ＢＵＬＬＥＴ
　
98/99年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：セザール・モンタノ
主演：セザール・モンタノ
　　　 サンシャイン・クルース
　　　 ジェー・マナロ
　　　 セリア・ロドリゲス
　　　 アーミー・オーストリア
　　　 ロンメル・モンタノ
　　　 ルーファ・メエ・キント
　　　 ダニエラ
　　　 ヘスロ・ジョニショ
　　　 イナ・アレグレ
　アクション・スターのセザール・モンタノが監督を兼任の作品で、ハデなドンパチのある内容に仕上げている。自らを監督のとき俳優というのは、クリント・イーストウッドのいくつかなど、単純にただカッコいいヒーローに設定ではなく、どこか三枚目的な要素を盛りこみたがる傾向が多いものだが、ここでのセザールもその例にあげられる。主人公を知恵遅れにキャラづけで、変化球的な面白さを狙っている。これによってイメージ・シーンの中で精かんな表情をみせることもあり、『まごころを君へ』のクリフ・ロバートスンのように、幼さからりりしさまでを演じ分ける必要性がでてくる。あえてやりがいを求め、自分に枷をかけたのだろう。実際『お若いデス』のジェリー・リュイスと比べるのは酷かもしれないが、気持ちよさそうに子どもっぽさを演じるのは、十分に好感がもてる。
　それにしても銃の腕だけはピカイチで、大人の名手をも負かせるとの人物像は、いかにもアクションをつくるためのご都合主義。心は純真無垢なままで、それを強調するようなシーンもおくのだが、暴力の手段である銃と心の清さとは矛盾するのではないか、と思えてくる。まあ、この点をつつくと映画が成立しないので、バカな指摘は避ける。
　射撃大会で優勝し、ヴィデオ・カメラをもらうと、嬉しくて従兄弟の少年と撮影しまくったとき、偶然に犯罪組織の殺人現場をカメラに収めたことからドラマが本格的に動きだす。
　セザールはサンシャイン・クルースが演じる女性犯罪捜査官と出会い、いつサンシャインが犯罪の証拠を彼が握る事実に気がつくか、がハラハラのポイントをなす。プライヴェートで夫婦のセザールとサンシャインが、ここから息の合ったコンビぶりをみせる。
　偶然からやっと気がつくや、直後に犯罪組織によって自宅の襲撃をうけ、今度は車での逃避行に変わる。途中、いったん捕まった二人が、敵のアジトから身体をロープにくくりつけて飛びおり、アジトが大爆発でふっ飛ぶシーンは『ダイハード』の影響だろう。
　もっとも単純な仕かけは多いのだが、せめてラストぐらいは場所のとりかたで興味を呼ぶとか、意外な罠が仕こまれるとか、もう少しアイディアがほしかったように思う。相変わらずストレートに銃を撃ち合うだけではあきてしまう。警官であるセザールの父親が人質にとられるのもドキドキをつくるための常套手段で、もう少しのところで殺されるあたり、ドラマの盛りあげとしてありきたり。
　とくにＢ級映画の平均点を越えていないのではないか。
　途中、セザールはチンポが勃起するとワーワー騒ぎながら飛び跳ねるコメディー演技をみせるが、自作自演ながら、ようやるよという感じ。サンシャインの添い寝で起きたとき、朝起ちに、彼女の下着姿をみた興奮も加わって騒ぐところは、確かにおかしさを引きだしている。
　サンシャインはフィリピンでもっとも銃の似合う女優の一人だが、女性用サウナで組織の女幹部との機関銃による銃撃戦は、十分に彼女の見せ場をつくる。ただしサンシャインはセクシーな点は認めるが、個人的に好みの外なので、あまり下着姿に脱いでもドキドキを呼ばないのが困ったもの。ファンには垂れ唾だろうが…
　むしろ組織の女性幹部を演じたゲスト出演のルーファ・メエ・キントのほうが、気性の激しそうな雰囲気も手伝い、けっこうときめきを抱かせる。サウナでの対決の瞬間、お互い機関銃の弾丸がなくなり、バス・タイルでくるんだ身体の下に拳銃をパンティーにはさんで隠していて、早撃ちの抜き合いとなる描写がまずまずだった。サンシャインが白いパンティーで、ルーファが黒いパンティー。欲をいえばＴバックだとか、もう少しお尻に食いこんでいるといったサーヴィスがあってもよかったようには思うものの…
　クラブのホステス役でゲスト出演のダニエラは、まったくの顔見せ程度で、活躍の場を欠くのが残念。