（三流ショー・ビジネスの今の女王）
99年：ＦＬＴフィルムズ・インターナショナル
監督：ホセ・Ｎ・カレオン
主演：イナ・レームンド
パイク・モンテヴェロ
レンソ・クルース
レアンドロ・バルデモール
リッキー・ベルモンテ
ジーン・サブリッツ
テレサ・ロイサガ
ロイ・ロドリゴ
カミール・ロハス
アルマ・ソリアノ
１００％イナ・レームンドのための映画である。彼女のセクシーさをいかに爆発させるかが興味の焦点であり、ホセ・Ｎ・カレオン監督はそのことにすべてを捧げている。だから物語に社会的な問題意識が欠如だとか、リアリズムが不足だとか、人間描写が浅いといった批判は的をはずしている。最初から意図にないことを要求しても、まったく無意味。早い話が、イナのボディーをみて勃起したくないなら、頭からこの作品は無視したほうがよいわけだ。
もっともそうなれば、イナがセックスの対象にならない女性ファンには無価値な作品かもしれないと思えてくる。まあ、主人公のハーレクイン的な悲劇を楽しめるのではないかと想像するのだが、女でないからそのへんのところはわからないので、コメントは差し控える。
映画は矢継ぎ早のセクシー攻撃で、とにかく圧倒を受ける展開に。
まずはファースト・ショットがイナのお尻のアップで、クレオパトラのようなカツラをかぶり、赤い照明の下、スモークがたかれたステージで紐Ｔバックの身体をくねらせる動物的なダンスを披露する。客席にはレンソ・クルース演じるアヤシイ男がいて、ステージが高揚したところで発砲音が響き、イナが撃たれる。
幸い命をとりとめたイナは、車イス生活でリハビリしながら、看護婦のシスターにそれまでの半生を語る。
イナには恋人のレンソがいたが、オッパイを丸みえの屋外でのセックスのあと、短気な彼は、ささいないざこざから殺人を犯す。しかも裁判で彼を擁護しなかったため、イナは恨みをかう。
生活のためにディスコ・パブのダンサーになるのだが、映画は赤いＴバック水着のイナの踊りをたっぷりと堪能させる。お尻をつきだしてクネクネのアップでは、もし食いこんだ紐一本がなければ、アヌスがみえるのではと思えるほど。
続いてカミール・ロハスなどが演じる他のダンサーたちが現われ、カメラはカミールのＴバックのお尻もアップにする。舞台裏の着がえのシーンでカミールはオッパイもみせてくれるのだが、セクシー・スターの彼女はイナの友人という役どころでケンカしたり、アドヴァイスをくれたりといった物語へのかかわりにおいて、イナの引き立て役でしかない。
さらにレアンドロ・バルデモール演じるタクシー・ドライヴァーとカミールが階段でセックスの場面をイナがみたりするが、あとでレアンドロがイナの生活に重要にからんでくるだけに、この登場のさせ方が面白い。
イナには幼い子どもがいて、テレサ・ロイサガとロイ・ロドリゴが演じる姉夫婦が育てるも、事故で義理の兄が重体になり、いったんは施設に入れようするが、レアンドロにあずかってもらう。
レアンドロはイナがケーキからでてきて身体にクリームをぬりたくったセクシーなダンスをみせるパーティーの顧客を紹介など、スポンサーの斡旋役にもなってくれる。実はイナのことを愛しているのに、彼女が他の男とセックスへのつらい心情を映画が描こうとしないのは、やはり彼がイナの刺身の妻的存在だからに他ならない。人のよさそうな風貌で、いいキャラクターなのだが…
光る素材のブラに、Ｔバックの上から網の布をまいた衣装でプライヴェート・ダンスの興味深いシーンのあと、それまで顧客とのセックスは愛と別ものと割り切っていたイナが、ダンスを披露の相手に心を奪われる設定になる。パイク・モンテヴェロ演じる相手の彼は相当な金持ちの青年で、やっぱりフィリピン人には金銭的な面が重要なのね、とニヤニヤが起きる。映画の作者たちは、そんな社会学的背景など考慮に入れていないだろうが…
パイクの豪華な別荘に招かれ、イナは海岸での黒いビキニでのキス・シーンのあと、洞窟の中にある池で彼と全裸になって泳ぐ。二人はお尻をみせながら池へ歩いて行き、水の中で身体をクルクルとからみ合わせる。ここは二人の肉体の動きをスロー・モーションでアーティスティックに表現し、ムードたっぷりの音楽をかけ合わせて洗練された映像をつくる。あまりにエロティックさが美へと昇華のため、水面から陰毛だけでなくオマンコまでが浮かびあがりそうにもかかわらず、隠微さが消えている。うっとりを呼ぶシーンである。
