89年：ボナンサ・フィルムズ
監督：ペペ・マルコス
主演：フィリップ・サルヴァドル
マリアンネ・デラ・リヴァ
ロビン・パディーリア
レイ・“ＰＪ”・アヴェリアーナ
エフレン・レイエス・ジュニア
ボビー・ショルナック
コンラッド・ポー
ザンドロ・ザモラ
ラウル・アラゴン
アトイ・コー
Ｒ・Ｒ・ヘレラ
ファミリー・ギャングもので、フィリピン映画にちょくちょくみられるジャンルといえる。
海外就労から父（レナート・デル・プラド）が帰るや、子どもたちの元を離れて母（ルシタ・ソリアノ）が別の男と住んでいる。キレた父が男を殺していなくなり、子どもたちところへ戻った母を長男が追いだす。港湾労働で弟たちを養っていたデリマ家の長男のトロイ（フィリップ・サルヴァドル）が成人で結婚し、妻のエミリ（マリアンネ・デラ・リヴァ）が子どもを出産。末の弟のホセ（ロビン・パディーリア）が入院と出費がかさみ、医者から盗んで悪の道に走る。バーでケンカの相手のオマール（コンラッド・ポー）とボーイ（ザンドロ・ザモラ）と意気投合でグループを組むや、銀行強盗で本格的な犯罪者になる。あとは仲間や弟たちが次々とやられる型どおりの展開。警察側に上司（ラウル・アラゴン）の命令を無視のうえにトロイを感情的に憎み、私怨で法律を逸脱の非情な悪徳警官のサレント（エフレン・レイエス・ジュニア）を配するも、主人公へ同情を誘うための常とう手段だし、それでプロの強盗に共感が起きるわけがなく、だからどうだっていうの。エドガルド・レイエスとジョー・カレオン（ホセ・Ｎ・カレオン）の脚本が荒く、ホセなどが殺され、ギャングに加担しなかった次男のペドリン（レイ・“ＰＪ”・アヴェリアーナ）が出稼ぎから帰宅でショックをうけ、隠れていたトロイが墓にすがって泣く葬式のセンティメンタルな情感が、自業自得に思えてくる。トロイのピストルをみつけたエミリの非難や、エミリの母（ルーシー・キント）の心配をプラスも、これまたトロイの行為の正当性につながらない。しょせん、死んで当然の奴らの低脳話。トロイたちがセブ警察署を襲う報復では、サレントが不在だった設定に、そんなのいる事実を確かめずに命を張りにきたわけっ、と真剣にバカかいな。
ペペ・マルコスの演出は雨の中の銃撃戦に映像的な見せ場をつくるも、トロイがサレントに撃たれる夢の挿入や、オマールから麻酔なしで弾丸を抜きとる素人手術など定番だし、船の襲撃の際に工夫が乏しく、ラストで瀕死のトロイがサレントをしとめるシーンのカタルシス低下が致命的。
駄作と評価せざるをえない。
カネが入れば家具を買って大きな家に移るのがフィリピンぽく、ホセがカネなしで賭けてブローカー（レネ・ホーキンス）ともめる闘鶏場が風俗的に興味を引く程度。
お色気要素も不発に終わり、マリアンネはセクシーに遠いし、トロイがオマールとボーイと殴り合うバーのダンサーが水着でないうえ、ホステスがあとにでずじまい。オマールがやられるサウナですら、水着のマッサージ嬢を欠く。ホセがビーチで遊ぶとき、庶民的な容貌の恋人役がワンピースのビキニをおがませるくらいのレヴェル。
困った作品だ。
