ＢＩＮＩＢＩＮＩＮＧ　Ｋ
（Ｋ嬢）
　
06年：レアリティー・エンターテインメント
監督：ホヴェンタン（ホヴェン・ムナル・タン）
主演：ケアンナ・リーヴス
　　　 トロイ・モンテロ
　　　 ジミー・サントス
　　　 デニス・パディーリア
　　　 ジョン・ラプス
　　　 キャンディー・パンギリナン
　　　 マリッサ・デルガド
　　　 ジョジョ・アレハル
　ウルトラ巨乳というか、爆乳というか、バストで人気のオッパイ女優のケアンナ・リーヴスがコメディー路線を打ちだして評判を得たので、その傾向の映画の企画となった。あまりにでかすぎる胸はタイプじゃないし、さほど顔も好みをはずれるため、ファンじゃないながら、ホヴェン・Ｍ・タンのディジタルへの演出アプローチに興味がわく、またアビゲール・アキノの脚本がエリック・マッティのストーリーにもとづくあたりも、さてどんなものか。
　少女のケアンナ（カルメラ・ラヴァニーリア）がスーパー・ヒーロー、モデル、プリンセスの夢を語る冒頭で、まずダルナもどきのスーパー・ヒーローのかっこうにケアンナ・リーヴスが巨乳の谷間をみせる。プリンセスになれますようにでダイアナ元妃のポスターや本とともに、ディズニーの白雪姫のグッズの数々がでてくるのは、著作権をおそれないフィリピンらしい。ケアンナ・リーヴスが演じるまでに大きく成長すると、近所の女性っぽかった少年のロンメルも、ジョン・ラプスが演じるアクの強いオカマになっている。王子さまが現れるわけがなく、現実を受け入れてケアンナは、ロンメルと大手食品メーカーの掃除係に職を求める。一方で、その食品メーカーには出世を狙う社員のジャイペー（ジョジョ・アレハル）がつとめ、重役のクリサント氏（ポチョロ・モンテス）やオーナーに自分の能力をアピールのため、わざと無能な社員を入社させようと、採用書類にケアンナの履歴書を貼る。会議でユニークな態度をとったケアンナに青年オーナーのウィル（トロイ・モンテロ）が好意を感じ、大きな屋敷へ招待すれば、食事の誘いでケアンナが自分の暮らす貧民街へウィルを案内し、近所のおじさんのルフエ（ジミー・サントス）が揚げるフィッシュ・ボールを食べさせ、特製だというハロハロを飲ませる。さすがにプレゼンで無能を暴露も、新商品の提案で特製のハロハロをだす。ジャイペーがそのアイディアの横どりをたくらみ…
　との話は、どこかマイク・ニコルズの『ワーキング・ガール』を思いだす。ハロハロのレシピを聞かれてジャイペーがつまり、ケアンナが母から伝来の作りかたを述べて拍手を浴びるあたり、実際にエリック・マッティが下敷きにおいたかもしれない。
　まずはフィリピンの生活風習や文化風俗がおもしろく、ケアンナとロンメルがゲーム・ショーで衆目を集めようとすれば、ケアンナの母のヴァンジー（マリッサ・デルガド）が仲間のリリー（ジョシー・ガルヴェス）やホベット（フローラ・ガセル）とビンゴ屋を営んでいる。同じ仲間のアイダ（メリー・ソリアノ）がミルクを飲むのは、ハロハロのレシピに通じる伏線になる。ウィルの運転手のペドリン（クリス・ダルス）がベンツで貧民街へくると、リリーたちおばさんが大騒ぎする。ウィルの招きでみんながエンチャンテッド・キングダムで遊ぶ。レチョンが丸一頭ごとでるや、ケアンナとヴァンジーが手でむしって食べる、などの嗜好や娯楽の傾向にくわえ、新商品のプレゼンでジョジョがケアンナはハイ・スクールも卒業していないと暴き、ミスコンのときのハプニング写真を映しだす。フィリピンの学歴主義がわかり、ケアンナが自分の経歴を正直に告白のクライマックスが見せ場をつくるながら、現実は軽蔑が先のはずで、そこは現代のファンタジーゆえん。
　ホヴェン・Ｍ・タンは食品会社の牛のマークをショットつなぎに挿入や、画面転換にバラけた建物や家具やインテリアが前後左右から集まってくるなどのＣＧアニメーションによる小細工を使うが、ほどよい収まりで効果をあげる。ジョジョの部下のテス（キャンディー・パンギリナン）が画面に向かってハロハロを試食の感想をいうポーズの構図をはじめ、けっこう映像センスが冴える。ロンメルが男だと思って声をかけた人物が、ふりかえれば女でびっくりのギャグのほか、掃除係担当の上役（カロイ・アルデ）の指示でうるさく便所掃除が、いかにもオカマっぽい。ケアンナの空想にあきれていたルフエ、ヴァンジー、リリー、ホベット、アイダに、顔に凹凸のあるヴァンジーの友人のアルドリン（デニス・パディーリア）が協力でハロハロを仕こめば、ペドリンが情報を送り、掃除係のおばさんのエスミー（デブラリス）とロンメルがジャイペーとテスを妨害でケアンナにハロハロを会議で提案を後押しが、そこそこ愉快にみせる。ケアンナとウィルの結婚のようでいて、ヴァンジーとルフエの結婚式でしめるまで、あきない展開で楽しめる。
　まじめに評価する対象かどうかはともかく、Ｂ級の小品なりのよさがうかがえたんじゃないか。
　ロンメルとでるカーニヴァルのごときショーや、ダイアナのポスターにキスを送るショットなどでケアンナの谷間を強調は、ケアンナの巨乳の魅力を前面にとの狙い。化粧台に座るうしろ姿や、ウィルが迎えにくる田園の田舎で小屋のベンチに座るかっこうで、ローライズ・ジーンズをはくケアンナは割れ目のみえそうなお尻でも迫る。ウィルの回想では一緒に海でたわむれ、ビキニの胸元が揺れまくるほか、黒いパンティーがお尻に貼りつく。大きな屋敷でヴァンジーとプールや風呂に入るのはイマイチだが、スリップのまま水を浴びるとき、なんとケアンナばかりか、肥満の熟女のマリッサ・デルガドまでが濡れてボディーへピタピタにする。ウィルの風呂のシーンがあるのは、アメリカ白人ふうの二枚目だから、女性ファンへのサーヴィスだろう。
　いずれにしても個人的にケアンナには、残念ながら性欲を感じない。
　なお、盛況となったビンゴの司会役でヘルマン・モレノが顔をだしている。