ＢＬＯＯＤ　ＣＨＡＳＥ
　
89年：シルヴァー・スター・フィルム・コーポレーション
監督：テッド・ジョンスン（テディー・ページ／テディー・チウ／テディー・ゴメス）
主演：アンドルー・スティーヴンズ
　　 　カレン・シェパード
　テディー・チウがテッド・ジョンスンの名義で監督の作品で、ＩＭＤｂによればフィリピンとアメリカ合衆国の合作になる。日本ではアメリカ映画としてヴィデオ発売されている。ロケはアメリカ合衆国が舞台の部分を含め、全編がフィリピンながら、フィリピンの脇役陣の出演がみられず、個人的には不満といえる。
　まず冒頭に軍の現金輸送を襲撃のシーンがおかれ、ケソンあたりのメトロ・マニラ郊外で撮影とわかる。カネをロス（エリック・ハーン）が独り占めし、残りのニコルス（デーヴィッド・ライト）、スティウェル（イーアン・センズン）、ディエゴ（ジェリー・ベーヤー）、ホッパー（ジム・モス）が逮捕される。時間が飛んで、どこかのガレージでジョン（アンドルー・スティーヴンズ）がぬいぐるみにヤクを隠すニック・ニコルスンなどが演じるグループを退治し、特別捜査官かと思わせるも、実は仕事のない私立探偵のようす。恋人のシェリル（カレン・シェパード）がパトロール・カーの女性巡査になり、捕り物劇をくり広げる。相棒に口説かれるが、ジョンと愛情で結ばれる。死んだ父が強盗だった事実を話すや、犯罪者の娘が警官とは日本だと無理だけに、どこか安易なフィクションに思える。
　シェリルのもとへ脅迫状が届き、銀行口座に大金の振りこみがあって本筋に入る。看守のひとりを買収でニコルスたちが脱獄し、ロスが横どりのカネのありかを知ると疑り、娘のシェリルを襲ってくる。脱獄の刑務所がまた、フィリピンでの撮影をうかがわせる。ジョンが大金の振りこみ元を調べ、南米のコンタプラパからと判明。この架空の国へ入り、アメリカ合衆国を装う必要がなくなって、フィリピンの風景がそのままでてくる。ジョンとシェリルの乗る車がマカティを走ると、中国人のハン（トニー・チャン）のオフィスがあるビルを訪ねる。ニコルスたちがハンを殺し、アメリカ人のビジネスマンの存在をつかみ、整形手術で顔をかえたロス（マイク・モンティー）とみやぶる。
　フィリピンと明確な公園でジョンとシェリルがトレーニング中に強盗未遂で格闘のほか、ニコルスたちがシェリルをつかまえようと自宅を急襲にくわえ、シェリルの相棒が傷つく倉庫の銃撃戦や、ジョンが侵入の事務所で警備員をのすなど、適度に小規模なアクションの連続で進み、椅子に縛られたシェリルが背中に椅子をしょったまま相手と乱闘はおもしろいが、コンタプラパいきをジョンとシェリルが話すのを窓の先でディエゴが盗み聞きとのシチュエーションがセコく、ジェリー・グリフィスとテッド・ジョンスンことテディー・チウの脚本が低レヴェル。
　後半もニコルスたちがシェリルのら致を試み、ふたたびシェリルを襲ってホッパーが亡くなる。ジョンとシェリルが新聞に尋ね人の広告を載せたのをニコルスたちが逆利用でジョンとシェリルとロスの双方をおびきだし、マニラの古い列車置き場で銃撃戦とアクションを優先も、殺人やドンパチが街中で展開に対して警察がこないのはなぜとあきれていたら、ジョンとシェリルが事情を警察に相談で、バカな設定にもほどがある。しかも警察の捜査がまったく進展せず、ちょっと発展途上国をなめてないか。
　ロスが金庫に仕こんだ爆弾でスティウェルが爆死のあと、ロスも撃たれて死亡。ジョンとシェリルをディエゴが尾行で、ちょこんと庭の植木から頭をだしたり、引っこめたりの子どもだましみたいな行動が、いはやは学芸会と呼びたいほどにお笑いを誘う。バックに風光明媚なタガイタイが広がる。ついにジョンとシェリルが廃墟の工場でカネをみつけ、事業で成功のロスが犯罪を後悔し、シェリルに返還を頼む手紙が一緒と美談もほどほどに、ニコルスが迫るクライマックスを迎えるながら、加勢を雇ったニコルスの大人数の一味をジョンとシェリルがたった二名で撃退がご都合主義の見本。カネもろともにニコルスを吹っ飛ばすも、警察がカネを狙っていたとか、ひねりのきいたアイディアがほしかった。
　わざわざアンドルー・スティーヴンズを主演に起用なのに、ここまでつまらないＢ級作をつくれるのか、とテディー・チウに落胆。
　困った駄作。
　カレン・シェパードは気性の荒らそうな容貌が適役だが、いささか好みのタイプをはずれるかな。でもクン・フーの訓練から公園の強盗騒ぎに続く一連のシーンでレオタード素材のタイツをはき、下半身のラインがくっきりと浮かぶのに興奮が起きる。ジョンとベッドではシーツをボディーに巻く。
　あとシェリルの誕生日パーティーを祝うメンバーのうち、女性ふたりのどちらかがジョー・アン・グリフィン（ジョアンヌ・グリフィン）で、たぶん初老のほうだろう。ジョンの捜査の途中にでてくる花屋の店員役のエリサ・ウィリアムズ、ホテルの従業員役のキャサリン・グレアム、女優名が不明になる公園でシェリルをはめる強盗グループの女性メンバー役、ニコルスたちに殺されるハンの秘書役のいずれもが白人なため、フィリピン女優を欠いてさみしい感じ。クレジットに読める女性警官役のジャネット・プライスは、どこなのか確認できず。ホテルのプールで数名の水着の女性がみえるも、遠景のみで残念におわる。

※　この作品は『地獄の爆走　ブラッド・チェイス』の題名でヴィデオ発売されたことがある。