ＢＩＬＯＧ
（広場）
　
05年：シネハン・インディー・ムーヴィー／アクティング・ワークショップ／グルーポン・シネハン
監督：クリサルド・パブロ
主演：アーチー・デ・カルマ
　　　 アラ・ミナ
　　　 セノ・アレハンドロ
　　　 ジャン・マリニ
　　　 ジェラルド・ピサラス
　　　 クリストファー・カニサレス
　　　 レーヴェン・ブラド
　　　 アポロ・ジョーンズ
　　　 アリンナ
　　　 クレイグ・アルカンタラ
　　　 ファニー・ファン
　　　 ルドルフ・セグンド
　　　 ヒル・アゲダン
　クリサルド・パブロのディジタル・シネマで、いかにもインテリっぽいつくりといえる。冒頭、アーチー・デ・カルマ演じる主人公のオカマの動きをひとりだけ周囲と反対方法にしたり、逆まわしで階段をあがる小細工の手法が、どことなく不自然に感じる。あとで再使用するところはさほどでもないが…
　ケソン・メモリアル・サークル、俗にいう“ビログ”を舞台にとり、そこにうろつくものたちの人間模様。個人的にはいつだったか、フィリピン大学へ留学している日本人と待ち合わせて早くディリマンに着きすぎたとき、このビログを散策した思い出がよみがえる。
　アーチー演じるオカマがセックス・スキャンダルＶＣＤをはじめ、偽ブランド品、コンドームなどを売り歩く。ルドルフ・セグンド演じる公務員、セノ・アレハンドロ演じる田舎からでてきた若者のオカマと知り合い、自分が暮らす共同住宅へ案内する。水浴び中のセノの裸体をのぞきみて、アーチーがときめく心を抑える。レーヴェン・ブラドとヒル・アゲダン・ジュニア演じる同居のオカマが、お尻をだしてホモ・セックスにおよぶ。さらにセックス・ヴィデオ・コレクターで、パトロンの女性を求めるクレイグ・アルカンタラ演じる若者を含め、ストレートからはずれた連中の群像劇といえる。路上でマンゴなどを売るジェラミー・ガルメとジェニー・ヴィリアヌエヴァ演じる女性はレズらしいし、大学の前には反体制の学生たちがテントを張り、泊まりこんでいる。みんな顔見知りで仲間のようでいて、くだらないものを売りつけ、商品にケチをつけて値切るかと思えば、ときにタダであげたり、無償の手助けをする関係が興味を引く。
　前半で印象的なのはレーヴェンのエピソードで、アリンナ演じるフィリピン大学の女学生にアタックし、相手にされないも、アリンナが部屋へ招いたらレーヴェンのほうが拒む。アリンナの男運の悪さも焦点のひとつをなす。レーヴェンがエイズとわかるあたり、同性愛がテーマの内容に欠かせぬ要素。後半はカリー・サマーズ（？）演じる女医に目をつけたクレーグが告白のチャンスをうかがい、ファニー・ファン演じるジプニーの集客係の女性があきれて花をわたしてやる。アポロ・ジョーンズ演じる若いツバメをもち、タカビーな性格のカリーだが、身寄りのない少年を助けたりする。ファニーには暗い過去があり、クレイグにアーチーが流出本番ＶＣＤをみせると、ファニーが犯されている。ヒルなどから非難をうけて、後悔にかられたアーチーがファニーに謝る。そんなこと気にもせず、精一杯に今を生きているファニーが女性の強さを伝えてくる。
　一応、核を占める役のアーチーは、ただ一人の肉親である妹が結婚を決めてウェディング・ドレスを買ってあげるため、商売にいそしんでいる。アラ・ミナ演じる妹が精神破綻者で、アーチーに向かって突然キレて、こちらも尋常ではない。
　クリサルドは語り手となる人物を変えていくほか、メインの芝居のバックで点描的に体操する女たちや抱き合う男たちを入れこむショットの絵づくりなど、ホント、インテリっぽい演出。アロヨ大統領が国民に対して謝罪会見のＴＶ中継を盛りこむといった、時代の象徴的な話題の挿入や、デモの光景を主題に活用の構成も同様。引ったくりをつかまえたり、強盗の出現に商品をかかえて逃げたり、泥棒を日常にもちこむのはよいにして、アーチーがジプニー強盗に合うのを記号論のごとき暗示で何度もはさむ計算くささはどんなものか。ウェディング・ドレスが切り裂かれるように舞うあたり、うまさがかえって感情移入をはばむ。
　まあ主題歌とともに全員の姿をとらえていく視線のやさしさはまずまずで、捨てがたい作品といえる。
　ホモの話だけにセノとルドルフの全裸でのセックスや、エイズとわかったレーヴェンが真っ裸になって雨の降る夜の公園をかける際にチンポまでみえているなど、男のヌードには閉口だが、女優陣ではアリンナがちょっとセクシーなのに拍手もの。タンク・トップにジーンズが色っぽく、レーヴェンの前でシャツを脱いでブラの胸元が刺激的にそそる。以前、雑誌に発表した全裸の写真で何度もお世話になってからのファンとしてはトップレスを期待したが、とりあえずは悩殺をうける。ファニーは生活臭のある雰囲気を漂わせる演技に納得なうえ、ブラのオッパイをもまれるイメージがドキドキを誘う。演劇中心なのか、わりと地味な配役にあって、女性も庶民的な容貌ばかりの中、アラの出演はさすがに精彩を放つ。正直いってアラがいなければみなかったわけで、こうしたマイナーな企画にも小さな役で協力するあたり、プロの道を歩んでいるのがわかる。太めの下半身をくるんだ白パンにはオーラすら感じる。
　アラへの愛を再確認した次第。