ＣＡＲＮＡＰ　ＫＩＮＧ？　（ＴＨＥ　ＲＡＮＤＹ　ＰＡＤＩＬＬＡ　ＳＴＯＲＹ）
　
89年：ダブルＭ・プロダクションズ
監督：デオ・Ｊ・ファハルド・ジュニア
主演：ロビン・パディーリア
　　　 ペルラ・バウティスタ
　　　 マイタ・ソリアノ
　　　 ジョベル・サルヴァドル
　　 　レニ・サントス
　　　 リナ・レイエス
　　　 チャーリー・ダヴァオ
　　　 Ｒ・Ｒ・ヘレラ
　　　 トビー・アレハル
　　　 ビン・ダヴァオ
　　　 レックス・ラピッド
　　　 トム・オリヴァル
　　　 フレッド・モロ
　　　 ジョルダン・カスティーリオ
　ロビン・パディーリア得意の不良少年ものだが、ひどすぎて声がでない。
　ボブ・ソレル演じる暴君のごとき父のもと、兄姉がおとなしく育っている中、Ｒ・Ｒ・ヘレラ演じる末っ子だけが孤独を好む。ロビンが演じるように変わると、学校で暴れまくって警察のやっかいになる。家出でペルラ・バウティスタ演じる母の暮らす田舎へいき、父を避けるも、そこの学校でも暴れまくる。ジョベル・サルヴァドル演じる同級生がパーティーへ誘ってほしいと思っているが、「車がないから」といったのをきっかけに車を盗み、持ち主ともめる。実はビン・ダヴァオなどが演じる窃盗グループの車で、すぐにロビンが加わってリーダーにのしあがる。今度は別の犯罪グループともめるや、大きな組織で、ロビンの悪名を聞いたトビー・アレハル演じるボスが仲間にスカウトする。着実に悪のキャリア・アップをとげるロビンだが、誘拐事件にトビーの手下が幼い子どもまで含む親子を射殺したのでショックをうける。非難の言葉にトビーとの対立が始まり、ついには抗争でロビンがトビーを殺すものの、自らも警察の銃弾を浴びる。
　ようは反抗の青春像で、気がついたときは遅かったパターンながら、ただの暴力野郎なのでまったく共感がおきない。それゆえに感情移入をはばみ、こんなヤツ、さっさと死ね、と思わせるのがダメな点。
　デオ・Ｊ・ファハルド・ジュニアの演出はなれ合いのせいか、冗長で退屈なばかり。
　また女優陣もさっぱり輝かず、ジョベルはけっこうファンなのに存在感が薄い。ビンの恋人で、ジョベルと同じクラス・メイトであり、カネの必要からビンに頼まれてナイト・クラブにつとめ、ロビンが奪って結婚にいたる女性を演じるマイタ・ソリアノは色っぽいタイプだが、やはり魅力を抑えたまま。ビンを殺されたあと、強姦に合う設定がほとんど生きていない。夫の暴力にロビンの復讐を誘う従兄妹役のリナ・レイエスや、ロビンに気に入られるホステス役のレニ・サントスも控え目な印象。野郎どもの全裸シャワー・シーンがあるだけに、せめてマイタのヌードをみたかったところ。
　ロビンを嫌うにもかかわらず、大金をもらうと嬉しそうに数えて娘との交際を認めるエステル・チャヴェス（クレジットではエミリオと男性名になっていて、スタッフのいい加減さ露呈）演じるレニの母のちゃっかりぶりと、ロビンの脳裏に高級車のイメージが浮かんで、いわゆる不良の車好きみたいなのがフィリピンでも共通とわかるあたりは興味深いも、ラストのバカバカしさが致命的。突然、ペルラの誕生日で、パーティーへロビンの到着を待っていると、プレゼントをもったロビンが撃たれ、花が散るワザとらしいセンティメンタルさの強調に、セコーっとあきれそう。
　いや、もう、セイいをとおりこす。
　なおロビンにボコボコにされる田舎の教師役にジョエル・ラマンガンが出演。
　レニがナイト・クラブで歌うのが『いそしぎ』で、なるほど名曲だと再確認する。