ＤＩ　ＭＡＰＩＧＩＬ　ＡＮＧ　ＩＮＩＴ
（止まらない暑さ）

　
01年：タウルス・フィルムズ
監督：アンヘリート・Ｊ・デ・グスマン
主演：ヘーゼル・エスピノサ
　　　 マリネラ・モラン
　　　 ジャッキー・ディアス
　　　 エルウィン・モンテス
　　　 エリック・ロドリゲス
　　　 ヴィク・サントス
　　　 ポーリン・ガリパル
　カーティス・ハンスンの『ゆりかごを揺らす手』は好きな映画の一本だが、あれを下敷きにおいたというよりは、堂々とパクッた作品。
　妊婦が産婦人科の医師にセクハラを受け、夫の協力もあって、泣き寝入りすることなく刑事告発におよぶ。医師は自殺で亡くなり、そのフィアンセが素性を隠して復讐のために妊婦だった女性の家にメイドで住みこむ、とのストーリーはまったく同じ。当然ながら、パクリ作品が本家を超えるのは難しいもので、ここでも物語の進行にともなって元の作品と比較の観賞法になるのは避けられず、その構成力、演出力の差が歴然。監督のアンヘリート・Ｊ・デ・グスマンが脚本も執筆だが、のちに『Ｌ．Ａ．コンフィデンシャル』を撮るカーティス・ハンソンとでは勝負にならなかったということか。
　まずは医師の描きかたからして、エルウィン・モンテス演じる人物はごう慢な飲んだくれで、セクハラも薬を使って硬直されたあとにレイプの非道ぶりで、これじゃ死んだほうがましな奴だと思わせるから困りもの。あとの復讐劇に著しく説得力を欠くだろう。わかりやすいのがフィリピンっぽいのかな。
　大きな失敗の原因は視点の違いにあり、元が医師を告発の妻と復讐にきた女を対等関係にあつかうのに対し、ここでは告発の妻の感情描写のみが主だから対決感がでてこない。元におけるレベッカ・デモーネー演じる女が復讐の相手の赤ん坊に自分のオッパイを飲ませて手なづけるあたりの陰湿な方法が生むサスペンスは絶品だが、同じ設定のジャッキー・ディアス演じる女はベビー・シッターになったものの、赤ちゃんを復讐の道具に利用しないため、薄っぺらな平凡さに終わる。ジャッキーが浮気をでっちあげるための写真撮影にカメラマンを使ったり、単独犯でないあたりも狂気が減少の要因。
　またヘーゼル・エスピノサ演じる告発の妻が、エリック・ロドリゲス演じる夫の浮気を疑ってヒステリーにおちいるのはよいも、実際にエリックがマリネラ・モラン演じる妻の親友のＴＶレポーターと肉体関係を結ぶのは、あまりにも余計なんじゃないか。そもそもヘーゼルの告発の際に協力は自然ながら、親友との設定でずっとマリネラがストーリーにからむのは蛇足。本来なら一本張りつめるべき緊張感に散漫さを招くだけである。
　とはいっても、セックス・シーンで全裸をみせるのは嬉しいが…　もう少しマリネラが美人だったら、もっとウハウハなのになあ…
　元より一つだけ納得できたのはエリックを意外と誘惑に弱い人物に設定の点で、マリネラとの浮気のみならず、ジャッキーに迫られてつい下着を脱がせ、オッパイ丸だしにまでむくあたり、自分に置き換えてみても納得がいくから、それほど違和感がない。元ではレベッカ・デモーネーのような女性に迫られても夫が強い意思ではね返し、あんたは聖人君主かとあきれるばかりで、人間ぽさを感じとれなかったもの。
　それと元よりもう一つだけ勝っている点をあげれば、これは個人的な好みの問題だが、レベッカ・デモーネーよりもヘーゼルのほうが魅力的なことで、レイプのあとに帰宅して空の浴槽で泣くシーン、夫とセックスにレイプを思いだして苦しむシーン、退院のあとに夫と仲直りでセックスのシーンの三度の全裸が、みていてビンビン状態をくれる。
　ジャッキーはそれほど美人じゃないが、やはり元のアナベラ・シオラよりはセクシーで、わざとエリックに全裸をみられるシャワー・シーンに興奮。
　まあヘーゼル、アナベラ、ジャッキーが主役だけに最初から小品なのは明白だし、パクりをまともに批評しようとするだけバカバカしいもの。彼女たちのハダカを堪能できるから、それでよしなのだ。