（おバカ）
01年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：ジョイス・ベルナル
主演：ルーファ・メエ・キント
ガーリー・エストラダ
アイアイ・デラス・アラス
ジーナ・パレニョ
ロルダン・アキノ
当たり役に出会えるかどうかは役者にとって一つの運かもしれないが、あまりにも強烈だとイメージを固定してしまう。『男はつらいよ』シリーズの渥美清など、それで悩んだような気がするのだが… 軽薄短小な女性を面白おかしく演じたこの作品は、ルーファ・メエ・キントにとって“ブーバ”というのが彼女の愛称というか、代名詞のようにも取って代わったから、間違いなく当たり役だろう。でもシリーズ化されるわけではないようだし、シリアスな役にもうまみを持っているから、芸達者な女優としてますますヴァリエーションたっぷりに活躍するに違いない。すごく幸運なめぐりあわせだったように感じる。
またみごとなヌードの披露をくれるから、個人的にもルーファが大好きである。
映画はいかにもフィリピン人好みのコメディーながら、それにしても「オススメ」という言葉を、これほどまでにまわりの者から受けた作品はない。「ルーファが最高」との賛辞をおくった女性もいて、実際どんなものかなあ、と好奇心の刺激をうけたのだが…
確かに笑える部分はあるものの、まあ、こんなもんでしょ、との印象なのは否めない。感性の違いだろうか、とも感じる。
物語はルーファがアイアイ演じる姉とともに、田舎でジーナ・パレニョ演じる祖母に育てられたという設定から始まる。ブスの姉は、かわいくてチヤホヤされる妹のことを憎んでいる。コメディエンヌのアイアイの、ものすごくアクの強い演技がインパクトを与えるのだが、ルーファとアイアイの個性がぶつかるあたりが見どころをつくる。それにジーナは冒頭部で亡くなるのだが、死んだのちもルーファの背後霊のようにちょくちょく現われてエッチな会話をかわしたり、鮮烈なイメージを残すから、ヘタをすると主役は食われてしまう危険性があるといえる。ところが卓越した存在感のあるこの二人の共演者をかえって自分の引き立て要素のように使っているから、ルーファおそるべし。モンロー・ウォークや、チャーリーズ・エンジェルのような銃のかまえかたなど、なるほどコメディーを意識の動きはまあまあだと評価する。
とはいえ映画は、マニラへ行くことになってフェリーに乗り遅れ、手こぎのボートに頼んで海を移動し、３年後のクレジットが入って到着というギャグなど、ちょっとシラけが先にくる。偶然、ガソリン・スタンドの前で車に乗ったアイアイをみかけてルーファが声をかけると、車が急発進でよけたルーファに盲目の男がぶつかるあたり、笑いどころか同情を起こしてしまう。しかも車はスタンドの店員をひいていて、チラリ路上で痛がっているのがみえるカットがあるものの、その店員がどうなったのかわからず、怒りに近い気持ちすら抱く結果に。
ジョイス・ベルナル監督は編集も担当だが、一体どういう神経をしてるんだ。
ＧＲＯになったり、家政婦になったりとマニラでの生活が甘くないといった部分にリアリズムがないのはコメディーながら、ならもっと奇抜性のあるギャグを入れてほしいなあと思っていると、家政婦になろうとした先の子どもが誘拐され、やっとハチャメチャ感がでてくる。ガーリー・エストラダ演じるルーファに好意を抱く刑事に協力で犯人逮捕に成功で、特別に捜査官の任命をうける。プロになるための特訓シーンは『羊たちの沈黙』のパロディーだろう。それで今は犯罪シンジケートの大物におさまっているアイアイと対決という図式に発展する。
まあ、途中にかなりのたるみはあるものの、反誘拐コンヴェンションというよくわからない集会に潜入のシーンになって、いよいよ全編中もっともくだらないおかしさを持つ部分がやってくる。まずはルーファがブラのトップにピコピコ光るマイクを仕込み、事前の警察の対策会議でこの新兵器を紹介のあたりからクスクスもの。自らのブラだけなく、男のパンツのもっこりの先にもマイクがあって、ルーファが「もしもし」といった感じでチンポをパチンとやるあたりは、低俗ギャグのきわみをなす。実際に会議が始まるや、コンパニオンにバケた婦警たちだけでなく、一人オカマがブラをつけた胸まで入れて、クロース・アップのつなぎを繰り広げる。ピコピコとトップを光らせながら、ブラをのオッパイ、オッパイ、オッパイ、オッパイと迫ってきて、このオッパイ会話のバカバカしさはかつての『電撃フリント』の二作にも通じるナンセンスぶり。いささかアナクロながらも、やってくれるではないか。やっとジョイス監督がうまさをアピールかな、とすんなり納得。
