ＤＡＬＡＧＡＮＧ　ＤＡＧＡＴ
（乙女の海）
　
97年：グッド・ハーヴェスト・プロダクションズ
監督：タタ・エステバン
主演：アヤ・メデル
　　　 トフィー・カルマ
　　　 カミール・ロハス
　　　 レオ・ラバゴ
　　　 アリッサ・アルヴァレス
　　　 ジェフリー・ゴンサレス
　アヤ・メデルの魅力を存分にだそうとの内容だから、ファンにすれば見逃せない作品。ほかの要素など、最初から期待の外になる。
　それでも興味深い部分がいくつかあり、まず北イロコス州のクリマオという、ロケ地の風景が面白い。タイトル前のシーンでアヤが、早朝に焚き火をしながら白いパンティー一枚になって、トップレスでたわむれる海の描写から引きつけるが、太陽が昇ったころ、漁にでていた船が帰ってくるあたり、木下恵介の『なつかしき笛や太鼓』などでみたノボリを立てた日本の場合とは違うなあ、と思わせる。海岸での取り引き開始で、コメディー・リリーフにあたる頭の弱い男を先頭に、子どもたちが引きあげられた船や、交渉中の人たちの間を行進をカメラが追いながらとらえ、ホメすぎかもしれないが、ちょっとルキノ・ヴィスコンティの『揺れる大地』を思いだす。
　また町では荷物を運ぶときなど手こぎのバンカーで移動し、海岸でのミーティングのさいにもバンカーに乗ったままの状態で集まり、実に好奇心をくすぐる光景が広がる。これだけでも十分に価値があるんじゃないか。
　アティハティハンで踊るフィエスタは、どこも同じような感じだなあといった印象ながら、ドラマにたくみにからませながらたっぷり紹介の点を評価したい。
　さらにはトフィー・カルマ扮する都会の男が休暇をすごしにきて、みんなが歓迎とあこがれを抱くのは田舎だなあと思うも、レオ・ラバゴ扮する魚会社の重役で、市長の座を狙う男に案内されて漁に同行し、ダイナマイト・フィッシングに遭遇のシーンがショッキング。バンバン波が打ちあがる様子がすごいが、そこで「こんなことはいけない」と非難のトフィーに環境意識の高まりをうかがうことができる。トフィーはアヤを捨ててマニラへ帰っていくシーンでも「ダイナマイト・フィッシングは絶対にやめるように」といっていて、くだらない映画にもさり気なく問題提起を盛りこむ点をまた評価したい。
　物語はシンデレラ的な夢を抱くアヤがトフィーにあこがれるのだが、多少のすれ違いのあと、うまく愛し合うようになる。これに妹のアヤや弟を支えるために焼きものをつくって働くカミール・ロハス扮する姉が、アヤのことを好きなボーイ・フレンドと肉体関係をもち、これをアヤに目撃されたので、アメリカ人とくっついて去るエピソード。レオに迫られたものの、好きになれず、トフィーに悩みを打ち明けたことを誤解され、レオから暴行を受けるアリッサ・アルヴァレス扮する娘のエピソードなどがダブる。
　カミールが一生懸命に頑張るのに、アヤがフラフラ遊んでいる最初のあたりは、あまりアヤに同情できないが、カミールが去ってから愛の大きさに気づく展開はまずまず。レオは最低の男にキャラづけで、山羊や鶏がいる囲いの中でアリッサと無理やりセックスや、血がでるまで暴行などとどうしようもなく、トフィーが自分の野望へジャマだと感じるや、みんなの前で祝福をうけた彼の恋人のアヤまでレイプにおよぶ。特権階級の者がワガママとの設定は、さすがに定石ながら、無残に犯されたアヤをみて捨てるトフィーの情けなさも、女性がしっかりもので、男性は本当にダメなヤツが多いフィリピン社会を反映するかのよう。
　このあたりちょっとトーマス・ハーディーの『ダーバヴィル家のテス』を連想だが、またほめすぎだろうか。
　二年が経ち、マニラでディスコＫＴＶのダンサーに転身のアヤとトフィーが再会で、愛が戻るも、アヤに欲望を抱いたギャング連中にトフィーが誘拐され、アクション・シーンが展開は余計だろう。映画にハデさを加えたかったと推測ながら、結局、二人は田舎へ帰って結ばれ、めでたし、めでたし。
　やっぱりくだらない内容である。
　最初にもいったように、ストーリーなんて期待の外だったので、そんなことはどうでもよく、さすがアヤとのコンビの多いタタ・エステバン監督だけに、よく彼女の魅力を心得ている点を素直に喜びたい。
　冒頭の遠景によるトップレスのあと、水浴びをのぞかれるシーンで乳房をチラつかせたり、鏡の前で着がえるシーンでの白いパンティーのうしろ姿など、肝心の部分をはっきり撮らないジラせかたがうまい。海岸でカミールからの手紙を読むさいに、ビキニ水着でみごとな胸の谷間を強調のあと、トフィーとキスのシーンでハイレグ・Ｔバックと、順序を踏まえて露出を増やす。そしてレオにレイプをうけるときは、服をやぶられ、あのおそらくフィリピンでもっともキュートなオッパイが丸みえ。
　ドキドキ興奮もので、まったくみごとのひと言。
　ところが、これで終わるようなサービス精神ではなかった。感謝感激で、とにかく１２０％悩殺パンチの、ものすごいアヤがさらに用意される。ディスコＫＴＶ（この店は『百合門』という名前で、ケソンのティモグあたりのようだが、まだあるのだろうか）で踊るシーンで、ななな、なんとエナメル素材の光沢ウルトラ・ハイレグ。お尻をクネクネ動かすアップのあと、わざと肌を濡らせてキラキラ光らせるのがドキドキもので迫ってくる。ブラは乳首のまわりを小さく包んだだけの三角ビキニで、今にも中身がこぼれでそう。胸の谷間はこれ以上ない理想形をつくり、その動きに全身の血がカッカ燃える。アヤの全裸は何度も堪能したが、こういった大胆水着のほうがはるかに挑発的なのは、ボディーが完璧だからだろう。しかも美人なので、表情にも吸いこまれそうなのは当然だが、目は男を狂わせるだけのセクシー・ビームをガンガンに送りこみ、心臓がとまりそうなくらいの衝撃を受ける。
　ああ、なんと動物的すぎる誘惑。やっぱりアヤは性の女神じゃないか。
　エナメル・ビキニのまま舞台裏にいる光景も興奮が持続のうえ、次のステージでは細い紐一本のＴバックがお尻に食いこみ、鼻血がでるどころの騒ぎではない。
　アヤ、万歳。
　他の女優ではカミールがセックス・シーンで半裸だが、乳房を手で隠し、いつものような露出はどうしたのって印象。それほど好みじゃないから、別にいいが…
　アリッサはそこそこかわいく、ヌードはないものの、オオッと驚きのハイレグ水着でうっとりをくれた。