ＣＨＩＮＡＴＯＷＮ　ＳＡ　ＫＵＫＯ　ＮＧ　ＤＲＡＧＯＮ
（チャイナタウン　ドラゴンの爪に）
　
88年：フォー・Ｎ・フィルムズ
監督：ペペ・マルコス
主演：ラモン・‘ボン’・レヴィーリア・ジュニア
　　　 トニー・フェラー
　　　 エディー・ガルシア
　　 　オーロラ・セヴィーリア
　　 　ミア・プラッツ
　　 　レス・コルテス
　　 　クリストファー・パロマ
　　 　ロンメル・ヴァルデス
　　 　バルド・マーロ
　　　 ルーベン・ルスチャ
　　　 キング・グチェレス
　　　 モン・ゴディス
　　　 マンジョー・デル・ムンド
　　　 エドウィン・レイエス
　　　 エルニー・フォルテ
　　　 ニロ・ヌキ
　中国と聞くと犯罪を連想するのは偏見かもしれないが、日本と同様にフィリピンでも、中華系には犯罪のイメージがつきまとうようだ。
　ペペ・マルコスとラモン・“ボン”・レヴィーリア・ジュニアのコンビによるチャイナタウンが舞台のアクションもの。まず竜と獅子の舞が中華ふうをにじませ、獅子舞にまぎれて逃げる犯罪者（レナート・デル・プラド）をダニエル・モレノ巡査長（ボン）がしとめるのが冒頭。ストリート・ファイトのごときギャンブルのガチンコ対決へと続き、負けたレスラー（ボンバー・モラン）が殺される。レスラーの死体には謎の焼き印、といかにもＢ級っぽい出だし。港に陸揚げの荷物にある陶器の人形に麻薬がしこまれ、さらに定番を形づくる。フミルデ・ミーク・ロハスの脚本がパターンを踏んでいる。
　麻薬を捜査のダニエルはクンフーを習い、黒帯者から中華街にヘロインが上陸とのネタをもらう。同僚のタショ（エルニー・フォルテ）が潜入でカレッサの御者となってチャイナタウンをまわり、さらに情報を集める。ダニエルの上司のマリオ・ロブレス少佐（エディー・ガルシア）が賄賂をうけとってシンジケートに通じ、ダニエルの捜査を非難。ロブレスに中華街で骨董品店を営むチュー氏（ルーベン・ルスチャ）がカネをわたすも、偶然にチュー氏の店にダニエルの妹のアナ（ミア・プラッツ）がつとめる。父が亡くなり、母が逃げた孤児のニロ（クリストファー・パロマ）をアナがかわいがるとの図式。
　大ボスのピーター・ワン（トニー・フェラー）の部下になる中ボスのキム（レス・コルテス）がアナをら致し、ワンの右腕で、最強のレスラーでもあるハオ（ロンメル・ヴァルデス）がアナをレイプのうえに殺す。悪徳かと疑わせつつ、実は味方だったラミレス大尉（モン・ゴディス）の協力でダニエルがキムを逮捕も、あっさり釈放にキレて、法律に頼らずにキムをつかまえ、黒幕をはかせると爆殺。アナの恨みをはらすのにこだわるダニエルに恋人のリサ（オーロラ・セヴィーリア）が嫉妬をおぼえるが、自宅を襲撃でリサも手榴弾の犠牲で亡くなり、あとは私怨の復讐劇の展開。ロブレス宅を襲い、タショとワンの倉庫へ攻撃をかける。
　いくつかの風俗的なおもしろさを含み、リサの働くナイト・クラブでごう慢な客がアメリカ人なのがうなずけるなら、ニロの誕生日をアナが祝ってあげるとき、電気のない小屋に暮らすあたりがいかにも。キムが中毒患者たちに麻薬を与えるサウナで、あぶりの吸引がヘロインじゃなく覚せい剤を思わせ、ニロの証言でキムの似顔絵が描かれる過程が興味深い。夜の中華街に違法の麻雀場があり、道路には立ちんぼがうろつき、ダニエルが拳銃を買う相手がムスリムなところが、そうなんだって感じ。
　鉄格子で囲んだストリート・ファイトのレスリングはフィクションすぎるながら、胴元席にワンと並んで企画人（ノノイ・デ・グスマン）が座り、相手のレスラー（クリス・アギラー）に対してハオが優勢でマネージャー（エルニー・デーヴィッド）が不正を指示に、試合のあおり人（アマイ・ヴィサヤ）がハオのジャマするのをワンが怒り、自ら企画人の一味を撃退はトニー・フェラーのクンフーの見せ場を設定だろう。
　途中、本筋とは関係なくダニエルが強盗を退治のシーンがおかれ、射殺された犯人の兄（バルド・マーロ）がダニエルを狙い、車と車のターンやスピンでの対決は、ほどほどのプラス要素。さすがにご都合主義のクライマックスにはオイオイとあきれが起きて、ダニエルが銃弾で傷つき、体力が弱ったはずなのにハオへ反撃を与え、ワンと撃ち合って元気に飛び跳ねるのがバカバカし。編集者出身らしくペペ・マルコスがテンポのよいカット割りでみせるも、しょせんは荒唐無稽の範囲をでない。
　ロブレスに妻（レミー・ノヴァレス）と幼い息子（ニロ・ヌキ）の存在を示して復讐の連鎖のむなしさをにじませるわけでなく、ニロがやられることで感傷性を盛りあげがセコすぎる。
　中華社会の不気味さもおざなりで、しょせんはこの程度におさまる。
　キング・グチェレス、マンジョー・デル・ムンド、エフレン・レイエス、ジョーイ・パディーリアなどが演じるワンの手下に凄みがたらず、ワン役のトニー・フェラーもイマイチな点が印象をさげ、エディー・ガルシアのみ気をはくも、役柄がストレートで残念。ダニエルがロブレスに警察バッジとピストルをおいていくあたり、ひょっとして『ダーティハリー』を意識したのかもしれない。
　女優陣はオーロラ・セヴィーリアにシャワーとセックス・シーンがあるが、露出のきわどさに遠く、ミア・プラッツは太腿ののぞくパジャマ姿に期待を抱かせるながら、レイプでシャツを破られてもバストが隠れ、死体は背中をだすのみ。せめて滝の流れる川をバンカーで遊ぶシチュエーションでオーロラに水着姿がほしかったし、豪邸なことで悪徳をにおわすロブレス宅で、プールサイドに水着の女性がいてもよかったのでは。
　まあ、ダニエルが脚を撃って射殺の強盗がとる人質役のマイリーン・ゴンサレスは、かわいさがちょっと気にかかる。
　なお、ロリー・ベルナルドが美術担当で、バルド・マーロが助監督になる。

※　この作品は『ＣＨＩＮＡＴＯＷＮ／復讐・ドラゴンの爪』の題名でヴィデオ発売されたことがある。