ＢＵＲＬＥＳＫ　ＫＩＮＧ
　
99年：セイコ・フィルムズ
監督：メル・チョングロ
主演：ロデル・ヴェラヨ
　　　 エリザベット・オロペッザ
　　　 レーモンド・バガチング
　　　 チェリー・パイ・ピカチェ
　　　 ジーノ・イルストレ
　　　 ニニ・ハシント
　　　 レオナルド・リットン
　フィリピンではストリップのことをバーレスクというか、ブルレスクと呼ぶ。男のブルレクスを題材にとるとなれば、そんなのゲーッでみたくないのだが、ニニ・ハシントが助演だから、ついスケベ心がくすぐられる。
　結果を先に述べれば、まさか賛辞の声を送ろうとは、夢にも思わなかった。メル・チョングロ監督、リッキー・リー脚本だけに、それなりにいいとは予想したものの…
　ロデル・ヴェラヨ演じるオロンガポに暮らすＧ．Ｉ．チャイルドが主人公で、幼年時代にアメリカ人の父が日常的に母を虐待し、自分にも暴力を振るいまくった過去を背負う。ついには父が母を殺し、自分へ刃を向けたときに命からがら逃げてきた、との記憶が絶えず駆けめぐる。それで必ず父を探しだし、殺してやろうとの決意を抱く人物になっている。とにかくアメリカ人が大嫌いとの設定がうなずける。
　レオナルド・リットン演じる親友が殺人沙汰に巻きこまれ、二人でマニラへでてメイン・ストーリーへ。チェリー・パイ・ピカチェ演じるレオナルドの知り合いの家に住み、生活費の必要からレオナルドが男のストリップ・ダンサーになる。最初、ロデルは嫌がったものの、ほかに生きるすべがなく、いつの間にか引きこまれていく。裸でダンスのみならず、ホモ・セックスをライヴ・ショーでみせるなど、リアリズムによるねちっこい性描写がマジで気持ち悪い。だからこそ覚せい剤からコカインへとおぼれていく逃避に説得力を増す。
　ステージでレオナルドがまとっていたスケスケの布をとって全裸になると、手で隠すもチンポが半分みえているし、ロデルがシャワーを浴びながら踊るときも、ほぼチンポが映るから、ほとんど正視できない。女性ファンにはいいかもだが…　ライヴ・ショーでロデルとレオナルドがカラみ、舌をのばしてお尻をペロペロとなめるショットにいたっては、もう吐きそう。楽屋でステージ前にダンサーたちがチンポをもんで大きくするなど、メルの細かい視線が冴えて、丁寧なゆえに辟易をまねく。
　それにしても同性愛にあふれた内容であることか。レーモンド・バガチング演じるホモの友人ができて、ジーノ・イルストレ演じる恋人と仲たがい中も、ロデルがうまく和解させる。チェリー・パイは同居のソフィア・ヴァルデス演じるお手伝いの女性とレズ関係にあるのをはじめ、オカマやゲイが数多く登場し、嫌になるほど。
　また、オロンガポからの追っ手にレオナルドが刺殺で、本質的にやるせない悲劇といえる。
　でも映画は幼い弟や妹を育てるためにクラブ勤めするニニ・ハシント演じる売春婦とロデルの純愛を核におき、あたたかさをプラス。花を持ってロデルがクラブの前で待っていたり、オカマの占い師に将来をみてもらったり、喜びの表現を忘れない。とくにロデルとニニ、レーモンドとジーノ、チェリー・パイとソフィア、レオナルドが即席のガール・フレンドと一緒に和気あいあいと食事のシーンは、アット・ホームな雰囲気がジーンと肌にふれる伝わりかたで、なかなかのもの。まさに食卓を囲むという行為が人間をいかに打ちとけさせるかを教えてくれるよう。
　ニニがロデルのホモ・セックスのステージをみてショックを受けたり、ニニとロデルがセックスしながらも、横で男同士が抱き合い、途中でパートナーをチェンジでホモとストレートのスワッピングを繰り広げるなど、性をビジネスに暮らすものの異常性を際だたせ、希望と厳しさの対比が鮮やか。
