ＢＩＮＹＡＧ
（洗礼）
　
08年：グリーンライト・エンターテインメント
監督：ミコ・Ｓ・ハシント
主演：ラン・ドミンゴ
　　　 イネス・ヴェネラション
　　　 パオロ・リヴェロ
　　　 シモン・イバラ
　　　 ケンジー・ガルシア
　　　 ルー・ヴェロソ
　パンガシナンの田舎の海岸町で暮らす男が映画スターを夢みてマニラへでるが、現実の厳しさに目的をはたせず、心が傷ついて故郷へ帰る。ただそれだけの話ながら、ホモを基調にしくのがフィリピンっぽい。
　トライシクル・ドライヴァーのレオ（ラン・ドミンゴ）は貧しいけれど、生活に困るわけでなく、自然の豊かな環境に住んで、ここが天国と感じている。幼なじみのミラグリン（イネス・ヴェネラション）から愛情を注がれるも、少年時代に近所のマンド（シモン・イバラ）がホモで、自分と同じくらいの年齢の少年にフェラチオをさせる現場を目撃。そのせいなのか、ときどき小ガネでホモ売春の相手をつとめている。たまたま芸能界にくわしいと自称のレスター（パオロ・リヴェロ）がマニラからきたとき、海で泳ぐレオをみかける。ホモ売春でレスターと同性愛セックスのあと、レスターがレオを誘い、二人が手をつないで村をでていく。
　パンガシナンの紺碧の海やヤシの木の道を美しくとらえたカメラは、一転、渋滞でゴミゴミし、空気のよどんだマニラの風景を映す。芸能界へ売りこみといっても、エージェントがみんなホモで、同性愛セックスのうえに「監督へ紹介するね」と、同じようなパターンのくり返し。宣伝用の写真とヌードを撮られてばかりに、さっぱり仕事が決まらない。一方で貧民街に部屋を借りて、若い男（ケンジー・ガルシア）がいるのが気になり、ホモを自覚のうえ、その若い男をホテルに誘って同性愛セックス。また体調をこわしたとき、隣人の中年のホモ（ルー・ヴェロソ）が介抱してくれる。ついに吹っきれてあきらめをつけ、ミラグリンの待つ郷里へ向かう。
　都会が非人間的で、田舎には現代人の忘れたやさしさが残るとの単細胞さは、日本映画にも共通のおめでたい感覚ながら、レオの希望につけいった芸能関係のものたちが好き勝手な意見をいうあたりがミコ・ハシント監督の狙うテーマの核に思える。田舎で日常をおくるミラグリンが魚を買って、それを包んでいたタブロイド紙にレオのセミ・ヌード写真が載るのをみつけ、丸めて捨てるも、再び発見のタブロイド紙の写真にさみしさがこみあげ、いったん捨てたのを拾うのに秘めたる気持ちがわかる。隣人の中年男の家にトライシクルがあり、懐かしくてレオがさわるようすに郷愁の念をあらわす。ミラグリンが老女の占い師（メリー・ソリアノ）にレオがでていくこと、帰ってくることなどをトランプのお告げで聞くのが興味をそそる。バンカーでさかのぼるパンガシナンのマングローブの海が雰囲気をかもす。などのプラス要素を含むも、しょせんはディジタルの小品。
　とにかく男のハダカがやたら全編にいっぱいで、とても趣味に合わない。いきなりレオが全裸で泳ぐ海のシーンがきて、ラン・ドミンゴがチンポをモロだし。少年時代の追憶で幼いレオ（マーヴィン・カネテス）もお尻みせる全裸でたわむれる。少女時代のミラグリン（アロンドラ・カタバイ）も泳ぎ、岩場でレオと踊るのに脱がないのは、昔だと全裸だっただろうに、世の流れで児童ポルノにうるさくなったあかし。大人のミラグリンがながめる横でレオが泳ぐ海でも、ランのチンポがプラプラと揺れる。レスターが目にする海は小さな海パンのレオの股間がもっこりまでだが、ホモ売春のフェラチオで半ケツのあと、レスターと同性愛セックスでパンツをおろされる。映画関係者とおぼしき連中との愛撫では、パンツ一丁でシャワーのレオにところにオカマが入り、チンポが立ったのがくっきりのパンツをアップや、オカマが石鹸でレオの体を洗うねちこさ。二人目はハゲのオヤジふうが相手で、いっそうにグロテスク。宣伝用の写真撮影で小さなパンツ一丁から、チンポのまわりにナスやニワトリをおいたり、チューブやレイを巻く全裸が、はたして女性ファンやホモ・ファンにはときめくのかと知りたくなる。さらにレオと若い男と同性愛セックスでランとケンジー・ガルシアの二人がパンツ一丁や、田舎へ帰ったぞと海で泳ぐシーンは冒頭近くと同じショットの使用があるも、レオの全裸でランのチンポが丸だし。マンド役のシモン・イバラもフェラチオでお尻をさらす。
　本来は大好きなイネス・ヴェネラションの出演に引かれたのだが、さすがに最近のイネスは脱がなくなり、ボロいビニール・シートで囲っただけの正面からは隠すものがない掘っ立て小屋で水浴びに、白いワンピース型のシャツが濡れてバストに貼りつくながら、乳首がスケず、ポッチの浮かびすらみえないまま。海の浅瀬で泳ぐときは黒いシャツを着ているため、やはりオッパイの露出のあぶない誘惑を欠き、正直なところ、相当に不満。ラストで子どものころのようにレオと岩場で踊り、かつてのイネスならここで素っ裸を披露が確実だったはず、と全盛期の絶品のヌードが脳裏によみがえる。
　でも以前にも増して美人で、イネス賛歌が盛りあがる。