽいおかしさをだすが、体の動きがやや少なめなのが弱い。
　ほかにもエディーの部屋に貼ってあるポスターから抜けでてくる本人の役でディワタがゲスト出演し、白いボディコン・ミニでキュートなイメージを披露や、ジョコの手下の一人にレスリー・フマル演じる女性がいて、黒いレザー・パンツでかっこよく決め、エディーの投げ縄で引っ張られる新婚を演じた新婦役のほうのダナ・デーヴィッドがバス・タオルでくるんだ胸元を強調などあるが、いずれもチョイ役なので、とくにどうってレヴェルではない。
　何というか、主役の二人ばかりを意識においたなあ、とのピントが裏目にでたようだ。