ＤＯＧ　ＴＡＧＳ
　
85年： アーサー・シュワイザー／クリシュナ・シャー／アラン・アダム／ダルー・ジョーンズ／ダース・プロダクションズ
監督：ロマノ・スカヴォリーニ
主演：クライヴ・ウッド
　　　 ベアード・スタッフォード
　　 　ロバート・ホーフレクト
　ヴェトナム戦争における公金の強奪を描くＢ級アクションで、アメリカ映画ながら、全面的にフィリピンでロケーションのうえ、脇のクルーにかなりのフィリピンのスタッフが協力だから、ここで取りあげてみる。
　舞台の設定はほとんどがカンボジアになる。
　作家のクリス・ヒルトン（本人）がフィリピンのヴェトナム難民キャンプでタノイ（ロベルト・ユヘコ）に会い、話を聞く始まりで、実話にヒントを得たという。
　タフな兵士のアル（クライヴ・ウッド）とウィリー（ロバート・ホーフレクト）がヴェトナム軍のキャンプを襲い、戦友のロイ（ベアード・スタッフォード）や捕虜たちを救出。でも傷を負ったドイツ人の記者のエディー（ロバート・マリウス）が亡くなり、ひ弱な兵士のグラス（ピート・エリック）がジャングルに潜む罠の紐を引いてエディーを看護の兵士（キース・クレーグ）が仕込みの矢にやられ、罠を準備の若い女性のヴェトナム兵を殺せないグラスをアルが撃って、味方同士で成敗。この戦闘で黒人兵のピート（ジェームズ・ゲーンズ）が発狂で、ジャングルの奥に消える。と一行がアルとウィリーとロイの三名になる過程で、まず小隊による局地戦の惨状がリアルに伝わる。泥まみれに加え、痛みどめに麻薬を射つなどが雰囲気をよく伝える。
　ロマノ・スカヴォリーニの演出に納得。
　池に隠れた罠でロイの脚に杭が刺さり、抜きとるようすに臨場感がにじむ。ウィリーが日本兵ふうのふんどしなのが、また野戦っぽい。
　実は救出作戦に裏があり、ニューポート大尉（マイク・モンティー）がアルたちに墜落のヘリコプターから重要書類を回収させる狙い。多くのフィリピン映画でおなじみ、ロケーションのメッカ、滝の落ちる池にヘリコプターの残骸が転がり、ここに書類でなくて金を発見。私欲のために命の危険にさらされたアルたちがネコババで逃亡を決める。でも彼らの行動はニューポートに読まれている。
　カンボジアからタイへ向かい、ヴェトナム人かカンボジア人の家族と知り合う描写がないうちに同行も、父（アドルフォ・アロロング）と娘（ジジ・ドゥエニャス）と少年のタノイ（ジェリコ・オンデヴィリーア）の家族が説得力をもつキャラクター。ロイの脚が悪化で壊疽を起こし、ついに切断で麻酔が切れて父の阿片をもらい、のこぎりで力を入れるアルの表情や、気絶のロイを押さえるウィリーに緊張でよだれがたれる現実味が迫力を呼ぶ。神経が戻って痛がるロイに娘がチンポをこすってあげる介護も思わず息をのむサスペンス。滝の落ちる池がヘリコプターの墜落現場と同じは手抜きながら、水浴びの娘が池に張られる罠の紐に引っかかり、アルが助けるあたりにサスペンスが続く。タノイが金をみつけ、アルが罠に気がついたはずのタノイを「ヴェトコンだろう」と問いつめれば、静かにタノイが「ヴェトコンじゃない」と反論のよどんだ空気が肌にふれるごとくわかる。
　本当にロマノ・スカヴォリーニの演出に納得。
　アルたちの居場所にナパーム爆撃で、戦争に関係のないカンボジアまで平気で無差別攻撃の野蛮なアメリカ軍を描出がよい。
　個人的に関心事のフィリピン女優の登場だと、スターじゃなくて、ジジ・ドゥエニャスを起用に注目。『ＯＲＯ，ＰＬＡＴＡ，ＭＡＴＡ』や『ＨＩＭＡＬＡ』の脇役が印象に残るが、ここでは池の水浴びで乳首をみせる。罠から脱出のときもトップレスのままをとおす。ブスっぽいし、ボディーも貧弱で魅力が薄いながら、かえって全体のムードに溶けこむ。
　男優にはアメリカ映画に出演の多いロマノ・クリストフが冒頭でヴェトナムの民間人や離陸のヘリコプターに発砲や、ツメでニューポートの指示で金を奪いにくるも、アルとウィリーに撃たれるエージェント役で顔をだす。
　ほかにニューポートとホテルにいる乳首を露出の娼婦役は、女優名が不明。エージェントがテーブルで飲む兵（ニック・ニコルスン）に聞いてニューポートに会う場所のゴー・ゴー・バーはビキニのダンサーたちが踊り、トップレスのものもいて、おそらくフィリピンのどこかの店だろう。
　まあ、美人のフィリピン女優の期待は裏切られたといえるし、ニューポートの乗るヘリコプターを爆破に罠を活用と、いささか実際の銃撃戦よりも罠を使いすぎの印象が残るが、語り口のタッチはさておき、ロマノ・スカヴォリーニの映像づくりに高評価をあげたいＢ級戦争作だった。

※　この作品は『バトルウォーズ』の題名でヴィデオ発売されたことがある。