会場には中国人にバケたルーファが羽衣のような格好でマイクの前に立ち、妙チクリンな中国語もどきで挨拶するのだが、確かにルーファは中国顔だから似合っている。そこへアイアイが現われてて正体をバラすと、ルーファとアイアイがクンフーで決闘… といってもアクションができないから型だけで、かけ声ばかり威勢がよいからユーモスなのだが、さすがここは香港映画の同種のものに負けている。
でもルーファが表彰になって、その式のときにアイアイが発砲し、ルーファをかばったガーリーが弾丸を受けてしまう。病院で治療のかいもなく、心電図の波がうたなくなり、医者が電気ショックを与えてもダメで「ご臨終です」のあとに、ルーファがフェラチオでよみがえらせるあたりは、また十分に笑える要素にみちる。ペロペロペロに応じて心電図の直線が縦波に… との予想がつく展開ながらも、あきれるくらいにおかしい。それにガーリーの遺骸の横でルーファが突然に歌いだす構成は、『エビータ』だったか、ちょっと思いだせないのだが、有名な映画のパロディーのはず。
なるほど全体的にはもう一歩だといわざるをえないのだが、オススメを受けただけの内容はあったなあ、と判断していいかもしれない。いや待てよ、どうかなあ… と迷ってしまうのだが、これでフィリピン人との感性の違いをこえれば、もっと笑えたことだけは確実だろう。
一方の映画の見どころというか、個人的にはこちらのほうに重きを置くルーファのセクシーな魅力については、ほとんど文句なし。絶えず胸元が大きくあいた服でオッパイの谷間が迫ってくるばかりでなく、パンティーがのぞきそうなミニスカで、ちょくちょくチラチラもさせるから、もったいぶった色気がある。ＧＲＯとなってステージで踊るシーンは、恥ずかしがって脱ごうとせず、マネジャーに無理やりビキニの下着にされて、コメディーと同居の挑発ぶりも十分になっている。ロルダン・アキノ演じる警察のえらい人に会うときの、胸のふくらみあたりにバッサリと切れめが入った、乳首がこぼれでる寸前のシャツも悩殺もの。
プールのシーンでは、もちろん陰毛がはみでそうなくらいのハイレグ・ビキニ。
大胆な描写となると、ちゃんとみごとなまでに脱いでくれて、下宿先で水浴びのシーンで男たちが鍵穴からのぞくや、丸く囲まれた画面の奥には全裸のルーファがいる。キュートなお尻のアップのあと、カメラは横チチをとらえるものの、前を向いたときは両手で乳房を隠す。きちんとオッパイを全部みせてよと地団太踏んでいると、ガーリーとのベッド・シーンでは乳首までバッチリ。みごとなサーヴィス精神に感謝感激。しかも深夜にスケスケのネグリジェにパンティー一枚で歩くシーンも鼻息が荒くなるが、酔ったあとに全裸で歩いて冷蔵庫まで水を飲みにいくカットでは、陰毛までチラチラ。
ダメ押しに表彰式のシーンで突然に脱ぎ、胸は乳首のあたりに星型のワッペンを貼っただけのノーブラで、パンティー一枚。いやはや、満足も１２０％を越えさせる。
ルーファはえらい！
どういうわけかブスのアイアイもレザー・パンツやボンデージ風のファッションで色気をだすが、白いパンツ・ルックでルーファと水のかけあいのシーンでは、濡れてお尻がスケてみえるから、やめてくれー、という感じ。
ガーリーがルーファにほれる前の恋人を演じるアヴァ・アヴィラは、ベッド・シーンがあるものの、期待したような露出はみられない。
なお、オープニングのタイトルでスタッフ・キャストにひと言ずつコメントがつけられ、これがまたユーモア・センスの一つをつくり、アシスタント・プロデューサーのサンディー・サンタマリアに「ブーバⅡ」と書かれているのは、一体どんな人物なんだろうと想像で笑いを誘った。
