ＣＥＬＥＳＴＩＮＡ　ＳＡＮＣＨＥＺ，　ＡＬＹＡＳ　ＢＵＢＢＬＥＳ
ＥＮＦＯＲＣＥＲ　ＡＴＩＶＡＮ　ＧＡＮＧ
（セレスティナ・サンチェス　通称：バブルス　睡眠薬強盗の犯人）
　
88年：ゴールデン・ライオン・フィルムズ
監督：カルロ・Ｊ・カパラス
主演：アーミー・オーストリア
　　　 ミゲル・ロドリゲス
　　　 ジャクリン・ホセ
　　　 ロラ・ロドリゲス
　　　 イサドラ
　　　 ボンバー・モラン
　　　 オデット・カーン
　　　 ジュニー・ガンボア
　　　 トム・オリヴァル
　　　 ジーナ・パレニョ
　　　 ボビー・タラビス
　　　 クエーニー・ドゥカット
　80年代にバブルスの通称でフィリピン中に衝撃を与えた実在の女性ギャングを扱った作品である。いわゆる実録ものだが、主人公を演じたアーミー・オーストリアの存在感で、これがなかなかみせる。
　少女時代から問題児だった主人公の、まずオデット・カーン演じるヒステリックに娘を嫌う母親や、オマンコに悪戯する義父など、家庭環境のひどさが描かれる。虐待からキレて、とっさに包丁をとったアーミーがオデットに殺意を抱くシーンがかなりの緊迫感。女学生姿のアーミーにはさすがにちょっと無理を感じるが、保護監察官に睡眠薬をもられて犯され、シャワーで身体を洗うシーンで、シャツのまま濡れるのだが、小さめの乳房に乳首がスケている。セクシー・スターだったアーミーだけに、控えめの露出なものの、十分に魅力的。
　逃げだして売春を繰り返し、三年後にエルミタに現われてから強盗の人生を歩む。たまたま買われた白人の男から屈辱的な扱いを受けたことが引きがねで、フィリピン人をこバカに差別の白人は今でもよくみかけるから、さもありなん。相手をさげすむ日本のオヤジも同様だが…
　アーミーはレズを自覚し、イサドラ演じるゴー・ゴー・ダンサーと愛をかわすも、たまたま警察につかまったときにイサドラから見捨てられ、さらにゆがんでいく。
　イサドラにアーミーがヘルプの電話を入れるや、イサドラはセックス中で、オッパイ丸だしなのが素晴らしい。ついつい吸いつきたくなっちゃって、チュッ、チュッ、チュッ。
　六ヶ月後に出所し、再びエルミタへ。全盛だったころのマビニの歓楽街風景が興味深い。裏切り者の処刑でついに殺人にも手をそめ、本格的なワルとなる。髪をショート・カットに変え、いわゆるバブルスの誕生である。
　女優としてのアーミーは、確かに美人とはいいかねるが、キリッとりりしい顔立ちなので、このショート・カットがものすごくよく似合う。ボーイッシュなイメージが好みなこともあり、なんて素敵なの、と一気にファンになる。しかも髪を切った直後に、いきなり競泳みたいな水着で登場し、プールの水面からちょこっとヒップをつきだして泳ぐから、ハダカじゃないのに、イキそうなくらいに興奮。あとでバス・タオルを巻いただけのシーンも含み、この短髪の容姿、大好きです。
　男をホテルへ誘っては、睡眠薬強盗などを繰り返すのだが、ディスコで知り合ったレズの白人女性からも盗み、もはやみさかいなし。覚醒剤を注射されるお決まりの転落パターンになるも、警察がまた悪くて、実は組織のトップだったりで、アーミーはどんどん追いこまれていく。当時のタブロイド紙を何枚か挿入の中に「日本人が犠牲者に」と書かれているものがあるから、まあ、そうだったんでしょう。
　物語はロラ・ロドリゲス演じる一緒にワルの道を歩んだ女性がいて、もっとからむかと思ったが、人間関係は新しい展開をみせる。ミゲル・ロドリゲス演じる、アーミーのことを好きになる男が現われ、なかなかアーミーは心を開かないのだが、ラストでともに更正のきっかけになる。また、いったん刑務所へ入ったときにジャクリン・ホセ演じる子持ちの女性と知り合い、出所のあとに強盗のパートナーを組むや、覚醒剤で狂ってジャクリンを殺すところがクライマックス。レズ殺人とのスキャンダラスな報道が広がり、取り調べで組織のことをすべてバラし、仲間の総逮捕へと結びつくわけである。
　このバブルスという人物をアーミーは過剰演技に走ることなく、それでいてカッとなるときはカッとなるし、感情の起伏をヒシヒシと伝えてくるから、十分に納得。カルロ・Ｊ・カパラス監督の指導にもよるのだろうが、いい女優だなあ、と実感。かなり重いし、冷静に考えれば構成的にうまくつながっていない部分を指摘できるし、実録っぽい雰囲気もイマイチな内容ながら、アーミーによって最後まで引っ張られた印象。
　けっこう評価したい。
　なおタフ・ガイの小さな役で、ルディー・フェルナンデスが顔をだす。