（とってもとっても愛してるから）
98年：スター・シネマ・プロダクションズ
監督：ウェン・Ｖ・デラマス
主演：クローディン・バレート
リコ・ヤン
ディーテル・オカンポ
ジャクリン・ホセ
イザベル・リヴァス
ジャン・マリニ・アラノ
ライラニ・ナヴァロ
めぐまれた環境にある甘えた連中の青春映画というのは、みていて不愉快だ。
冒頭、イザベル・リヴァス演じる中年女性がファラー・フロレル演じる義理の娘に一千万ペソわたし「これで二度と会わない」と告げると、ファラーが「大丈夫、来週からパリへ行く」と応えていて、フィリピンにちょくちょくいるアホ中流の話だなとわかる。イザベルの息子が、リコ・ヤン演じる主人公の男子学生。
ディーテル・オカンポ演じる恋人の浮気の現場をクローディン・バレート演じる女子学生がみつけ、怒りで立ち去るシーンへと続く。クローディンがもうひとりの主人公。ちなみにディーテルのお相手を演じたアレクシス・アギラーは、ちょっとブスっぽいかな。クローディンに言い訳たらたらのディーテルの横で黙って聞くのみが不自然な対応。
クローディンは不良を気どる性格に設定で、タバコをやたらプカプカふかし、肩や足首に刺青だから、まったく好みの範疇外といえる。いや、どこかの国では一部のアイドル・タレントの厚化粧ベタベタ顔をマネしたごとき気持ち悪い女が繁華街を闊歩で、自分の視界の中に存在してほしくないと思わせるが、それと同様に半径３百メートル以内への立ち入り禁止をのぞむタイプだけに、こんな女が失恋しようと、悩もうと知ったこっちゃない。勝手にやってくれー、でいきなり乗る気ゼロのドラマとなる。しかもオープン・カーを運転は、マニラの空気だと鼻の穴や耳の穴がすぐに真っ黒だろうと推測でき、汚そうー、で余計に印象ダウン。
リコをターゲットに決め、空き瓶を回して先っぽが指した先にいる人物へキスのゲームでリコの唇を奪ったり、ビリヤードの賭けで週末デートの約束をとるも、しぐさやふるまいがただのパーだけに、ますますヘドがでそう。リコの車のタイヤを千枚通しでパンクさせ、リコを送るときはワザと信号無視でワルぶったりで、ほとんど死んだほうがいいほど。リコがセックスの挑発を断る純情さながら、本気でクローディンに引かれる流れにおいて、さっさと犯し、無残に捨ててやれ、と声をかけたくなる。
ようはリコとのロマンスでクローディンが女らしく変わるのだが、ディーテルが嫉妬し、ライラニ・ナヴァロ演じるリコの恋人がショックを受ける。ライラニの告げ口で「あんな不良と」とイザベルが猛反対。クローディンに中年のパパがいた過去が発覚のため、リコがクローディンを誕生パーティーへ呼ばず、クローディンが落ちこむ。しかもディーテルとライラニが組んで、傷心のクローディンに復縁を迫ってセックスを強要の現場をヴィデオ盗撮。ディーテルはすぐに後悔をおぼえ、テープの回収を試みるも、ライラニが裏工作で視聴覚授業に流したため、クローディンは絶望から元のイメージにとの展開。ディーテルが酔っ払って卒業試験に出席できそうにないクローディンをなんとか会場へ連れてくると、あとでちゃんと卒業をはたすのだから、勉強のシーンがまったくない点も手伝い、フィリピンのカレッジってそんなに程度が低いの？ とうかがわせる。
ホント、しょーもないを絵に描いたような内容。
まあ、いいところもあって、クローディンとライラニがとっつかみ合いのケンカを繰り広げ、プリンセス・プンサラン演じる学生指導員の委員会へかけられるあたりは、風紀のシステムがわかってやや興味がわくかな。クローディンの母がじゃぱゆきで不在との設定で、ジャクリン・ホセ演じる叔母とクローディンが暮すのだが、ジャクリンがいかにもかつて不良だったふうのオバサンを自然と表現し、ヴェテランのうまさを示す。リト・レガスピとマリタ・ソベル演じる両親、ステラ・カニェテ演じる妹などで構成のディーテルの家族は、中流に近いとはいえ、マリタが倒れて入院など、トラブルと闘いながら生きている雰囲気が微妙に醸しでて、ディーテルの実はいいヤツぶりが際だつ。だからこそ反対に、リコがごう慢型でないのは、あの母親から考えてヘンだぞ、と説得力を欠く。
これでクローディンのセクシーさを引きだせば、文句も減るものの… 全編にずっと一緒にいる感じのジャン・マリニ・アラノ演じる親友とビーチへ行くシーンで、クローディンはボトムにパレオを巻いていてアレレ。ジャンもワンピースにパレオだからそそる要素が皆無になる。二度目のビーチはディーテルが「泳ごう」と誘うにもかかわらず、赤いワンピースのクローディンはずっと座ったままでプロポーションすら隠れっぱなしが残念。酔ったクローディンを介抱のリコがスカートのめくれを直してあげるしぐさでは、パンティーののぞくあやうさを含まず、試験の日の朝にしらふへ戻そうとディーテルがへべれけのクローディンへ水シャワーをかけるとき、シャツが濡れて貼りつきブラがスケるのはさすがにゾクゾクながら、下がパンティーじゃなく、ホット・パンツで落胆を招く。
とにかく盗撮ヴィデオの中で下着の露出すらないのが致命的で、本来ならハダカにむかれるべきところ。同級生たちにオッパイをみられちゃってこそ、精神的な衝撃がガーンと効くはずなのに…
クローディン、イマイチ。
ライラニはそこそこかわいく、ボコボコ対決でクローディンにシャツを引っ張られてブラがちらつくも、完全に破れないのが不満。リコのパーティーへライラニと一緒に現われる友人役のアンジー・デル・カルメンは美人っぽく、もっとみたかったなあ。
ダメな映画だと切り捨てたい。
