（三流芸能界の王様 のようだね…）
02年：ＦＬＴフィルムズ・インターナショナル
監督：アイプ・ペリノ
主演：アンドルー・Ｅ
ジェネヴァ・クルース
ジャネット・マクブライド
ロング・メジア
ジゼル・サンチェス
ロイ・アルヴァレス
アルヴィン・アンソン
ハリウッド映画のパロディーが大好きなフィリピン映画界にあって、自国の作品も対象なのは当然か。イナ・レームンド主演の大ヒット作『ＢＵＲＬＥＳＫ ＱＵＥＥＮ ＮＧＡＹＯＮ』を下敷きにおくコメディーで、ストーリー的には類似点がさほど多くない。でもシルヴァーのクレオパトラふう網帽子をアンドルー・Ｅがかぶった衣装のポスターからして、イナ・レームンドがまとった同様のセクシーなコスチュームを意識的にまねているのが明らか。パロディーに違いない。
アンドルー・Ｅが演じるのは大スターを夢みるしがない掃除夫のトロイで、得意の役どころといえる。かわいいナンシー（ジャネット・マクブライド）にほれられているのが無理のある設定ながら、トロイのほうは眼中になく、お高いジェシカ（ジェネヴァ・クルース）に熱をあげ、気を引こうとやっきになる。友人のアブラハム（ロング・メジア）とストリップ・ショーの劇場につとめるも、オーナーのサー・ロバート（カロイ・アルデ）が借金をかかえ、ついに閉館の危機をむかえる。そこで新企画のショーを考案で特訓するが、開演前にダンサーたちが酔ってたおれ、苦肉の策でトロイがステージに立つ。ブ男のマヌケなストリップにほとんどの客があきれて帰るも、なぜかドン・ヘンリコ（ロイ・アルヴァレス）にだけはトロイがセクシーな女性（アイリーン・アマドール）に映って魅了され、プライヴェート・ショーを頼んでくる。
ドン・ヘンリコにはダメ息子のマリオ（アルヴィン・アンソン）がいて、金銭トラブルでピストルをだしたりの騒動を起こすながら、最後はドン・ヘンリコが劇場の借金を払ううえ、トロイとナンシーをとりもってハッピー・エンド。
バースデー・パーティーでトロイが大きなケーキの中から現われ、ドン・ヘンリコの旧友たちの前で踊るのが、はっきりと『ＢＵＲＬＥＳＫ ＱＵＥＥＮ ＮＧＡＹＯＮ』をもじったとわかるシーン。トロイがパンツをしぼってＴバックにするのが気持ち悪い。
ホヴェン・Ｍ・タンとアイプ・プリノの脚本は、ナンシーの祖母であるボケ老人（メトリン・デーヴィッド）や、アブラハムの弟（ＪＶ・バクリグ）と妹（カレン・デロス・サントス）、劇場に雇われるアクの強いオカマのチャーミング・チャルラ（メラニー・アンヘレス）といった人物を配してギャグを模索も、半分程度の成功にとどまる。亡くなったトロイの父が夢にでてきて、小人のロミー・“ダグル”・パストラナが演じるのや、同じく亡くなった母を女装のアンドルー・Ｅが二役で演じるのは、達者な芸を披露しようとの狙いだろう。アブラハムが父の骨壷を持ち歩き、しょっちゅう壷に話しかけるギャグは、土葬が主なフィリピンにおける中国系の違いのようでいて、壷を落としそうなときに投げあうラグビーは、もっとうまく描いてほしいところ。『ル・ミリオン』のジャケット・ラグビーや『新版大岡政談』の刀のラグビー、『盤獄の一生』のスイカのラグビー（あとの二作は未見）みたいに意図的に強調しないまでも、自然なスリルがほしかった感じ。アイプ・ペリノの演出がイマイチながら、トロイとアブラハムがワンボックス・カーの屋根に乗って走るアクションをしっかり盛りこんでいる点は買える。西欧人のナンシーがうまくタガログ語を話せず、トロイたちが英語を間違える設定は英語教育の好きなフィリピンらしい部分で、お互いにコミュニケーションをとろうとしている歩み寄りが共感を呼ぶ。
お色気要素はどうかになると、ジュディー・アン・サントスを美人にしたような容貌のジャケット・マクブライドは白人なので好みをはずれ、キュートだけれど、セクシーさとかけ離れる。カレン・デロス・サントスも子どもの枠をでない。ジェネヴァ・クルースは恋人のラフィー（ミコ・パランカ）とデートからミニスカで登場し、光沢素材のタイト・スカートでヒップラインを浮かべたり、プールで紐ビキニになったり、スリット・スカートで太腿をだしたり、海でスカート型のピンクの水着に着がえたりで悩殺をくれるも、背中と太腿に刺青を入れていて、ヘソピーもつけているのでさっぱりシラけて興奮しない。劇場のダンサーたちはジゼル・サンチェス、クリスティナ・カステン、マリネラ・モラン、カミール・ルマノグ、パム・ラクソン（カト・デ・サントス）、マイカ・ソリアノ、パロマ・ロサル、マイキー・ディソンが演じていて、光沢系のホット・パンツに水着のブラなど三度のステージで踊り、ビーチへ遊びにいくシーンで水着の誘惑を送ってくる。とくにジゼルがハイレグ・ビキニで視線を奪い、しゃがんだときのお尻に萌える。ドン・ヘンリコのイメージでトロイが女性に代わるダンサー役のアイリーン・アンヘレスは、そこそこ挑発的に迫る。
ひょうきんなジゼルがもっとも下半身を刺激したようだ。
なお主題歌が『ア・ハード・デイズ・ナイツ』の編曲版になっている。