　最大の賞賛点はロデルが父の居場所を調べあげ、ピストルを買うと殺しに向かうツメの部分に含まれる。鉄道線路にトロッコを走らせるスラムにある家では、既に末期の病気に侵された父がジュニー・ガンボア演じる同性愛の相手と思われる男性の看病のもとにいる。ロデルがすっかり殺意を失うだけでなく、母の生存を知らされ、今度は怪しい貧民街にあるその場所へ。今や中年の売春婦となったエリザベット・オロペッザ演じる母と再会のくだりは、ロデルを客と思ってサーヴィスを聞くエリザベットのあわれさを自然と醸す演技に「みごと」のひと言。ヴェテランらしいキャリアのうまさがキラキラ光る。
　エリザベット、ニニ、リチャード、ジーノという、母、恋人、親友が見守る中でロデルがブルレスク・キングのコンテストにのぞむクライマックスは、またもチンポをほぼ半だしの男たちのダンスにゲロゲロながら、果たしてキング・オブ・ザ・イヤーに選ばれるかの興奮をドキドキ高め、しっかりサスペンスを築くのが見せ場。ロデルの堂々たるステージからは、たとえホモの性風俗であっても誇りを持って生きる大切さがひしひしとにじみでて、ホント信じられないことだが、納得の共感が盛りあがる。
　そして何よりも驚愕といえる感情への訴えかけを伴うのが、ラストの意外性。エリザベットの提案でロデルと一緒に父の世話を決めると「さあ、家へ帰りましょう」と迎えにいく。一体このやさしさって、どこからくるの？　と心のヒダをソフトに刺激される感じ。
　あの諸悪の根源との断言に異論の起きないイメルダ元大統領夫人の帰国に対して暴力的な仕打ちをいっさいせず、しかも国会議員としての余生を許すフィリピン人というのは、真剣に寛容な人たちだなと痛感させたように、このキャパシティー豊かな人間性は野蛮な欧米人と明らかに異なるもの。東欧の崩壊時に生じた出来事を思えば、本当によくわかる。ネーティヴ・アメリカンの監督クリス・エアーの『スモーク・シグナルズ』が“許し”をテーマにとった事実を考慮すると、あの自己中心国家・アメリカ合衆国でさえネーティヴは寛容なわけで、フィリピン人に限らず、モンゴロイドは内面の大きさに特徴が顕著な人たちなんじゃないか。まあ、マーク・ライデルの『シンデレラ・リバティー　かぎりなき愛』など、アメリカ白人も表面的なやさしさ程度は持ち合わせるようだが…
　なんてことをイメージさせる、じわじわ拍手を贈りたい気分をかきたてる奥行きある結末。
　実に味わい深い作品だ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　もちろん当初の期待どおり、ニニのボディーが十分に魅力を放ってくるのが最高に嬉しいポイント。ロデルとホテルへ入るや、ふざけて二人でストリップを始め、黒い下着に包まれた肉感的なボディーに圧倒される。正常位のセックスにおけるオッパイや、騎乗位をバックからとらえたお尻など、全裸の色気は筆舌に尽くせないパワー。スワッピングのセックスでもオッパイを全開だし、ロデルと相手を変えるとき素っ裸で立ちあがって歩き、完全に視線を奪う。エリザベットを義母として受けいれる家庭でのほのぼのシーンにまでシー・スルーのシャツに乳首がスケスケのファッションだから、もー、モミモミしたい、吸いつきたい。
　ニニ、キスしちゃうよーん。
　あと、ソフィアがチェリー・パイとのベッドで小さめのオッパイ丸だし体勢をとってチェリー・パイにうしろから愛撫され、オット、スゲーッ。オロンガポの売春宿でレオナルドが買う女性が張りのよいオッパイから乳首をアップに迫ってくるのにもウハウハ。日本人が夫というロデルの客の女性もオッパイをミセミセのうえ、四つんばいのバックで女性のお尻とロデルのチンポの密着感が実際に入ってるっぽい。この二人の女優は、テス・ハミアス、ラネット・ジョルダン、ロナ・マヌエル、エッサ・ジョルダンのうちの誰だろうか？
　欲をいえばチェリー・パイは肥満体が気になるながら、顔が一番キュートなかわいさだし、デブ専じゃなくてもヌードをおがみたかったところ。ニニの妹分で、客から暴行を受ける役のアイラ・マリーも濃い容貌のくっきり美人だけに、この前後に撮影の『ＢＡＴＡＮＧ　ＰＲＯ』と同様に乳首の露出がほしかった。