ＢＩＴＵＩＮＧ　ＷＡＬＡＮＧ　ＮＩＮＧＮＩＮＧ
（輝きのないスター）
　
85年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：エマヌエル・Ｈ・ボルラサ
主演：シャーロン・コネータ
　　　 クリストファー・デ・レオン
　　　 ジェー・イラガン
　　　 チェリー・ヒル
　　　 トミー・アブエル
　　　 ジョエル・トーレ
　　　 ロルリ・ヴィリアヌエヴァ
　　　 チャンダ・ロメロ
　　　 リト・パストラナ
　スター誕生といった物語で、歌手志望のファンがあこがれの人気シンガーを追い抜くあたり、どことなく『イヴの総て』を連想する。とはいってもシャーロン・コネータ演じる主人公に野心がなく、偶然がデビューのきっかけとなっているのが、底の浅い内容。ネリッサ・Ｇ・カブラルのフィリピノ・コミクスによるストーリーをオルランド・Ｒ・ナドレスが脚色だから、少女まんがレヴェルなのはしょうがないか。
　チェリー・ヒルが人気絶頂の歌手を演じ、シャーロンが大の崇拝者。ロルリ・ヴィリアヌエヴァ演じる叔母のもとでサンパギータ売りのシャーロンは、あるテレヴィ番組の中継で、観客席から飛びだしてチェリーにサンパギータのれいをかけ、キスをする。チェリーの載る雑誌グラビアをみながら歩いたとき、交通事故にあって入院。クリストファー・デ・レオン演じるチェリーの恋人で、重役ビジネス・マンがシャーロンをチェリーの「ナンバー・ワン・ファンとして宣伝につかおう」という。一方のチェリーはクリストファーが「悪魔だ」と思わず口走るくらいごう慢な性格。クリストファーの計画を「必要ない」と否定も、クリストファーはシャーロンに会い、たまたま町内会で歌ったときにアウグスト・ヴィクタ演じるマネージャーにスカウトをうけたシャーロンが、クラブのステージに立つのをみて才能を直感。ジェー・イラガンがトップを演じる友人のレコード会社からデビューを決める。当然、チェリーはおもしろくない、との展開。
　ジョエル・トーレが作曲家でリーダーを演じるバンドとシャーロンは活動をともにすることになり、ジョエルはシャーロンを気に入る。みるみる人気をえたシャーロンはクリストファーに恋心を抱くようになり、チェリーがわざとクリストファーとシャーロンのゴシップを芸能マスコミに流してイメージ・ダウンをはかる。クリストファーはジョエルとシャーロンを一緒にしようと動くも、チェリーからおつき合いの復活を迫られてシャーロンを愛していると気がつき、ジョエルにも「彼女が求めているのは私じゃなく、あなただ」といわれ、ついにシャーロンへ愛を告白。との流れのあと、シャーロンとチェリーによるジョイント・コンサートのクライマックスを迎える。
　ホント、エマニエル・Ｈ・ボルラサにしてはとは失礼ながら、けっこう退屈しない印象。シャーロンがサンパギータを売りながら、自動車に引かれそうなシーンが前にあり、ちゃんと伏線を張っているのに、つまらない点だが感心する。チェリーの自宅の玄関先でしょっちゅう待ちかまえてサンパギータをわたし、チェリーがシャーロンの視線があるうちだけ愛想笑いをみせ、みえなくなると豹変する有名人の本音と建て前も、確かにそうだと納得の描きかた。とくにデビュー発表会にチェリーが現われ、シャーロンがチェリーに捧げる『Ｉ　ＪＵＳＴ　ＣＡＬＬ　ＴＯ　ＳＡＹ　Ｉ　ＬＯＶＥ　ＹＯＵ』を歌うと、チェリーが水をひっかける。ショックで奥へさがり、泣いているのをクリストファーにさとされる。涙をふいて再び表に現われ「私は私です」と自立の発言のあとに持ち歌を披露のエピソードは、精神的な成長がよく伝わってくる。シャーロンの歌声にチェリーとの思い出が重なる構成もうまい。
　レストランですれ違ったとき、チェリーが口ケンカを売り、今度はシャーロンが水をひっかける。そんなスレた自分にシャーロンが芸能界は合っていないと感じ、ジョイント・コンサートでクリストファーとの結婚と、これまで育ててくれた人たちへの感謝のあと、引退を発表。客席にいたロルリの投げたサンパギータをうけとり、チェリーにかけてキスをするラストがけっこう盛りあがる。ステージで歌うチェリーからカメラが引き、シャーロンが舞台のそででクリストファーと口づけをかわすショットによって、一人は愛の生活を、一人は歌手のキャリアをとりましたよ、との人生選択も強調される。
　しょうもない通俗さながら、いいんじゃないか。
　社会的な興味も含み、サンパギータを摘む冒頭や、編んでれいつくる作業が、こうやってるのかと思わせ、チェリーがいったんアメリカへ行くのがフィリピン人の志向。シャーロンがかつぎこまれた病院へかけつけたロルリが大声で騒ぎ、医者と目が合って自分で「シーッ」と静まるなど、もろフィリピン人といえる。クリストファーとチェリーたちが食事の日本料理店（クレジットに“はかたレストラン”とある）でチェリーが「テリヤキ」と注文しているのがおかしい。
　ショー・ビズに関する部分はもっと好奇心をそそり、二年契約にサインのシャーロンが大きな家を住居に提供されるのが、新人の一般的な図式。英語の発音の特訓をうけて早口言葉をこなすシャーロンから、本人の下地がよくわかる。女優への進出を考えたチェリーが「ヴィク・シラヤン、ロベルト・アレヴァロ、シナイダ・アマドル、ローリス・ギリエン、歌手は俳優でもあるわ」といっていたり、チャンダ・ロメロ演じる芸能誌の編集者がジョイント・コンサートを提案の際に「ピリータ・コラレスとカルメン・パテナも合同のショーをやっているわよ」と指摘に、そうなんだとの知識がつく。
　トニー・アブエル演じるチェリーが所属するレコード会社の重役の秘書を演じるヴィッキー・スバや、シャーロンの同級生を演じるジェマリン・リンガッド、ローズ・デ・グスマン、ジェニー・コルプスがちょっとかわいいといった、どうでもいい部分もプラスし、とるに足らないシャーロンのアイドル映画だといえばそれまでなものの、けっこう楽しめる感じ。『イヴの総て』なんて映画史に輝く作品と比べるからいけないのであって、とりあえずは次第点かもしれない。
　もっとも個人的に歓喜なのは、チェリーの水着姿にとどめを刺す。プール・サイドで寝そべってマッサージをうけるとき、黒いビキニがキュート。仰向けからうつ伏せに体を入れかえる動きでヒップラインが浮きあがり、正面からのショットでオッパイが小さいから、あまり谷間をつくらない胸元がのぞき、ドキドキ・ウハウハのキャーッ。ああもう、この小ぶりな乳房が大好きなんだよなあ。わりと最初のほうにあるこのシーンで満足だったのに、後半に二回目が用意され、今度は青いワンピース。プールで泳いでプール・サイドへザバッとあがり、濡れてピタピタにボディーへ貼りついた状態からヒップの形がバッチリになって、ほとんどイキそうなまでに追いこんでくれる。バストは三角ブラだから大きさが実感でわかり、思わずもんでみたい。
　いやはや、愛して、愛して、愛してやまないチェリーの悩殺水着。何度でも、何度でも、何度でもおがみたい。
　というわけで、自分としては『イヴの総て』よりも高評価だった次第。
　あしからず。