ＤＡＬＡＷＡ　ＬＡＢＡＮ　ＳＡ　ＭＵＮＤＯ
ＡＮＧ　ＳＩＧＡ　ＡＴ　ＡＮＧ　ＢＥＡＵＴＹ
（二人の戦いの世界　炎と美女）
　
(93)年：オクトアーツ・フィルムズ
監督：デオ・Ｊ・ファハルド・ジュニア
主演：ジェリク・ラヴァル
　　　 ルッファ・グチェレス
　　　 ロイ・ヴィンソン
　　　 エディー・ロドリゲス
　　　 グロリア・ディアス
　　　 ダリア・ラミレス
　　　 ズバス・ヘレロ
　　　 マイケル・リヴェロ
　　　 シャーリー・フエンテス
　　　 ウィリアム・ロレンソ
　もう型どおりのアクション小品に、だからどうしたのという感じ。
　ジェリク・ラヴァル演じるのが修理工で、いわゆる庶民のアンちゃん。ルッファ・グチェレス演じるのが上級のお嬢さまで、しかも美人。たまたま腕っぷしの強いアンちゃんにお嬢さまが引かれ、両親の反対を押し切って交際を始める。アンちゃんには親しい友人たちがいて助け合い、近所の子どもたちから慕われている。またとなりのネエちゃんがホレているため、お嬢さまへの嫉妬が生まれる。犯罪グループのボスがアンちゃんの度胸に目をつけて仲間へ誘うも、きっぱりノーの返事。お嬢さまへの横恋慕もあって無理やり拉致におよび、アンちゃんが助けに向かう。
　ホント、驚くほど下町犯罪もののパターンを踏んでいる。脚本を兼ねたデオ・Ｊ・ファハルド・ジュニアの演出からは意欲がうかがえない。
　一応、ジェリクが勝利でロイ・ヴィンソン演じるボスの注目を集めるストリート・ファイトや、ルッファがウィリアム・ロレンソ演じる不良に迫られるディスコなど、街の風俗を盛りこもうとするも、ジェリクが参加のモトクロスといった強引な挿入が浮いて、さほど感心しない。ルッファがからまれてジェリクとケンカになるバランガイでの殴り合いは、汚物にまみれるあたりがパワーを放つうえ、ルッファまで汚れるながら、中途半端にとどまってイマイチ。肝心のクライマックスにおけるバイクと馬のチェイスがハラハラに遠いのが決定的な短所に思える。ウィリアムと組んだロイが子どもたちを連れ去り、いったんジェリクが助けだしたら、今度はルッファとのダンゴつなぎの構成も緊迫感を弱める。マイケル・リヴェロ、ジェラルド・エヘルシトなどが演じるジェリクの友人に活躍の場が少ない配慮も気になる。
　エディー・ロドリゲス演じる父と一緒にジェリクがカネもちのふりでルッファの両親を招き、アイク・ロサダとデンショ・パディーリア演じるオカマが執事のマネのあと女装で現われ、ズバス・ヘレロ演じるルッファの父が堅物なのに、なぜかパーティーで女装にされるエピソードはコメディー部分。グロリア・ディアス演じるルッファの母が十字架の置物の重さによろけたり、ダニー・ラブラ演じる部下のつけたライターの火でロイが真っ黒になるなど、全体的に喜劇色が狙いかもしれない。
　ダリア・ラミレス演じるジェリクの母がケバさで存在感を示すのと、留置されたジェリクのために子どもたちが釈放を訴えるあたりが、ちょっとまあまあかな。
　雨の中で愛を告白のシーンがあるにもかかわらず、濡れる誘惑に乏しく、ルッファがセクシーさを抑えたままは個人的に最大の不満点。ジェリクにホレるネエちゃん役のシャーリー・フエンテスは車の中でジェリクにアタックをかけるも、脱がずじまいが残念だった。