11年：ＡＢＳ−ＣＢＮフィルム・プロダクションズ／ＶＩＶＡフィルムズ／スター・シネマ・プロダクション
監督：メエ・サリーナ・クルース
主演：サラー・ヘロニモ
ジェラルド・アンダーソン
クリストファー・デ・レオン
ジョーイ・マルケス
ドーン・スルエタ
マッテオ・グイディチョーリ
アーリン・ムーラック
ケチャップ・ユーセビオ
ヤヌス・デル・プラド
ディーノ・インペリアル
サム・ピント
大統領の息子が庶民のお姉ちゃんと結ばれる、およそ現実ではありえないロマンスもの。人気歌手のサラー・ヘロニモと二枚目のジェラルド・アンダーソンのコンビによるスター企画で、大衆に夢を売る内容だけに、おとぎ話は当然か。
アメリカ合衆国で学位をとったエリック（ジェラルド・アンダーソン）が帰国し、大統領（クリストファー・デ・レオン）の息子なうえ、ハンサムなのでマスコミが騒ぎ、国民の間で注目のまと。下層社会を支援の市民団体に勤務のロアン（サラー・ヘロニモ）もあこがれるが、大統領夫人のエレナ（ドーン・スルエタ）が設立のその団体のパーティーに母の代理でやってくる。エリックをごう慢な性格だと感じたロアンが率直に批判の言葉をのべ、はじめての逆風にエリックがあきれ、団体の主幹（ロデン・アラネタ）を困惑させる。直後に大統領官邸へ呼びだしがかかり、同僚のガーリー（イアン・“ドゥダイ”ガリンゲスまたはイアン・ラッセル・ヴィクトル）とチャームス（チャリー・ピネダ）が逮捕かと心配も、フィリピンの生活をさげすむエリックのわがままに困っていた大統領から研修の行動を決める役を頼まれる。
あとは予想の範囲におさまる展開で、エリックの自分勝手さをロアンが責め、田舎で農民や子どもたちと親しむロアンをみたエリックが農作業を体験する。また女たらしのくせに、近所のヴィット（マッテオ・グイディチョーリ）がロアンにホレているらしいようすに軽い嫉妬をおぼえる。恋愛に純粋で理想が高いため、まだ恋人のいないロアンは、しだいにエリックがやさしい人物だと思う。ついにエリックが交際を申しこむや、大統領の息子とまさかとロアン本人以上に家族が驚く。
さらにメル・メンドーサ・デル・ロサリオの脚本はパターンを踏み、愛情が芽ばえたふたりに障害を与える。公務でエリックがロアンのバースデー・パーティーに遅れ、しかも公務が知事（リト・レガスピ）の娘のニコル（サム・ピント）が主催の行事で、今度は美人のニコルにロアンが嫉妬をいだく。ニコルとはビジネスの仲とエリックが説明でロアンを大統領の晩餐会に招き、横でエリックがたくみに指導も、テーブル・マナーなどでロアンが失態。若い女性の参加者たちからエリックの人選の間違いを嘲笑の陰口をロアンが耳にする。自分はふさわしくないとロアンが切りだし、失意のエリックがふたたびアメリカ合衆国へいくという。
バカバカしいと感じればそれまでで、実際にバカバカしいうえ、ロアンの暮らす一般の住宅地にエリックが護送で乗りいれるサイレンの音を住民たちが火事と早とちりなど、オチがバレバレのユーモアが下手っぴでメエ・サリーナ・クルースの演出に不安がおきる。ただしマーケットで花屋を営む父（ジョーイ・マルケス）が家で母（アーリン・ムーラック）とのろけ、兄のダン（ヤヌス・デル・プラド）とジョジョ（ケチャップ・ユーセビオ）とパオロ（アルクリス・ガレーラ）がヴィットとはしゃぐロアンの家庭のシーンがなかなかほほえましい。とくにロアンの団体が支援のイサベラ州カウアヤンのサンタ・カタリーナ地区の描写が称賛もののムードをかもす。最初はいやいやにロマンが自家用セスナで空港におりて市長（ブディー・プラド）たちの歓迎をうけ、山の農村でリーダーのマリオ（ヒュブス・アサルコン）や老夫婦のクリス（アマンテ・プリド）とビクビク（イッダ・ヤネサ）に会う。吊り橋のかかる渓谷の光景や苗をまく田んぼが興味をひき、子どもたちとふれあって喜びの感覚をつかむ。二回目の訪問はバスケットボールをしようとサンダルか裸足の子どもたちに靴を買い、フィリピン人のバスケットボールと靴好きがうかがえる。子どもたちがパネルでエリックの気持ちをロアンに伝えて応援、ともう、まさにサンタ・カタリーナのエピソードのみでみた価値があるといえる。
意外と捨てたものじゃない。
ロアンの団体のパーティーが十周年記念で、ファースト・レディーが発起人だけに、大統領の任期が十年はヘンといったつっこみどころが多いが、父のディスコの指摘にエリックがクラブといい直す店で友人のロジー（ディーノ・インペリアル）たちとテキーラの一気飲みは中流以上の低脳な若者の定番だし、花屋の車がエンコの連発で全員が押してエンジンをかけるボロさはウチの車と同様にフィリピンでおなじみ。ロアンがカロオカン在住と知らずにニコルが危険な地域と発言は、自分もしょっちゅう滞在のエリアなので、そういうふうなイメージなんだとわかるなどの細部に肯定の要素を含む。
官邸のスタッフがロアンの宣伝写真を撮影で上半身のハダカのポーズばかりや、田んぼで泥にまみれて上半身ハダカは監督のメイ・サリーナ・クルースが女性なせいか、ジェラルド・アンダーソンのファンへサーヴィスだろう。前半のダメなヤツぶりが単調だが、さわやかなキャラクターに変貌の流れが自然で、割りあいにジェラルドがうまさを示す。
個人的な趣味の女優陣の魅力だと、サラー・ヘロニモはタイプに遠いも、目のあたりを整形後はけっこうかわいくなった印象。歌唱力のすごさは認めるながら、容貌はセクシーさと無縁と感じていたが、最近の『ＡＳＡＰ』に出演のライヴ映像のいくつかにびっくり。シルヴァーのボディー・スーツを着用や下半身にフィットの黒い光沢のパンツをはき、腰から太腿のラインばかりでなく、お尻の形が割れかたまで浮きでている。つい、お世話にあずかった次第で、まさかサラーで発射を経験とは想定外だけに自分でも驚く。ここでは田んぼに落ちてエリックと泥のかけあいでシャツとジーンズがヌルヌル状態に変化も、身体へ貼りつきが足らずに残念。やはり色っぽさがゼロに終わる。某男性雑誌で人気ナンバー・ワンに選ばれたサム・ピントは確かにチャーミングだが、ちょっとそそる誘惑が少ないかな。チャリー・ピネダが厚化粧以外のときのみ、そこそこにきれい。エリックがクラブでキスの過去の遊び相手だったカラを演じるプリンセス・マンソンはパッと見がキュートで、よくながめれば普通の上。カラと一緒にいる女性の役はオリーヴ・クルースだと思う。かつてのトップ女優のアーリン・ムーラックはウルトラ肥満のデブに太り、ドーン・スルエタは相変わらずに美しく、お願いしたい熟女になる。
