ＢＯＢＢＹ　ＢＡＲＢＥＲＳ　　ＰＡＲＡＫ
（ボビー・バルバース　足跡）
　
97年：ＶＩＶＡフィルムズ／ＰＳプロダクション
監督：アウグスト・サルヴァドル
主演：フィリップ・サルヴァドル
　　　 ジョン・レガラ
　　　 ヘルベルト・バウティスタ
　　　 チャーリン・ゴンサレス
　　　 アマンダ・ページ
　　　 ルーファ・メエ・キント
　　　 ウィリー・レヴィリアーメ
　　　 リカルド・セペダ
　　　 ロルダン・アキノ
　　　 ザンドロ・ザモラ
　　　 アルフレッド・リム
　ボビー・バルバースという主人公が実在の人物かどうか定かでないが、おそらく実在であって、実録ものの範ちゅうに入るだろう。
　フィリップ・サルヴァドル演じるボビーはスリガオに住み、床屋との名前をバカにされてケンカになり、相手のグループを虎刈りに処すのが冒頭。エディー・アレナスとマリタ・ソベル演じる両親が乱暴に手を焼き、マニラに住むロメオ・リヴェラ演じる叔父に預ける。ロメオが「警官になれ」と強要し、嫌がっていたフィリップだが、次のシーンではロルダン・アキノがボスを演じるシンジケート相手に、機関銃を奪ってヘリコプターを爆破の活躍をみせる。簡単に警察の職を得ているのがコネ社会なら、敵の弾をよけて走るご都合主義のアクションに唖然。ほとんどマジメにつくっているのか疑わしいほど。
　以後、フミルデ・“ミーク”・ロハスの脚本は、フィリップの足跡をダンゴ状態に並べていく。
　マリテス・サムソン演じる女リーダーの強盗団と偶然に遭遇し、ベルナルド・ファビオサ演じる相棒を撃たれる。地方からでてきたコンラッド・ポーとジョーイ・パディーリア演じる悪徳刑事を処分する。新しくウィリー・レヴィリアーメ演じる部下とコンビを組み、エルニー・サラテ演じる上司から評価が高いながら、ザンドロ・ザモラ演じる別の上司とそりが合わない。
　これに三名の女性がフィリップにカラむ。まずはルーファー・メエ・キント演じる娼婦で、黒人ともめているところを助け、交際に発展だが、ジェフリー・サントスなどが演じるギャングにまわされたうえ、無残に殺される。フィリップが復讐もあって、ジェフリー一味を退治する。二人目はアマンダ・ページ演じるバーで知り合った女性で、早々にフィリップがアマンダの手を握っているのがセクハラっぽい。アマンダが二重人格との設定は、なんじゃそら、と本気でシラケまくり。多忙のフィリップに会えないのを不満に警察署へきて、別人格に変わると銃を奪い、暴れたのをザンドロに射殺される。三人目はチャーリン・ゴンサレス演じるお嬢さまタイプで、ロメオから紹介をうけ、恋愛の過程なく、いきなり結婚。
　まったく人間をちゃんと描かないにも、ほどがある。
　ヘルベルト・バウティスタ演じる友人ができて、小柄なヘルベルトに長身のソフィア・アロンソ演じる妻がいるのがサブ・ストーリー。リカルド・セペダ演じるバイク警官がソフィアに目をつけ、まんまと寝とる。とっさに殺意を覚えたヘルベルトは、二人の幼い子どものことを考えてグッと我慢。リカルドが検問の車に麻薬をしのばせ、でっちあげでカネを巻きあげているとわかり、フィリップがやっつける。しばらくして、後悔からヘルベルトのもとへソフィアが帰ってくる。
　警察将軍のアルフレッド・リム（本人がゲスト出演＝このときはもうマニラ市長だったはず）に直接、麻薬組織摘発の命をさずかったフィリップが、ジョシー・タグレ演じるバーのマネージャーを脅して娼婦たちをとおし、販売ルートを開く外国人グループを壊滅へ追いこむあたりからクライマックス。背後にいたザンドロや、ザンドロのはからいで逮捕を逃れていたロルダンをたくみに始末し、マスコミの賞賛を浴びる。そしてジョン・レガラ演じる一番のワルとの対決を迎える。
　サンパギータ売りの少女を暴行惨殺など、ジョンの変態ぶりの暗示があったが、それはただの残忍さの表現にすぎなかったよう。ジョシーを転落死で葬ったあと、ジョンが空港で麻薬密輸の摘発に協力したヘルベルトを襲い、ソフィアや、子どもたちもろとも一家皆殺しに合わせる。チャイナタウンの広場でジョンの乗る車とフィリップの乗る車が激突。
　まあ、コンラッドの投げた手榴弾を帽子でうけとめ、投げ返すスロー・モーションや、ジョンの落とした手榴弾が車をふっ飛ばすなど、アウグスト・サルヴァドルは見せ場に工夫を加えようと頑張っているし、空港の滑走路で離陸中の飛行機の横でカー・チェイスを繰り広げるハデさが確かにあるながら、たいしてサスペンスを生まないのはドラマがバラバラだからだろう。なにをおいても全体の構成がひどすぎる。
　オデット・カーン演じる酔ったおばさんがウィリーとハメをはずしたり、ビキニ・ダンサーが踊るザンドロの隠れ家のバーでウィリーがフーテンに化ける潜入捜査のコメディー要素も冴えず、ダラダラ進むばかり。
　スリガオでフィリップが親友のごとく話しかけていたサント・ニーニョの人形はあとにつながらないうえ、ロメオがフィリップに“パラク”と刻印の銃（有名メーカーなの？＝銃の知識が皆無なもので）を贈り、シンボルみたいに匂わすのに、それをつかうシチュエーションがないといった、小道具の活用もドヘタ。
　まったく盛りあがらないアクション映画。
　でも個人的に興味の焦点は、チャーリン、アマンダ、ルーファの共演に尽きる。
　チャーリンは三シーンほどにただいるだけで、顔見世程度なのが残念なものの、ルーファはレイプのときにボディコンをはぎとられ、黒いビキニの下着があらわになる。とくにアマンダは絶賛にあたいし、フィリップに服を脱がされると、パンティー一枚のうしろ姿がそそる。鏡の前で精神分裂を起こすときのスリップや、お尻のあたりだけ刷りガラスになった浴室のシャワーで興奮を呼んだうえ、警察署で騒ぐシーンで服をはだけとると、ハイレグ・ビキニの下着露出がたまらない。パンティーはお尻を半分ほどしかおおっていないので、左右のお肉がハミでていて、思わずもんでみたいじゃないか。
　アマンダのお尻が最大のチャーム・ポイントだったようだ。
　なおルーファがフィリップと出会うとき、フィリップが「エルミタは危険だ」と注意しているが、バックにチラりとパピヨンの看板が映っていて、マカティーのＰ．ブルゴスでロケしているとわかる。実在のボビーが娼婦とつき合った当時はエルミタのマビニが売春のメッカで、映画制作時はそれがＰ．ブルゴスに移ったということかもしれない。