すぐにカットがかわるや、エナメル素材による光沢水着のイナのお尻のアップにかわり、突然エッチな興奮が戻ってくる。セックスの対象としてのイナの復帰である。前かがみになってお尻をつきだし、股間から手をのばして割れ目にさわるアップでは、下半身がビンビンに。全裸よりも刺激的な衣装をつけているほうが、かえってセクシーさが倍増するようだ。ホセ監督のステージ・シーンの演出は、みごとにツボを押さえている。画面をながめる観客と同様にリッキー・ベルモンテ演じる中年男が、このダンスでイナに魅了され、あっさりパイクにふられて今度はリッキーがイナのパトロンにかわる。
それにしてもパイクが去ったことに対してとくに心理描写もなく、次々と新しい男が現われる展開には、さすがにあきれるのみ。しかもリッキーがまた金持ちで、本当にフィリピン人はお金が好きなのね…
有力者のリッキーの力でイナは高級店のストリップ・ショーに出演の出世をとげ、アルマ・ソリアノ演じるそこのトップ・ダンサーと対立関係におちいる。二人が一緒に踊るステージはイナが紐Ｔバックで、アルマが黒のセパレーツ。目がイナに行ってしまうのは当然である。アルマが意地悪っぽい表情をつくるが、気性の荒らそうな雰囲気ならイナのほうが上なので、演技的にも負けている。でもソロのダンス・シーンで、アルマはレインコートを脱ぎ捨ててヒップラインのくっきりでる紫のビキニになるセクシーな踊りの途中で倒れ、もろさを感じさせるが、弱さを表現の演技では納得いくところをみせる。セクシー・スターのアルマは、容貌が哀愁向きなのだ。
イナはリッキーと海へ行くシーンで、続いてほんの少しオッパイのまわりに布がついただけの、みごとな三角ビキニで挑発し、映画のセクシー攻撃はとどまるところを知らない。このあたりになるとイナの魅力からくる殴打が連続しすぎて、もはや頭がパーになりそう。テントの中でのセックス・シーンでは、形のよい乳房の上についた乳首がキュートで、ごく薄の肌着に浮かびあがるヒップラインとともに悩殺をくれる。
ジーン・サブリッツ演じるリッキーの愛人がやってきてイナとケンカになり、リッキーがジーンを殴ったことから、イナは暴力性を持つリッキーと別れる決心をする。かなり表面的だが、とにかくドラマを感じさせるシーンである。
そして店の前をうろつくレンソが映しだされ、出所をうかがわせたあと、冒頭のダンス・シーンへ戻る。まず楽屋裏でイナとアルマが和解のエピソードがあって、二人の背後にピア・パウラとアイラ・ルナがいるのに驚く。しかもピアは迫力の乳房に乳首までおがませてくれながら、横が大胆に穴あきとなった黒いタイツの衣装のブラの部分をつけるところ。アイラは黒いセパレーツの下着姿で、まったくアップにならず、ピントも送られないため、二人ともエキストラ同然の扱い。ゲスト出演だろうが、豪華な遊びをやってくれるものだ。イナのステージが始まるや、お尻で下に敷かれた布をはさみあげるしぐさをみせたあと、エロティックに身体をくねらせて冒頭と同じシーンになる。ステージの上からイナのセックス・アピールが輝きまくり、画面の中に飛びこみたい願望を抑えきれない。
突然、銃声が響いてイナが撃たれるクライマックスを迎えるのだが、ここで撃ったのが実はレンソでないことが明らかに… 反対にレンソはイナを守るため、自らが撃たれてしまう。では犯人はというと…
みてのお楽しみだろう。
とくに逆転劇というほどではないが、意外性のあるクライマックスを持ってこようとの意思は、それなりに成功していると思う。
結局、回復後にイナは子どもを育ててくれたレアンドロとの愛に生きることを決意するのだが、やっぱりお金じゃないでしょとのラストには、当然フィリピン人も納得するだろう。でも実際は金銭面の誘惑に勝てるのかなあと思うと、しょせんフィクションだし、あれこれ考えがもたげる… 勝手なこちらの思いこみだが…
それはさておき、映画からはイナの誘惑がこれほどまでに往復ビンタのように繰り広げられるのだから、嬉しい悲鳴であり、完全にギブ・アップ。90分ほどの作品なのに、終わったあとでどっと疲れがくる。快感による疲れだが…
もしお尻の左上に刺青という個人的にマイナスと感じる要素がなければ、イナに心底ひれ伏したいところである。
