ＢＩＹＡＨＥＮＧ　ＬＡＮＧＩＴ
（空の旅）
　
00年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：ティコイ・アギルス
主演：ジョイス・ヒメネス
　　　 マーク・アントニー・フェルナンデス
　　　 ニダ・ブランカ
　　　 ベンボル・ロコ
　　　 ジョン・アルシーリア
　　　 チョロ・エスカーニョ
　　　 スーザン・アフリカ
　　　 マンスエド・“オニョグ”・ヴェラスコ
　フィリピン人は大体においてギャンブル好きだが、だからこそ国が発展しない、というのは極論だろうか。日本でもギャンブルにはまっているヤツはバカだと思うので、そんなヤツが死のうが生きようが関係ない。自己破産なんて、絶対に認めちゃいけない。
　というわけで、ギャンブルで破滅の人間に同情が起きるわけないから、映画の主人公におかれても困ってしまう。
　マニラ名物といえる（？）勝手に線路の上にトロッコを乗せて客を運ぶ沿線の街の光景に始まり、このあたりは一度訪れたことがあるが、さすがに治安の悪さを実感したもので、映画は風俗的な興味をかきたてる。そのあと変わるカジノの描写や、ビリヤード場の様子、インチキを隠す闘鶏の場面など、不良っぽい雰囲気の表出にうならせる効果がある。ティコイ・アギルス監督は個人的にかっているが、さすがにゾクゾクを呼ぶうまさ。ジョイス・ヒメネス演じる主人公が、自分の車を提供で『アメリカン・グラフィティ』にあったようなカー・レースを高架下で展開のシーンも同様で、さわやかさを押しつけるあの映画とは異なり、どうしょうもないワルの空気を感じとることができる。
　線路で子どもが列車に引かれる悲劇も、けっこうインパクトがある。
　もっとも評価できるのはここまでといえ、ストーリー的にはまったく共感できる要素がない。ジョイスはアメリカに恋人がいて、アメリカへ帰ることを夢みている女学生の設定。ニダ・ブランカ演じる祖母とスーザン・アフリカ演じる叔母と一緒に住んでいる。ニダは自分の娘であるスーザンの誕生日も忘れるくらいカジノにはまり、ジョイスもその影響で夢中になっている。当然、借金がかさみ、持っているカネ目のものを売ってしのぐも、また注ぎこんでいく。
　こんな女は破滅がお似合いなわけで、好きにすれば。
　と思っていると、マーク・アントニー・フェルナンデス演じるカジノの集金人と出会う。彼もギャンブラーで、組織のカネに手をつけてベンボル・ロコ演じるボスに追われるハメになるも、死ねばいいじゃないの。
　もはやダラダラつまらない映画だなあ、という印象でしかなく、途中でイヤになる。マークが強盗を実行にいたっては、ただの人間のクズにすぎず、どうしてこんな人物を主人公に設定だろうか、とあきれるばかり。結局、殺されてせいせいしたという感じだが、銃撃戦がスローモーションになったり、音楽をかぶせたりで、演出の気どりにもうんざり。熱気球をあげるシーンといい、花火をつけたレチョンをかかえて爆竹がなる中を走る描写といい、カッコつけるのもいい加減にしてほしい。別に気どりが悪いわけじゃなく、アホな題材で気どることがバカバカしいわけで、ティコイ監督は演出力を無駄に消費しているとしか思えない。
　それと最後にジョイスがダイスで大金をつかむのだから、人間ドラマとしても甘すぎる。ああ、実にくだらない作品だ、とガックリ。
　あとはジョイスのヌードにしか期待はないが、そこはさすがにジョイス。マークと豪華なホテルへ行くシーンで、まずあの豊満な乳房があらわになり、相変わらずのド迫力。黒いパンティー一枚で風呂に入り、中で脱ぐと、バブル・バスのお湯につかりながらのセックスをみせる。マークの部屋では、ＬＲＴが走るたびに揺れるというティコイ監督のみごとな貧民街の描出の中、昼間からのセックスに、黒い紐パンティー一枚のジョイスの肢体をマークがなめる。そのあとシャワーを浴びるところは全裸の乳房に水がしたたっていき、肌が輝いている。
　予想通り十分に堪能をくれるのに納得だが、欲をいえばマークがジョイスの下半身へ手を入れながらキスのシーンはもう少し露出が足りないように感じるし、よこしまな欲望を抱くベンボルにジョイスが連れ去られたあと、まったく脱がされるカットがないのが残念。
　１００％満足とはいかなかったようだ。
　それとジョイスの友人を演じたシャーメイン・サンチャゴがそこそこかわいいだけに、ヌードがみたかった。
　なお、マークのカネを使いこむシャブ中の友人のガール・フレンド役として、ニコル・ノーブルの芸名だったジネット・ホアキンが出演している。