ＢＩＫＩＮＩ　ＯＰＥＮ
　
05年：セイコ・フィルムズ
監督：ジェフリー・ヘトゥリアン
主演：チェリー・パイ・ピカチェ
　　　 ダイアナ・スビリ
　　　 フランシン・プリエト
　　　 ニナ・リッシ・アラガオ
　　　 ラファエル・ロセル
　　　 アルフレッド・ヴァルガス
　　　 Ｊ・Ｅ・シソン
　　　 ロキシー・ラミレス
　　　 ダーリン・ラヴィーニャ
　　　 リッキー・ダヴァオ
　　　 マイケル・デ・メサ
　　　 ロデル・ヴェラヨ
　　　 マリッサ・デルガド
　　　 デクスター・ドリア
　フィリピンはミス・コンが盛況であり、芸能人の登竜門にもなっている。これはタイも変わらず、大ファンのチンタラー・スカパットが主演した『ＨＯＮＧ　２　ＲＵＮ　４４』（タイ語の表記ができなくて、ごめんなさい）にそのあたりの事情がうかがえる。ミスのみならず、ミスターも同時に開催がフィリピンの特徴で、ヴェトナムにも似たようなシステムがみられる。
　なんてことはさておき、ビキニ・オープンという、フィリピンでは恒例的な男女の水着チャンピオンを選ぶイヴェントの内幕を描く作品である。ジェフリー・ヘトゥリアンが『ＢＲＩＤＡＬ　ＳＨＯＷＥＲ』に続き、軽いコメディーに挑戦している。こん身のドラマ『ＭＩＮＳＡＮ　ＰＡ』のあとだけに、力の入らないリラックスさが心地よい。
　冒頭、チェリー・パイ・ピカチェ演じるニュース・レポーターが登場し、あれこれ社会問題を取材も、視聴率が下がりっぱなしでクビ寸前に追いこまれる。どこかシドニー・ルメットの『ネットワーク』を連想する。それでビキニ・オープンに注目し、舞台裏を探るのに再起をかける。
　ビキニという水着のウンチクを語る部分が、けっこうおもしろい。
　２００５年のコンテストが始まり、司会三名のうち二人がオカマなのがフィリピンふう。男女各十名ずつの候補者紹介で、早くも「ビジネス・ウーマンだ」といっている女性候補者が市場で肉を売っていたり、「趣味はモトクロス」といっている男性候補者がトライシクル・ドライヴァーだったりの皮肉をはさむ。スポーツウェア、ランジェリーと数日にわたる審査が進む間、チェリー・パイがそれぞれの家庭環境やプライヴェートへ突撃し、良家の子女を気どる仮面の奥をのぞくわけである。それもどこかの国のマスコミみたいに悪意のある暴露ではなく、実像をストレートにとらえようとすることで、ギャップのおかしさがクスクスと伝わってくる。ダイアナ・スビリ演じる女性候補者はパーツの広告モデルなどの経歴があり、交際相手のトライシクル・ドライヴァーも男性候補者で、マリッサ・デルガド演じる母と貧民街に暮らし、たらいをもってでてきて、マリッサはろうそく片手にうろつき、部屋にはトイレの悪臭が漂う。プロデューサーに誘われたホテルを逃げだした経験をもつ。フランシン・プリエト演じるインタビューのたびに「アイ・キャン」ばかりを連発の女性候補者は、エヴァ・ダレン演じる母が雀荘の経営者で、自らも下品に牌を打つのを隠し、水着写真がタブロイド紙に掲載されたのが原因で学校を除籍の目にあう。市場の肉屋の女性候補者は、ユージン・ドミンゴ演じる母が「人前でビキニなんて、とんでもない」と楽屋へ怒鳴りこんでくるが、賞金を聞いて、いつの間にか本人である娘よりも一生懸命になっている。大家族の男性候補者の家では食事のときにスパゲッティーをパンにはさんでくれるも、こっそりチェリー・パイが口から吐きだす。子もちの男性候補者は妊娠中の女性につきまとわれて、デクスター・ドリア演じる母が子どもたちをあやしている。ロキシー・ラミレス演じる女性候補者は、最初のところで顔やオッパイが整形であることを映画の観客にだけバラし、先の子もちの男性候補者の子をはらんだのが明らかになる、といった具合。ときに追い返されながらも、チェリー・パイが強引に入りこむのがいかにも。