ＤＡＨＩＬ　ＴＡＮＧＩＮＧ　ＩＫＡＷ
（あなたは特別だから）
　
97年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：マック・Ｃ・アレハンドレ
主演：ドンナ・クルース
　　　 イアン・デ・レオン
　　　 ジャオ・マパ
　　　 ロナルド・ヴァルデス
　　　 フリオ・ディアス
　　　 キャンディー・パンギリナン
　都会で裕福な家庭に暮らす娘と、田舎で貧しいながらも明るく育つ娘。実は別々の環境にある二人が双子の姉妹だと気がついていない。でもそれぞれの恋人が田舎や都会へでかけた際にそっくりさんをみかけ、これをきっかけに対峙のときがやってくる。経済的な理由から両親が一人を里子にだし、捨てられたかっこうのほうが何不自由なく生きている。どこか川端康成の『古都』に似たシチュエーションだが、話の流れはもちろんのこと、ドンナ・クルースが二役を演じる姉妹の性格づけがまったく違っていて、フィリピン人の思考回路がうかがえるよう。それだけに『古都』との比較で考えればおもしろいかもしれない。
　最初に二人が自動車と自転車の事故を起こし、相手に食ってかかるのに男まさりな共通点を示すのが、ありきたりといえばありきたり。お嬢さまのほうのドンナは当然ながらお高く、イアン・デ・レオン演じるボーイ・フレンドへ威圧的なら、庶民のドンナもジャオ・マパ演じるボーイ・フレンドへ積極的に接する。ジャオがジョイス・ヒメネス（エンド・クレジットではジョイス・メンドーサと書かれている）演じる女性と浮気のようすをつかみ、キャンディー・パンギリナン演じる友だちとともに意地悪でやっつける。お嬢さまのドンナは学校で生徒会長選挙に立候補するも、ベルナデット・アリソン演じるライヴァルに大差で破れ、イアンがベルナデットと仲がよいためにご機嫌ななめ。でもトラブルがかえって二つのカップルの恋を進展させる。自分のコピーのような人物がいるとわかり、お嬢さまのドンナがロナルド・ヴァルデス演じる父親から、庶民のドンナがフリオ・ディアスとルイ・マナンサラ演じる両親から出生の秘密を聞き、お互いがショックをうける。すぐに親子が以前にも増して絆を深め、お嬢さまのドンナが田舎を訪ねて実の両親に会い、姉妹が初対面をはたす。
　メル・メンドーサ・デル・ロサリオの脚本とマック・Ｃ・アレハンドレ監督の手堅くまとめた青春ロマンスながら、中間部がややタルく、あくびを誘うのがつらい。技術的にはドンナとドンナが一つの画面に登場するショットでホワイト・バランスが一定でないため、合成のバレているあたりが細部の配慮を欠く。
　ただし双方のドンナの前向きな考えかたは、退くことが自立につながる『古都』の主人公と対照的で、どちらがいい悪いではなく、日本人と人間観というか、生活の美学が異なる印象に興味を感じる。
　ドンナはさして好みじゃないが、女優だとベルナデットのかわいさに引かれる。お嬢さまのドンナの仲間を演じるエリカ・フィフェとマリカル・デ・メサは、エリカの赤パンがスタイルを強調でキュート。マリカルはセクシーさをまだ抑えているも、美人ぶりがよくわかる。ジョイスはヘソだし衣装までで、こちらはヌード披露の予感を抱かせる。
　あと山の花農家の光景が、バック・グラウンドの雰囲気をたくみにつくっていた。