（お前に陽のあたるときはもう終わった）
96年：ＮＥＯフィルムズ
監督：トト・ナティヴィダッド
主演：セザール・モンタノ
ルストム・パディーリア
チャーリン・ゴンサレス
デニス・ロルダン
ダニエル・フェルナンド
ウィリー・レヴィリアーメ
リカルド・セペダ
ミシェル・パートン
ブランド・レガスピ
アンティ・ヒーローを主人公にするアクションもの。この場合、感情移入のたくみさが鍵になるといえる。監督のトト・ナティヴィダッドとフミルデ・“ミーク”・ロハスの脚本が、いかに難題にのぞんだかだが…
セザール・モンタノ演じるのがプロの殺し屋で、ルストム・パディーリア演じる親友が弁護士。トニー・マベサ演じる上院議員をセザールが射殺し、ロイ・デ・グスマン（ロドリゴ）演じる秘書に目撃されるも、ルストムがトニーとロイのホモ関係をつかんで脅し、裁判で無罪に持ちこむ。ダニエル・フェルナンド演じる依頼主の裏切りに気づき、強引に処分する、といった冒頭はまずまず。
メイン・ストーリーに進むまでのサブ・エピソードがイマイチ。セザールがマネージャーのクラブ・ハウスでリカルド・セペダなどが演じる客が騒ぎ、放りだす。チャーリン・ゴンサレス演じる歌手にセザールがほれ、ブランド・レガスピなどが演じるチャーリンにからんだ男どもをやっつける。このリカルドが、しっかりした状況設定もなくラストの飛行場でパイロットに化けてセザールを撃ってきて、行き当たりバッタリな構成に落胆。スバス・ヘレロ演じる麻薬組織のボスが逮捕により、ルストムが雇われる展開で、ブランドがズバスの部下だから、安易な図式だなあ。
デニス・ロルダン演じるズバスの息子が強盗でカネをつくり、札束をわたしてルストムに弁護依頼も、高級車やコンドミニアムを買ったうえ、あっさりズバスを始末が中核の話。シンタロ・ヴァルデス演じるチャーリンの弟がシャブ中毒のリハビリ施設で殺されたせいもあり、セザールが大のドラッグ嫌い。ズバスは「麻薬王だ」と救出に猛反対ながら、とにかく協力し、護送車からヘリコプターで助けだす。ルストムが縄梯子を切ってズバスを落下させ、パイロットまで射殺だから、いくらなんでもワルすぎる。こりゃあ、死んだほうがいいキャラといえ、デニスに狙われても、まったくハラハラしない。しかもミシェル・パートン演じる恋人をみすてて一人逃走に、人間のクズじゃないか。
ホント、感情移入をはばむばかり。
傷ついた入院先へデニスたちの襲撃を受け、セザールが守ってあげるのが余計に感じる。反対にセザールのため、自ら手榴弾の犠牲になる行為でルストムが友情を示すものの、かえって人間性の表現に散漫さを招くばかりで、バカにしたくなる。
ルストムはともかく、セザールに同化できれば問題ないはずだが、クライマックスの飛行場へ向かうときに一般人の車を奪っていて、迷惑な野郎このうえない。
ちょっと、ひどすぎる。
おそらくトトは、アンティ・ヒーローを扱う素材が難題だ、と意識していなかったんじゃないか。
あきれるほどの駄作。
細部の演出もひどく、医者にバケたデニスたちの中に、手術帽から長髪のはみでたマヌケものがいるのはよいにして、病院の通路を射撃しながら追跡のとき、壁側によけていた看護婦が通り過ぎると普通に歩きはじめ、なんたるエキストラへの手抜き。夜のカー・チェイスでタンク・ローリーにぶつかり、セザールの車がハデに吹っ飛んだのに生きているのは許せるご都合主義の範囲内。足で走って飛行場までくるのは、距離感覚が曖昧になり、ヘンだろう。
笑いをとるポジションのウィリー・レヴィリアーメ演じるセザールの相棒が冴えず、チャーリンとセザールの結婚にいたる過程をはしょれば、いったん別れたチャーリンが戻ってくる心理にふれず、性格描写もいい加減。
ときにオッといわせるトトだけに、まったく残念な仕事と指摘せざるをえない。
まあ、お目当てはチャーリンの美人ぶりだから、そちらで満足できれば文句もないところ。クラブ歌手の役でクロイド・ロビンソン演じるマネージャーから「ハダカになれ」といわれて「ダンサーじゃない」と断っているが、そんな、チャーリンのハダカをみたいよー。セザールがのぞくエアロビクスでの黒いレオタードがセクシーさ不足なら、一連のデートで水着を含まず、挑発たらずに終わっている。むしろミシェルのほうがそそり、ルストムとの二度目のベッドでオッパイがこぼれる寸前に興奮。でもポロリはなく、ウハウハの納得までいかない。ズバスのリゾート施設にいるビキニの女性数名のほうが大胆なくらいで、女優のみせかたもヘタ。ただしチャーリンは、下半身にキュッとフィットした白いピタパンがバツグンのプロポーションをうかがわせ、ホント、おいしそう。
ああ、やっぱりチャーリンは素敵だなあ。
ダラーり、よだれ！