またエッチなギャグやひねったシチュエーションを含み、パンツにティッシュを入れて巨根をよそおう男性候補者にマダム・アウリンなどが演じる中年女性の客が視線を奪われたり、そのチンポに司会者がふざけてマイクを向けたり、実の父親を探す男性候補者にマイケル・デ・メサ演じる同性愛の中年男性客が熱いまなざしを送ったり、中国系の男性候補者に中国系住民たちの応援団がついていたり、アーチー・ヴェントサ演じる携帯電話のカメラで撮影したりでハシャぎまくる中年男性の客が、水着審査でブラをつけず、手ブラで現れたニナ・リッシ・アラガオ演じる女性候補者に「腕をとってオッパイをみせろ」と叫び、興奮で心臓マヒを起こして倒れたり、とり乱したダイアナが、偶然にインストラクターのチンポをけったり、といった具合。審査員にも恋人とセックスするジムのインストラクターをはじめ、あやしいメンバーがそろううえ、リッキー・ダヴァオ演じる大会スポンサーであるコンピューター・スクールのオーナーは、自ら服の下にコルセットをはめて肥満を隠し、審査の合間に歌って踊るパフォーマンスで自己満足に浸る。楽屋が男女一緒なのがユニークで、Ｔバックのお尻をマッサージしたり、パンツをおろしてお尻丸だしの男にチェリー・パイが驚き、あちらこちらでモノがなくなったとケンカが絶えない。いよいよ水着審査のあと、候補者が半分にしぼられ、選ばれた連中は美女に囲まれたり、栄冠を手にしたりの夢で内面のイメージを映しだす。落ちた連中は「フェアじゃない」と泣き、「来年がある」と明るいなど、さまざまな反応を示す。意地悪っぽい質疑応答のすえ、はたして誰が優勝かで、男性のチャンピオンからオカマの観衆にせかされてリッキーがキスをうける。女性のチャンピオンの座をロキシーが射とめるも、妊娠が発覚で、フランシンが繰りあげ受賞。でも楽屋でライヴァルたちの衣装などを隠していたインチキをチェリー・パイのスタッフであるロデル・ヴェラヨ演じるカメラマンのヴィデオがとらえていて、あえなくオジャン。ほかにダイアナのボーイ・フレンドがミスターになり、インタビューで「映画にでたい。恋人はいない」にムッとするも、内心「みんなより私のほうがきれいなのに」と優越感がわきあがり、プロデューサーとホテルへいき、今度は寝ようと考えていたり、マイケルがほれていたっぽい男性候補者に対し、父と名のりでるなどのオチをつくる。
　まあ、そこそこにまとまった内容で、アルマンド・ラオの監修によるクリス・マルティネスの脚本が練ってあるなと思っていたら、ラストが衝撃的な意外さだった、番組のしめとしてチェリー・パイが道路で自らがビキニになったため、バスの運転手がわきみでぶつかり、飛ばされてハイウェーに落下したチェリー・パイが大型トラックにひかれる。ビキニ・オープンの番組で視聴率を急上昇させ、チェリー・パイの葬式スペシャルが新記録を樹立というもの。正直なところ、あまりに奇をてらいすぎて評価できず。個人的には『ＢＲＩＤＡＬ　ＳＨＯＷＥＲ』のほうを買う。
　もっとも本来はダイアナやフランシンのビキニを期待のわけで、そちらはどうかだが、意外とあっさりした撮りかたに不満が残った。ジェフリーがセクシーさを意識せず、あくまでコメディーの題材にあつかったせいだろう。プールで取材陣に撮影のシーンで、一番フォトジェニックとの説明に現われるニナのビキニがとりあえずはおいしそう。トイレでビキニをチェックのダーリン・ラヴィーニャともう一人の候補者も、一応は鼻息を荒くさせる。市場の娘を演じた女優が、楽屋ではとくに危うさで目立つ。フランシンは準ミスに選ばれて楽屋へ戻り、椅子に座るときのポーズがビキニを貼りつかせる。でも肝心のステージで、各候補者のもっとプロポーションをいかした挑発がほしかったわけで、イマイチ落胆ばかりがわきあがる。ダイアナに萌えないのが最大の欠点といえ、決勝の際もダイアナ、フランシン、ロキシーではなく、ほかの候補者の女優が引きつけるようじゃ、カメラ・アングルがダメなんだなあ、なんて感じるのみ。あと前回のミスの役でアナ・レアー・ハヴィエールが出演し、ほんの少し水着姿をみせるが、大胆に胸元のあいた青いドレスのほうがそそり、美人ぶりにうっとり。病院でロキシーをはらませたのが誰か判明で、思わず追いかけるチェリー・パイの黒パンが、相当に太めだけど、まだイケるかもと想像していたら、ビキニのボディーをみせてびっくりだが、やはり太すぎる。もはやビア樽のごときマリッサがワルのりでスカート形の水着になるのは余計。
　まあ、いずれにしてもコメディーであり、セクシー作的には失格だった。