ＢＩＫＴＩＭＡ
（犠牲者）
　
90年：ＶＩＶＡフィルムズ
監督：リノ・ブロッカ
主演：シャーロン・コネータ
　　 　クリストファー・デ・レオン
　　　 ジーナ・アラハル
　　　 ロウェル・サンチャゴ
　　　 ナネット・メドヴェド
　　　 ウィリアム・ロレンソ
　　 　カルミ・マティク
　レイプをあつかう裁判劇のようでいて、実は変質者の恐怖を描くスリラー。リノ・ブロッカの監督作ながら、さほど感心しないでき。
　銀行員のラウラ（ジーナ・アラハル）が犯され、レイプ事件の告発にとりくむ弁護士のベッカ（シャーロン・コネータ）とデーヴ（ロウェル・サンチャゴ）が犯人を問いただしてみれば、国会議員のアウレウス（ジョニー・ウィルソン）の息子であるジン（クリストファー・デ・レオン）とわかる。有力者なので驚くも、警察大佐（ロベルト・タラビス）の協力で逮捕。ＴＶ番組の女性ホスト（ミレット・アドヴィンクラ）がとりあげるなど、マスコミが騒ぎ、ラウラがマネージャー（ジョジ・イスラ）からクビをいいわたされる。それでラウラは叔母（ルシタ・ソリアノ）や弟（ウィリアム・ロレンソ）ともめる。裁判は目撃者（カルロス・ヴィリアヌエヴァ）が証言したため、ジンの弁護士（ジェス・ラモス）がラウラを買収にかかる。弟への暴行で怖くなり、ラウラが和解を承諾。
　とレイプに対する社会的な偏見をチラつかせるも、中途半端に終わる。
　評価をはずれるのは後半で、まだ幼いベッカの娘のシェリー（カルミ・マティク）をかわいがり、ジンがベッカに近づいてくる。
　そんな性犯罪者だというのに、弁護士ともあろう女性が好意を抱くわけがなく、ホセ・ダリサイ・ジュニアとロイ・イグレシアスの脚本に相当な無理がある。本気でベッカが愛を感じそうになるあたり、人間を描けなさすぎ。ベッカの家政婦（スシン・ヤソン）や運転手（ベン・リヴェラ）の殺害におよんでや、展開のまずさにがっくり。
　高速道路をベッカが逃げるシーンはややサスペンスが盛りあがるも、本性を現わしたジンからベッカがシェリーを救い、逃げるクライマックスが落胆を招く。いったんジンがピストルを置くのがヘンなら、いくらジンと撃ち合いの遊びをしていた伏線をおいたとはいえ、女の子のシェリーがピストルをもったのにジンとベッカがあわてるとき、オモチャと本物の銃では重さの違いが歴然なのに、なんで軽そうなのと笑いそうなほどにあきれる。
　息子のバカさを親父のアウレウスが陰で怒るも、ジンの母親（ロリエ・マラ）の反応がでてこないし、デーヴに車があたる警告も平凡すぎなわけで、およそリノ・ブロッカとは信じがたいヘタさ。
　まあ、告訴のとりさげを謝るラウラへのベッカの理解や、ジンの婚約者だったフェイ（ナネット・メドヴェド）の嫉妬による変化は、そこそこ納得かもしれない。
　フェイの両親（ナンディン・フェルナンデス、ルル・アラネタ）がジンの両親と結婚に贈る祝いがサンフランシスコの家なのと、ベッカの別れた夫がアメリカ合衆国へ働きにいっているのがフィリピンっぽく、ジンの殺す路上の売春婦（カティー・モリナ）がオカマの点が興味を引く。ジンの性格づけに関連させる絵画展の作品群は、さほど感心にあたいしない。ラウラが女性の人権を考えるミーティングに出席するも、参加者（ミカ・ニコラス、スーザン・キントなど）の意見はありきたりかな。
　変態の目つきをみせるクリストファー・デ・レオンは好演というよりも単純な表現に思え、短髪がキュートなシャーロン・コネータはアイドルを脱する内容ながら、やはり単調な演技。ジーナ・アラハルはレイプ・シーンに迫力を欠いたが、女性の弱さをよくうかがわせている。なんといってもセクシーさでナネット・メドヴェドが興奮をくれて、麻薬を吸ったあとのジンとのセックスでクリストファー・デ・レオンの半ケツがみえているのに、ナネットのお尻が隠れるのは残念でも、二回目のセックスでオッパイがポロリ寸前。黒いランジェリーを着るショットに続き、ハイレグのパンティーがバツグンのプロポーションと理想的なヒップラインを浮かばせる。ジンに首をしめられるシーンでは、ボディコンのミニからパンティーがチラつく。とくにビーチで乗馬のシーンが最高の色っぽさで迫り、小さなビキニのブラのバストがプラプラと揺れて、ハイレグ・パンティーの股間の切れあがり具合に悩殺。ウェストのくびれが絶品と声をあげそう。ジンがカメラマンの設定で、部屋にフェイのヌード写真のパネルがかけてあり、ナネットのヌード撮影シーンがほしかったなあとの惜しさが残る。