ＣＯＮＤＯ
（アパート）
　
08年：ブレーキング・ザ・ボックス・プロダクションズ／カムラヤウ・ピクチャーズ／アロイ・アドラワン・プロダクションズ
監督：マルティン・カブレラ
主演：ココ・マルティン
　　　 アーノルド・レイエス
　　　 ペルラ・バウティスタ
　　　 ダイアナ・マラハイ
　　　 アヴィ・シワ
　　　 チクス・アルカラ
　　　 ヴァイス・ガンダ
　　　 ラヴ・タダニ
　脚本のアロイ・アドラワンが制作を兼ねたディジタル作品。だとストーリー展開におもしろさがあると予想するが、心理スリラーにどんな手腕を発揮したのか。また四日間で撮影の低予算において、マルティン・カブレラの演出力にも興味がわく。
　コンドミニアムを舞台にとり、管理人のマリャ（サラー・パグカリワガン）の斡旋で、ここへガードマンとして就職したベンジー（ココ・マルティン）が主人公。ヘンクツそうな老女のレティー（ペルラ・バウティスタ）、色っぽいモデルのテッサ（アヴィ・シワ）、オカマのマンディー（ヴァイス・ガンダ）と、その暴力的な同性の同居人のエルウィン（ラヴ・タダニ）、車椅子の女性（ロルナ・デ・ラナ）の世話係で無愛想なルーシー（ダイアナ・マラハイ）などが暮らし、全員とのエピソードを描く。また相棒のイグノ（アーノルド・レイエス）と、彼の恋人のエマ（チクス・アルカラ）の話もでてくる。
　まず冒頭にイグノと会話の内容でベンジーの近況を教える手法がうまい。もっとも印象的なのはルーシーとの恋愛っぽいエピソードに思え、主人らしき男（トニー・ラエバ）がベンジーとかわす視線にカンを働かせていたが、主人の子を身ごもってルーシーがクビになる。冷たい性格ブスに混乱や困惑のゆだんだ顔、笑いを浮かべたり泣いたりとルーシー役のダイアナ・マラハイの表情に変化をつける演技に引きつけられる。
　主題はベンジーがひとりだけ地震を感じてあわて、無人のはずの部屋から苦情の電話をうけ、目がかすむ病気を暗示しつつ、ガードマンの服装の不審者を何度もみかけ、追いかけても逃すのくり返し。エマが「幽霊をみたんじゃないの」といい、交代のシフトのガードマンふたり（マーヴィン・サルヴァドル、ラム・トレンティノ）も「まだ幽霊がでるのか」とからかう。マルティン・カブレラの演出は、この不審者の追跡をサスペンスたっぷりに描き、はたして正体は誰かのミステリー・タッチを盛りあげながらも、ついに屋上で対峙してみれば、途中から推測したとおりの結果。ようするに観客へ向けた娯楽ではなく、自らのアイディアに酔った脚本のインテリ性が、皮肉にも先の読める筋書きにおちいったと感じる。
　多様な人物が同じ建物に暮らすコンドミニアムの不思議さとの狙いは、そこそこ伝わったかもしれない。
　アヴィ・シワとチクス・アルカラの配役にセクシーな期待があったが、こちらはやや中途半端な露出どまり。駐車場の車内で寝こんだテッサを部屋まで送ったベンジーにからむシーンで、アヴィは黒いブラに赤いパンティーと脱ぐも、スカートをおろしきっていないため、せっかくのＴバックのパンティーがチョロっと半ケツほどのみ。水浴び中にテッサがハダカでやってくるベンジーの幻想では、立ち愛撫のなまめかしいオッパイの動きで、乳首が死角に入る。容貌的にイマイチなこともあって、本来の大胆さを欠いたアヴィに不満が残る。チクス・アルカラはイグノとガードマンの部屋で座位のセックスにふけり、ベンジーがきたのであわててやめて、イグノに「お尻をみられちゃったじゃないの」と怒っているが、実際はシーツでお尻が隠れたまま。イグノとふざけ合うときのジーンズの短パンはそそるも、パンティーまではのぞかない。
　なお、空き部屋へ入居の目医者と設定の住人役でジャオ・マパがゲスト出演している。