ＢＬＯＯＤ　ＤＥＢＴＳ
　
84年：シルヴァー・スター・フィルムズ
監督：テディー・ページ（テディー・チウ／テディー・ゴメス）
主演：リチャード・ハリスン
　　　 マイク・モンティー
　　　 ジェームズ・ゲーンズ
　　　 アン・ミルヘンチ
　　　 アン・ジャクスン
　アメリカ映画のごとき体裁ながら、フィリピンと香港の制作になるＢ級アクション。監督のテディー・ページはテディー・チウやテディー・ゴメスの名前でフィリピン映画を何本か監督している。英語圏で仕事の際にはテッド・ヘミングウェー、テッド・ジョンスン、アーヴィン・ジョンスンの変名も使うようだ。
　娘のサラ（キャスリン・マイルズ）を婚約者と一緒に遊び半分で惨殺されたマーク（リチャード・ハリスン）が、頼りにならない警察に代わって犯人たちを殺していく話は、よくある私刑ものにはじまり、途中から焦点を転じる。レイプ犯、ひったくり、強盗と復讐の相手ではない悪も次々と退治し、謎の人物っぽいビル（マイク・モンティー）とピーター（ジェームズ・ゲーンズ）がマークの周辺を探る。復讐が完了で妻（アン・ジャクスン）に「もう殺人はしない」といったとき、妻が拉致され、社会を健全にしたいとウソぶく謎の人物から、妻を無事に返すかわりに社会の憎むべき犯罪者たちの暗殺を命じられる。しかもパートナーとして、組織の女殺し屋だったリザ（アン・ミルヘンチ）を与えられる。マークとリザが恐喝屋などを始末も、実はビルとピーターは犯罪組織の幹部で、対立組織をつぶしにかかっていて、その残党を処分させている。情報屋（ウィリー・ウィリアムズ）に調べを頼んでマークが利用された実態をつかみ、組織もマークの必要性がなくなったとき、リザの殺害におよぶ。しかも妻も爆殺で、マークがビルたちの本拠へ乗りこむ。
　警察がマークの殺人を歓迎し、署長（ゲーリー・モリス）だけが違法だと否定的な図式は、私刑を題材にとる作品にしばしばでてくる設定。ヴェトナム後遺症の要素をからめるのは、七十年代後半から目立ったアメリカ映画の延長といえる。まあ、たった一人で何十人をもやっつけていく襲撃戦がご都合主義のありきたりさに収まり、しょせんは水準に達しない内容と思わせて終わり。
　警察のオフィスに星条旗が置かれるのでアメリカ合衆国が舞台ながら、マニラ・ホテルやルネタが映っていてフィリピン・ロケとわかる。ほとんどが白人と黒人のキャストの中、リザをつかまえる変質者の殺人鬼役でフィリピンの個性派脇役のディック・イズラエルが出演。
　また、フィリピン女優が顔をださないのは相当に不満だが、アン・ジャクスンがシースルーぎみのスリップ姿でそそり、オッパイ丸だしのセックス・シーンを披露のほか、アン・ミルヘンチもプールで赤いビキニの水着をおがませてくれる。

※　この作品は『地獄の処刑人』の題名でヴィデオ発売されたことがある。