ＢＩＮＧＢＯＮＧ　　ＴＨＥ　ＶＩＮＣＥＮＴ　ＣＲＩＳＯＬＯＧＯ　ＳＴＯＲＹ
　
(91)年：ＦＬＴフィルム・インターナショナル
監督：ロミー・Ｖ・スサラ
主演：ルディー・フェルナンデス
　　　 チャリト・ソリス
　　　 エディー・ロドリゲス
　　　 クリスティン・ガルシア
　　　 レス・コルテス
　　　 ボンバー・モラン
　　　 フィリップ・ガンボア
　　　 ザンドロ・ザモラ
　　　 キング・グチェレス
　　　 ロベルト・タラビス
　ビンボンの通称で知られるヴィンセント・クリソロゴの伝記映画。宗教集会の席上でルディー・フェルナンデス演じるビンボンが自らの半生を語り始めるのが冒頭で、また相変わらずフィリピンらしいキリストの愛によって…　ものかよ、といきなりあきれる。
　南イロコス州の国会議員の息子であるビンボンは、父の権威をかさにワガママ放題。それもダンス・パーティーでキング・グチェレス演じる男から情婦を強引に奪ったり、バーで歌うララ・マリッサ・デ・レオン（クレジットではマリッサ・ララ・デ・レオンと表記されている）演じる女性に目をつけ、クリス・ダルス演じるマネージャーの「ホステスじゃない」の説明に納得せず、ララに逃げられたとわかると店で銃を乱射したり、違法ビジネスを行って証拠隠滅で殺人におよんだり、ほとんど悪魔のような存在。村の焼き討ちで多くの貧民を被災に追いこむにいたっては、さっさと死刑にしたほうがじゃいいんじゃないかと怒りがわきあがる。法律の手を借りずとも、事故を装って殺すことはできないものか。
　とても、更生にあたいするヤツとは思えない。
　美人コンテストで審査員をつとめ、優勝させたクリスティン・ガルシア演じる女性との結婚や、父の暗殺のあとチャリト・ソリス演じる母が知事選に、自分が市長選に立候補し、ボブ・ソレル演じる前市長を殺害との流れで、エドウィン・レイエス演じるクリスティンのボーイ・フレンドが「ビンボンが恋人にした」とレス・コルテス演じるビンボンの腹心からいわれ、あっさり笑って退くから、そのパワーを示す。
　いよいよ裁判で有罪になったにもかかわらず、刑務所内にＴＶを持ちこんだり、家族と外で平然と面会で、いい加減どうしょうもないぞとヘドがでそう。レネ・ホーキンス演じる看守がビンボンを殴り、やっと拍手もののシチュエーションへ。脅しが通じないとわかるや、母にコネで何とかしてくれと泣きつくのだから、人間のクズとはこのこと。
　ムカムカ腹の立つ主人公に、だんだん嫌気がさす。
　ボンバー・モラン演じる一緒に収監された部下が信仰にめざめ、誘われてイヤイヤながらミサに出席したものの、マジで神に罪を問いかけるようになるのが救いの部分。いやはや安易も安易で、実録かもしれないが、最低の映画とのイメージがわきあがる。
　家族とクリスマス・パーティーを開くなど、とても服役中とは思えないし、脱獄の夢をみる陳腐な挿入もあって、マジでしょーもない。ついには母の働きかけでエルニー・サラテ演じる大臣が動き、恩赦になるのだから、アマすぎもいいところ。ビンボンが神に感謝し、キリスト像へズーム・アップのショットがでてくるも、あんたが政治家にコネを持っていたから釈放になったんでしょ、と指摘したくなる。有力者へのアプローチ方法と無縁の一般囚人がいくら宗教に目覚め、罪を悔い改めたとしても、神が牢屋からだしてくださるかっちゅうの。
　ホント、マヌケな作品だ。
　結局、コネ社会フィリピンのダメぶりを露呈しただけ。1980年にあった実話ゆえに、フィリピンでは極悪の犯罪者もカネ次第で自由の身とわかって、笑いが起きるほど。
　まあ、内容がくだらなくても、女優陣の魅力がカヴァーしてくれれば満足、と期待したのだが…
　クリスティンがベッドで抱かれるとき、上半身ハダカをうしろから撮り、背中のセクシーさにゾクゾク。でも結局オッパイがみえずに終わり残念。
　ビーチで行きずりのセックスをする女役としてクリスティナ・ゴンサレスが出演し、全裸もいとわぬセクシー・スターだからやってくれと願うも、脱いだパンティーなめ構図の騎乗位でシャツとスカートを着たままだから、肝心の中身が隠れてるじゃないか。
　お色気も不発で見どころなしのチャンチャン。
　あー、疲れた。
　なお1972年に逮捕されるまでの時代色を表わす目的だろうが、ビートルズの『イエスタデー』『アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼアー』『ヘイ・ジュード』のほか、ララの歌で『煙が目にしみる』、クリスティンとのセックスのＢＧＭに『オンリー・ユー』などが使用されている。