“ＢＩＹＡＫ　ＮＡ　ＭＡＮＹＩＫＡ”
（壊れた人形）
　
　年：アグリックス・フィルムズ
監督：エマヌエル・Ｈ・ボルラサ
主演：フィリップ・サルヴァドル
　　 　ジャネット・ボードン
　　　 グロリア・ロメロ
　　 　アリシア・アロンソ
　　 　ブレンダ・デル・リオ
　　 　ルビー・アンナ
　　 　チョナ・カスティーリオ
　　 　マニー・ルナ
　　 　メアリー・ウォルター
　　 　ロメオ・リヴェラ
　　 　ラモン・レクト
　セクシーなスティル写真のタイトル・バックから期待が盛りあがる。
　ジャネット・ボードン主演による愛憎劇で、エマヌエル・Ｈ・ボルラサが通俗的な題材を手堅く語る。
　女子大生のシャーリー（ジャネット）は同級生のブレンダ（ブレンダ・デル・リオ）やチョナ（チョナ・カスティーリオ）、男の子の同級生のマニー（マニー・ルナ）などとコンサートへでかけたりで遊ぶが、姉のメリンダ（グロリア・ロメロ）が厳しく、絶えずしかりまくる。反抗的なシャーリーはレストランで知り合った男と売春し、マニーとも「おカネ持ってる？」で体を許す。コンサートのロック・バンドのリーダーであるベンジー（フィリップ・サルヴァドル）に誘われてセックス。ブレンダとチョナもバンドのメンバーとつき合う。トイレでマリファナを吸っているのを教師にみつかり、校長の「警察に連絡する」に「イヤだ」と逃げだして、ブレンダとチョナはつかまるも、逃げきってベンジーのバンドに加わる。クラブでの演奏をプロモーターのヴァルデス（ロメオ・リヴェラ）がながめ、ベンジーがシャーリーにヴァルデスと「寝てくれ」と頼む。イヤイヤにベッドをともにしたあと、シャーリーが妊娠。ベンジーがコンサートで新しく別の女性をみつけ、そのマルリン（ルビー・アンナ）にお相手をチェンジ。怒りのシャーリーがでていく。一方でメリンダがガンで入院し、余命いくばくもいないと告げられる。シャーリーはプロの売春婦になったブレンダを訪ねるも、まだブレンダがベンジーの仲間と関係をもっているのでなじめず、マニーの中国様式の豪邸へくれば、中国系の女性とマニーが結婚していたので去る。マルリンはベンジーのバンドの若手にちょっかいをだす。いよいよ身重のシャーリーは教会で名づけ親のソニア（アリシア・アロンソ）に会い、実はメリンダが姉ではなく母で、死の床にあるのを知らされる。病院へ駆けつけるとメリンダが亡くなり、直後に出産。メリンダの埋葬のときにベンジーが現われ、父親らしく赤ん坊を抱きあげる。
　七十年代のディスコ・サウンド調のロック・コンサートやディスコのダンス・ホールのようすに当時の若者の風俗がうかがえ、アメリカ合衆国の模倣っぽいのがフィリピンらしい。大学のホセ・リサールの講義でブレンダが意見を述べ、オカマが反論するのにフィリピンのリサール観を皮肉る。メリンダがソニアにあれこれ相談の図式がフィリピンの後見人制度を示す。ブレンダの売春宿にいる娼婦たちがノラ、ヴィルマ、アルマ、ロルナと名乗っていて、ノラ・オーノール、ヴィルマ・サントス、アルマ・モレノ、ロルナ・トレンティノからとったに違いなく、この時代のスターが誰かわかる。といった興味深さを含むながら、トト・ベラノの脚本が凡ようにすぎず、人間を描くにいたっていない。メリンダがシャーリーの写真をながめて泣いたりで、親子なのがミエミエに展開する。この底の浅い中での表面的なドラマティックさがエマヌエル・Ｈ・ボルラザの個性に思え、わかりやすさを好むフィリピン人の傾向を踏まえているといえる。メリンダが小学校の教師をつとめ、病院へ生徒たちが見舞いにくるのは、かつての日本映画と同じだなあと苦笑い。マルリンが弟分と寝たのにベンジーが気がつき、そういうことみたいに許したのに、ヘタな言い訳を聞いたのでケンカに変わるあたりは心理が理解できる。
　それで女優の魅力はどうかだが、まずふざけて室内でストリップもどきにシャーリーとブレンダとチョナが踊り、メリンダがとめるダンスでジャネット・ボードンがブラまで露出。行きずりの男と泡風呂に入ったあと、ベッドでジャネットはボディーにシーツを巻く。マニーとのホテルではブラをはずす背中のうしろ姿がお尻の割れ目ギリギリで、セックスは角度のためによくみえない。タバコを吸っているのをメリンダが発見は下着姿で視線を奪い、とっくみ合いになってパンティーがジャネットのお尻に食いこむ。ベンジーとの初セックスもブラまでにとどまる。一連のベンジーとデートの描写にビーチがでてきて、ジャネットのビキニのほか、チョナ・カスティーリオのビキニやブレンダ・デル・リオのワンピースがボディーに貼りついてそそる。もうふたりいるビキニも気になるところ。さらにジャネットはヴァルデスとベッドでブラや、妊娠の発覚のときにスリップなどの下着をみせる。ルビー・アンナはベンジーにステージへ引きあげられるときのヘソだしパンツ・ルックが色っぽく、ベンジーと結ばれる室内で下着に脱ぐ。バンドのコーラスに加わってのステージに立つ黒いピタピタのパンツ・ルックがよだれを誘う。再びビーチのシーンがくると、ほかのふたりのビキニとともにブレンダの黄色ビキニがプロポーションを浮きあがらせ、ルビーは大胆な紐ビキニ。ベンジーの弟分とのセックスではボディーにシーツを巻く。いずれもヌードを欠く中途半端さながら、そこそこ納得にも感じる。
　なお現存プリントには冒頭と、エンド・クレジットの大半が欠落している。