ＭＡＲＳ　ＲＡＶＥＬＯ’Ｓ　ＣＡＰＴＡＩＮ　ＢＡＲＢＥＬＬ
　
03年：プレミア・エンターテインメント・プロダクションズ
監督：マック・Ｃ・アレハンドレ
主演：ラモン・“ボン”・レヴィーリア・ジュニア
　　　 レジーン・ヴェラスケス
　　　 オギー・アルカシド
　　　 アルベルト・マルティネス
　　　 ルーファ・メエ・キント
　　　 スヌーキー・セルナ
　　　 ジェフリー・キソン
　　　 アントニオ・アキタニア
　　　 サラー・ヘロニモ
　マルス・ラヴェロの『ＬＡＳＴＩＫＭＡＮ』が大ヒットしたので今度は『ＣＡＰＴＡＩＮ　ＢＡＲＢＥＬＬ』だから、企画の安易さはどこも同じようだ。
　それにしても元の原作コミックからが『ＳＵＰＥＲＭＡＮ』のいただきで、まったく嫌になる。ウェイト・リフティングのバーベルを持ちあげて変身はユニークながら、衣装がどうみてもスーパーマンふう。ラモン・“ボン”・レヴィーリア・ジュニア演じるキャプテン・バルベルがレジーン・ヴェラスケス演じる密かに思い合う恋人と夜の空を散歩のシーンなど、そこまでマネるかとあきれるほど。ジェルディー・フランシスコ・ヘルディーの音楽も、かなりジョン・ウィリアムズを意識においている。
　オリジナリティーの著しい欠如はさておき、一応、楽しめる要素がゼロとはいわない。オギー・アルカシド演じるひ弱なダメ男が、その人のよさを買われてキャプテン・バルベルの地球における変身相手となり、あこがれのレジーンがキャプテン・バルベルに夢中で、しょせん自分がヒーローじゃないんだと悩むシーンが盛りこまれる。キャプテン・バルベル自身もレジーンとデート中だったため、火事の現場へ急行でイサベル・デ・レオン演じる女の子を救出も、ルビー・ルイズ演じる別の母から「もっと早くきてくれれば、私の子も死なずにすんだ」と泣かれ、己を責めるシチュエーションに直面する。みんなにイジメを受けていたジェフリー・キソン演じる浮浪者が、唯一、サラー・ヘロニモ演じるオギーの妹とゴヨン演じる弟から親切にされ、ゴヨンが交通事故に合いそうな瞬間に命がけで助けたのに、誤解から周囲によってボコボコに。それでねずみに噛まれてダガンパットという口から人間を溶かす唾液を吐くねずみ怪人に変わり、これをキャプテン・バルベルが退治するも、サラーともども釈然としない思いが残る。などの皮肉な設定を用意し、決してストレートなカッコよさばかりではない。ここが低レヴェルながら、大人の鑑賞にもたえるポイント。でもメンゲー・コバルビアス演じるサーカスのボスの強欲ぶりに激怒で、口から火をふくワザで殺したアルベルト・マルティネス演じる芸人が、キャプテン・バルベルの宿敵である火炎噴射男のラガブラブに姿を移すと、実はオギーの父だったとのドラマティックさは生かされずじまい。
　レジーンが夢の中でダルナとなってキャプテン・バルベルとワルを退治し、ＰＪ・マロンソ演じるラスティクマンが応援にくるのをはじめ、ラガブラブやダガンパットのほか、ルーファ・メエ・キント演じる氷女ことフリージーや、ベアウィン・メイリー演じるラガブラブの子分のロボなど、マルスのキャラをたっぷりと登場させる欲張りぶりは、明白なファンへのアピールだろう。なんとなく妙チンクリンな悪役陣からコミックの『ＢＡＴＭＡＮ』の影響があるかと推測させる。
　また、ゲスト出演の多彩さが豪華そのもの。ダルナにやっつけられる野郎どもはデニス・パディーリア、ブラクジャク、キング・グチェレス、ボーイ・ロケが演じ、ダルナの口から噴射の強風によって、ブラクジャクは得意の唇がひん曲がるポーズを披露する。ルーファのお尻をさわるなどセクハラのすえ、フリージーとなったルーファから氷漬けにされる男を演じるのがエミリオ・ガルシアで、アントニオ・アキタニア演じる弟と一緒にオギーが掃除夫を請けおうジムのごう慢なオーナーを演じるのがジョン・アパシーブレ、レジーンの母を演じるのがグロリア・ディアスで、グロリアなど、よくチョイ役を承諾したものよと疑問詞がつくほど。ジョンのジムに現われるホット・パンツからキュッとヒップ・ラインをくねらせるカワイコちゃんはダイアナ・スビリじゃないかとときめくも、クレジットがなくてはっきりせず、実際、どうなんだろう？
　セクシーな魅力という点では、今にも乳首がハミでそうなブラの衣装がそそるルーファが最高。ホント、視線を奪ってやまない。レジーンはキャプテン・バルベルとの空中デートの前後で下半身にピタッとフィットのパンツ・ルックからヒップ・ラインを際だたせ、ダルナの衣装でもタイツ姿のお尻がキュートながら、いかにも容貌がイマイチ。人気歌手とはいえ、ブスだなあと再認識する。サラーの学校の担任役であるレジーンの教師仲間を演じるメル・キムラとチューズデー・ヴァルガスがみごとに引きたて役をこなすも、色気とは無縁。キャプテン・バルベルが助ける犠牲者では、レイプに合いそうな女性役のマルー・セネロサ、人質にとられる役のカティー、引ったくりを受ける役のヴァンナ・ガルシアの中で、ヴァンナの清楚な美人ぶりが光る。
　楽屋落ち的な面白さでは、オギーたちの母をスヌーキー・セルナが演じ、老けメイクにアレッと驚かせるが、アルベルトと夫婦だった過去をつくるため。かつて青春ロマンスの名コンビ、スヌーキーとアルベルトをパロディー化する。挿入歌はレジーンが担当し、もっか人気急上昇中のサラーは歌わないながら、露店をだすオギーのところへきてヒット曲を口ずさみ、そういやこの持ち歌を作曲は、シンガー・ソングライターのオギー。学校のキャンパスではレジーンとサラーがデュエットで歌を練習のシーンを入れ、なるほどサーヴィスを忘れない。
　など、プラスとマイナスが半分半分の印象。
　まあ、オギーが最後には自力でカルロ・マセダ演じる恋敵をやっつけ、レジーンの愛を勝ちとるさわやかな話。サラーがミケル・カンポス演じるレジーンの弟といい感じなのにシメがないなど、中途半端さを残すも、まずまずのできか。なんてひいきにしたい面も有するながら、クライマックスのキャプテン・バルベルとラガブラブの空中戦はまったくありきたりの範囲をでず、イマイチとの評価に落ち着く。
　頭から否定するようでマック・Ｃ・アレハンドレには申し訳ないが、マルスの原作自体が猿マネだから、しょーもねーと切り捨てて終わりかも。